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第4話:幸運の宝物

【場面】

剣聖ロデリック邸~ベルグート王国首都、グランバレスの闘技場


【登場人物】

ケイン・アグネシア

モートン

アッシュ

レナ

エレオノーラ・ヴァルディア

ハザム・ベルグート

レオンハルト・ベルグート

ヴォルフ

セルドア

48番の男(シリウス=ルーン・アグネシア)


【その他】

「」は声に出したセリフ、()は心の声です。

ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。



ト書き1

ロデリック邸の食堂で、ケイン、モートン、アッシュ、レナ、エレオノーラの五人が座って食事をとっている。朝食のメニューはサンドイッチとサラダ。


ト書き2

エレオノーラ、笑顔でサンドイッチを頬張る。

エレオノーラ

「おいしい! 卵の味が生きてるわ!」


ト書き3

エレオノーラ、隣に座るレナに話し掛けるが、レナは無反応。

エレオノーラ

「朝から体を動かして、おいしくて栄養バランスのとれた朝食……素敵な一日の始まりですわね」

アッシュ

「お前、ほんと貴族の娘っぽくないよな」


ト書き4

エレオノーラ、アッシュに目を向ける。

エレオノーラ

「ねえ、アッシュ。私の修業が終わったら、ヴァルディア家に来ない?」

アッシュ

「何だよ。召使いにするつもりか?」


ト書き5

エレオノーラ、悪びれもせずに言う。アッシュは苦笑。

エレオノーラ

「そう! 腕が立って料理もできる使用人なんて、最高じゃない?」

アッシュ

「遠慮しとくぜ。敬語とか使えねえし」


ト書き6

盛り上がる二人を尻目に、無言でもそもそとサンドイッチを齧るケイン。その様子をモートンがじっと見ている。


ト書き7

モートン、ケインに声を掛ける。

モートン

「殿下、どうかなさいましたか?」

ケイン

「えっ?」


ト書き8

モートン、話を続ける。ケインの向かいに座るレナ、ケインに目を向ける。

モートン

「何やら元気がないように見えますが……」


ト書き9

ケイン、小さな声で尋ねる。

ケイン

「……モートンはさ、ベルグートの王族に詳しい?」


ト書き10

モートン、怪訝な顔をして答える。

モートン

「それは……詳しいと思いますが」

ケイン

「ちょっとだけ話してよ」


ト書き11

モートン、怪訝な顔のまま話し始めるが、即座にレナが話を遮る。

モートン

「ベルグート王には二人の息子がいます。兄の名は――」

レナ

「三人だ」


ト書き12

モートン、レナに目を向ける。

モートン

「三人ですと?」

レナ

「行事や式典には顔を出さない、三人目の王子がいる」


ト書き13

ケイン、レナに目を向ける。

ケイン

「じゃあ、代表戦にはそいつを出してくる――」

レナ

「出さない理由がない」


ト書き14

アッシュ、サンドイッチを頬張りながら話に割り込む。

アッシュ

「そいつ、強えのか?」


ト書き15

レナ、アッシュに鋭い目を向ける。

レナ

「見たことはないが――」


ト書き16

レナ視点で、四人を描写。全員が神妙な面持ちをしている。

レナ

「話を聞く限りでは、最強だ」


ト書き17

モートンとアッシュ、うろたえる。

モートン

「そんな男が……」

アッシュ

「マジかよ……」


ト書き18

ケイン、小さく笑う。

ケイン

「叔父さんが逃げた理由……はっきりしたね」


ト書き19

ケイン、兄ルーンを思い出す。

ケイン

(兄さんだったら……どうするだろう)


