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第2話:本気を見せてみろ

【場面】

剣聖ロデリック邸


【登場人物】

ケイン・アグネシア

モートン

アッシュ

剣聖ロデリック…セリフなし、イメージ映像のみ

レナ…セリフなし、後ろ姿のみ


【その他】

「」は声に出したセリフ、()は心の声です。

ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。



ト書き1

馬に乗り、街道を進むケインとモートン。


ト書き2

モートン、隣を進むケインに話し掛ける。

モートン

「お会いになるのはいつぶりで?」

ケイン

「えっと……十五歳だったから、三年かな」


ト書き3

イメージ映像。ケイン、剣術の師匠である剣聖ロデリックの顔を思い出す。

ケイン

「先生……剣聖なんて言われてるけど、普通のおじいちゃんって感じだったな」


ト書き4

モートン、くくっと笑う。

モートン

「殿下が習い事で嫌がらなかったのは、ロデリック様のところだけでしたな」


ト書き5

ケイン、モートンに笑顔を返す。

ケイン

「先生が優しかったからだよ。剣術が好きだったわけじゃない」


ト書き6

ふとあたりを見ると、周囲にいる村の子供たちが二人に手を振っている。


ト書き7

ケイン、子供たちに笑顔で手を振る。

モートン

「コルテオ鉱山がベルグートの手に落ちれば、あの子たちの将来は危ういでしょうな」


ト書き8

ケイン、俯いて呟く。

ケイン

「うん。アグネシアの経済は、鉱山に大きく依存してるからね」


ト書き9

モートン、顔を引き締める。

モートン

「この国に生きるすべての者のために、全力を尽くしましょうぞ」


ト書き10

ケイン、モートンに笑みを返す。

ケイン

「分かってるさ」


ト書き11

ケインとモートン、ロデリック邸に到着。


ト書き12

馬から降りる二人。

ケイン

「懐かしいな。あの時のまんまだ」

モートン

「三年くらいでは、そう変わらんでしょう」


ト書き13

ケイン、躊躇せず玄関をノックする。

ケイン

「先生、ご健在かなあ」

モートン

「それは……どうでしょう。悪い話は聞いておりませんが、ご高齢ですからな」


ト書き14

玄関で待つケインとモートン、家の中からドタドタとした足音を聞く。

ケイン

「あれ? この足音……」


ト書き15

玄関のドアが開き、中からアッシュが姿を現す。頭をポリポリ掻きながら、面倒臭そうな表情をしている。

アッシュ

「はいはいどちらさんで……」


ト書き16

アッシュ、目の前のケインが何者であるかに気付く。

アッシュ

「って、お前……ケインか?」


ト書き17

ケイン、アッシュとの再会に興奮する。

ケイン

「アッシュ! やっぱりアッシュか!」

アッシュ

「お、おい。やっぱりって何だよ」


ト書き18

ケイン、アッシュの手を両手で握る。

ケイン

「あのうるさい足音! アッシュだって思ったんだよ!」

アッシュ

「嫌な思い出し方だな……」


ト書き19

モートン、ケインの横からアッシュに話し掛ける。

モートン

「アッシュくん、久しぶりだね」

アッシュ

「えっと……アンタは確か、こいつの世話係のモートンさんだよな」


ト書き20

ケイン、アッシュと話す。

ケイン

「俺たち、ロデリック先生に話があって来たんだよ。先生は――」

アッシュ

「あー、だと思ったよ。けど――」


ト書き21

アッシュ、頬を搔きながら話す。視線を横に逸らす。

アッシュ

「先生、留守にしてんだよ。四、五日で帰ってくると思うけど」


ト書き22

ケイン、肩を落とす。

ケイン

「そっか……」

モートン

「仕方ありますまい。突然の訪問ですからな」


ト書き23

アッシュ、家の中を親指で指し示す。

アッシュ

「ま、せっかく来たんだから上がってけよ。茶ぐらい出すぜ」


ト書き24

ロデリックの家の居間、ソファに腰掛けるケインとモートン。その向かいにアッシュが座っている。テーブルには三人分のお茶がある。

アッシュ