ト書き20

文字のみ。

ナレーション

「同時刻、ベルグート王国首都、グランバレス」


ト書き21

闘技場にて、ゼッケン16を付けた大男が、ゼッケン21を付けた男を巨大な剣で袈裟斬りにする。傷口から大量の出血。


ト書き22

16番の男、血の海に沈む21番の男の前で、両手を高々と突き上げる。

16番の男

「どうだあっ!」


ト書き23

四つある石造りの闘技場で、剣を持った男たちが斬り合っている。


ト書き24

展覧席の豪奢な椅子に腰掛けたベルグート国王ハザム・ベルグートが、試合の様子を興味深そうに見下ろす。

ハザム

「ほう。十六番の男、なかなかやりおる」


ト書き25

ハザムの隣に立つベルグート軍最強の格闘士、ヴォルフが微笑しながら答える。

ヴォルフ

「恐れながら陛下。あの程度の剣士なら、ベルグート軍に千人はおります」


ト書き26

ヴォルフの言葉を聞いたハザム、にやりと笑う。

ハザム

「レオン、お前はどう思う?」


ト書き27

ヴォルフの反対側に立つベルグート第三王子、レオンハルト・ベルグートが答える。

レオンハルト

「あのような男を出場させては、他国から侮られるでしょう」


ト書き28

ハザム、ふんと鼻を鳴らす。

ハザム

「分かっているではないか」


ト書き29

ハザム、ゆっくりと立ち上がる。

ハザム

「アグネシアごとき、ベルグートの敵ではない。代表戦は、ベルグートの強さを諸国の王に見せつける機会と心得よ」


ト書き30

ハザム、振り返る。薄笑いを浮かべて二人を見る。

ハザム

「一戦も落としてはならん。アグネシアの代表は一人残らず殺すのだ」


ト書き31

ヴォルフとレオンハルト、跪いて頭を下げる。

ヴォルフとレオンハルト

「御意」


ト書き32

ハザム、満足げに笑う。

ハザム

「では、後は好きにするがいい」


ト書き33

ハザム、護衛を伴って退出する。


ト書き34

ヴォルフとレオンハルト、立ち上がる。


ト書き35

ヴォルフとレオンハルト、闘技場へ目を向ける。

ヴォルフ

「かなり減ったな」


ト書き36

レオンハルト、闘技場を睨みつけながら答える。

レオンハルト

「くだらん余興だ」


ト書き37

ヴォルフ、小さく笑う。

ヴォルフ

「レオン。剣士のお前から見て、面白い奴はいるか?」


ト書き38

レオンハルト、闘技場の一ヶ所を指差す。

レオンハルト

「四十八番。あの男だ」


ト書き39

レオンハルトの指の先。闘技場の一つで、ゼッケン43番の男と向かい合っているゼッケン48番の男を描写。


ト書き40

ヴォルフ、48番の男を興味深そうに見る。

ヴォルフ

「ほう? あの男、ここまで目立った動きはしていないが――」

レオンハルト

「剣士でなければ分からん。かなり巧妙に手を抜いている」


ト書き41

ヴォルフ、レオンハルトに目を向ける。

ヴォルフ

「なるほど。では、問題は――」

レオンハルト

「奴を本気にさせる相手がいない」


ト書き42

ヴォルフ、くっくと笑う。

ヴォルフ

「なら、話は簡単だ」


ト書き43

ヴォルフ、傍にいた男に声をかける。

ヴォルフ

「おい!」


ト書き44

男が反応し、ヴォルフに近寄る。

男

「ヴォルフ閣下。何でしょう」

ヴォルフ

「特務隊の剣士を一人連れてこい」


ト書き45

男とレオンハルト、ぎょっとした目をヴォルフに向ける。

ヴォルフ

「誰でもいい」


ト書き46

男、額に汗を浮かべて困惑する。

男

「し、しかし……」


ト書き47

ヴォルフ、にやりと笑う。

ヴォルフ

「急げ」


ト書き48

男、ごくりと唾を飲み込む。


ト書き49

男、振り返って走り出す。


ト書き50

レオンハルト、鋭い視線をヴォルフに向ける。

レオンハルト

「あの男を殺す気か?」


ト書き51

ヴォルフ、くっくっと笑う。

ヴォルフ

「お前と戦わせるよりはマシだろ?」


ト書き52

レオンハルト、微笑する。


ト書き53

闘技場。48番の男が放った横薙ぎが、43番の男の剣を払う。

43番の男

「ぐっ!」


ト書き54

43番の男、落とした剣を拾おうと駆け寄る。


ト書き55

43番の男が手を伸ばした先、48番の男が剣を踏む。


ト書き56

48番の男、剣先を43番の男の顔の前に突き付ける。


ト書き57

48番の男、にやりと笑う。

48番の男

「勝負ありだ。降参しな」


ト書き58

43番の男、額に汗を浮かべながら答える。

43番の男

「わ……分かった」


ト書き59

展覧席から見下ろすヴォルフ、忌々しげに呟く。

ヴォルフ

「また殺さないみたいだぜ」


ト書き60

レオンハルト、腕を組んで考える。

レオンハルト

(殺さずに勝つのは、殺して勝つよりもはるかに難しい)


ト書き61

レオンハルトの視線の先。48番の男が、43番の男に手を貸して立ち上がらせている。

レオンハルト

(だが、特務隊が相手では――)

セルドア

「閣下! お待たせいたしました!」


ト書き62

特務隊のセルドアが、ヴォルフに敬礼している。

ヴォルフ

「セルドアか」


ト書き63

ヴォルフ、48番の男を指差す。

ヴォルフ

「48番の男……レオンの話では、飛び抜けているそうだ」


ト書き64

セルドア、48番の男を見下ろしながら答える。

セルドア

「では、決勝戦の後に私が――」

ヴォルフ

「いや」


ト書き65

ヴォルフ、笑いながら闘技場を見下ろす。

ヴォルフ

「すぐに始める。ついて来い」


ト書き66

ヴォルフ、展覧席から跳躍する。


ト書き67

ヴォルフ、観客席(無人)を飛び越え、闘技場の中央に着地。その衝撃で、闘技場の石畳が砕ける。


ト書き68

立ち上がったヴォルフに、闘技場にいる男たちが注目する。


ト書き69

ヴォルフ、笑みを浮かべて言う。

ヴォルフ

「ご苦労だった。帰っていいぜ」


ト書き70

16番の男が、ヴォルフを睨みつけながら近付いてくる。

16番の男

「テメエ……手ぶらで帰れとでも――」


ト書き71

16番の男が間合いに入った瞬間、ヴォルフが高速で踏み込み、左ジャブを顔面に放つ。


ト書き72

16番の男、目、鼻、耳から出血。

16番の男

「えっ?」


ト書き73

16番の男、白目になって崩れ落ちる。


ト書き74

ヴォルフ、笑いながら出場者たちに言い放つ。

ヴォルフ

「他に文句がある奴はいるか?」


ト書き75

出場者たち、顔面蒼白でヴォルフを見つめる。

ヴォルフ

「四十八番。お前は残れ」


ト書き76

48番の男、ヴォルフに目を向ける。

48番の男

「私ですか?」

ヴォルフ

「とりあえず、この選考会はお前の優勝だ」


ト書き77

セルドアが展覧席から階段を使って降りてくる。

ヴォルフ

「だが……ベルグートの代表を張りたいんなら、優勝だけじゃ足りねえ」


ト書き78

降りてきたセルドアの肩に、ヴォルフが手を乗せる。

ヴォルフ

「特務隊のセルドアだ。こいつに勝ってみせろ」


ト書き79

セルドア、48番の男を睨みつける。48番の男はきょとんとした表情。


ト書き80

48番の男、小さく笑う。

48番の男

「承知しました」


ト書き81

48番の男、剣を抜いて構える。

48番の男

「ベルグートの精鋭、特務隊……不足はありません」


ト書き82

ヴォルフ、にやりと笑う。


ト書き83

ヴォルフ、振り返って闘技場の外に歩きだす。

ヴォルフ

「俺がここから降りたら、開始だ」


ト書き84

セルドア、剣を抜いて構える。


ト書き85

ヴォルフ、闘技場の外に出る。


ト書き86

ヴォルフの足が地面に着いた瞬間、セルドアの目が鋭い光を放つ。


ト書き87

セルドア、高速で接近し、48番の男に突きを放つ。


ト書き88

48番の男、セルドアと同時に踏み込み、セルドアの突きを躱す。


ト書き89

48番の男、蹴りでセルドアの足を払う。


ト書き90

セルドア、後ろに転倒する。


ト書き91

転倒したセルドアの顔の前に、48番の男が剣先を向ける。


ト書き92

48番の男、笑顔でセルドアを見下ろす。

48番の男

「勝負ありだ。降参しな」


ト書き93

ヴォルフ、振り返る。

ヴォルフ

「おや?」


ト書き94

ヴォルフ、笑いながら二人の元に歩み寄る。

ヴォルフ

「何だよ。もう終わっちまったのか」


ト書き95

セルドア、立ち上がってヴォルフに謝罪する。ヴォルフは笑顔で対応。

セルドア

「も……申し訳ありません。閣下」

ヴォルフ

「てめえ、明日から特訓だぜ」


ト書き96

展覧席から眺めるレオンハルト、眉間に皺を寄せて考え込む。

レオンハルト

(特務隊が相手でも、底を見せない……か)


ト書き97

レオンハルト、にやりと笑う。

レオンハルト

(面白い)

レオンハルト

「ヴォルフ!」


ト書き98

ヴォルフ、展覧席のレオンハルトに目を向ける。

レオンハルト

「代表戦はその男で決まりだ!」


ト書き99

ヴォルフ、笑みを浮かべながら振り返り、48番の男に話し掛ける。

ヴォルフ

「聞こえたか?」

48番の男

「ええ。光栄です」


ト書き100

ヴォルフのバストアップ。

ヴォルフ

「名前を教えろ。陛下には俺から話しておく」


ト書き101

48番の男のバストアップ。胸に、半分に割れた清廉の輝石が収められたブローチを付けている。

 ※シリウスがケインの兄ルーンであることを読者に教える演出

シリウス

「シリウスと申します。お見知りおきを、ヴォルフ閣下」


ト書き102

ヴォルフ、シリウスのブローチを見てくっくっと笑う。シリウス、ブローチを触る。

ヴォルフ

「女じゃあるまいし、何だってそんなもん付けてんだ?」

シリウス

「ああ、これのことですか?」


ト書き103

ブローチのアップ。

シリウス

「こいつは――」


ト書き104

シリウスの顔のアップ。

シリウス

「俺に幸運を与えてくれる……宝物です」


ト書き105

文字のみ。

ナレーション

「代表戦まで、あと361日」

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