「で、先生に何の用だよ?」


ト書き25

ケイン、アッシュが淹れたお茶を手に持ち、嬉しそうに言う。

ケイン

「お前、お茶を淹れれるんだなあ」

アッシュ

「話聞けよ……」


ト書き26

モートン、上半身をぐいっと前に出して言う。

モートン

「アッシュくん、代表戦のことは知ってるかな?」

アッシュ

「代表戦? いや、全然……」


ト書き27

ケイン、笑顔で話に加わる。

ケイン

「仕方ないよ。ここ、リーシアンからけっこう離れてるから。ところでこのお茶、うまいな」

アッシュ

「内容決めてから話せって……」


ト書き28

モートン、ケインに目を向ける。ケイン、お茶を飲みながら答える。

モートン

「殿下から説明していただけませんかな?」

ケイン

「いいよ」


ト書き29

ケインが代表戦について説明する。

 ※セリフ無し、時間経過


ト書き30

説明を聞き終わったアッシュ、難しい顔をして腕を組む。

アッシュ

「マジか……そんなことになってんのかよ」

ケイン

「うん。ロデリック先生なら、強い人を知ってるかなって思ったんだ」


ト書き31

アッシュ、視線を横に逸らす。

アッシュ

「てか俺、そんな法律があるってことすら知らなかったぜ」

ケイン

「普通はそうだよ。九十年ぶりだし」


ト書き32

ケイン、はっとして目を見開く。


ト書き33

ケイン、椅子から立ち上がる。

ケイン

「そうだ! お前、出てくれない?」


ト書き34

アッシュ、座ったまま、呆然とケインを見上げる。

アッシュ

「出てくれって……代表戦にか?」


ト書き35

ケイン、拳を握って熱弁する。

ケイン

「そうだよ! お前はロデリック先生の弟子で一番だったし――」

アッシュ

「いや」


ト書き36

アッシュ、鋭い目をケインに向ける。

アッシュ

「俺は……一番なんかじゃねえ」


ト書き37

ケイン、必死に捲し立てる。

ケイン

「何言ってんだよ! 誰もお前には敵わなかった――」

アッシュ

「本気出してねえ奴がいただろ?」


ト書き38

アッシュ、立ち上がってケインの顔を真っ直ぐに見る。

アッシュ

「お前だよ」


ト書き39

ケイン、気まずくなって目を伏せる。

ケイン

「い、いや。そういうつもりじゃ……」


ト書き40

アッシュの顔のアップ。目を逸らしたケインに、なおも鋭い視線を向ける。


ト書き41

アッシュ、ふいにケインに背中を向ける。

アッシュ

「ついて来い」


ト書き42

アッシュ、顔だけケインに向けて言う。

アッシュ

「俺を代表戦に出したいなら、お前の本気を見せてもらうぜ」


ト書き43

道場に移動した三人。ケインとアッシュは木刀を持って対峙し、モートンは壁際に座って二人を見ている。

アッシュ

「懐かしいだろ?」


ト書き44

ケイン、木刀を見つめながら、アッシュの問いに答える。

ケイン

「まあ……な」


ト書き45

モートンのバストアップ。額に汗を浮かべている。

モートン

(昔から――)


ト書き46

イメージ映像。モートンがケインの過去の習い事を思い出す。バイオリンの弦を切るケイン、×ばかりのテスト、格闘訓練で仰向けにダウンしたケイン。

モートン

(殿下は昔から、自らの力を隠していた)


ト書き47

イメージ映像。モートンがケインの普段の姿を思い出す。部屋の窓からボーっと外を眺めるケイン、花に水をやるケイン。

モートン

(良く言えば平和主義者なのだろうが……)


ト書き48

モートンの視点。修練場の中央で向かい合う二人を見ている。

モートン

(あの少年は、それを見抜いていたということか)


ト書き49

アッシュ、木刀を上段に構える。

アッシュ

「本気じゃねえって思ったら、叩き出すぜ」


ト書き50

ケイン、微笑を浮かべ、木刀を下段に構える。

ケイン

「それは……勘弁してほしいな」


ト書き51

二人の顔のアップ。視線がぶつかり合う。


ト書き52

構えたまま動かない二人を、遠めから描写。


ト書き53

アッシュの顔のアップ。目が鋭い光を放つ。


ト書き54

アッシュ、高速で踏み込み、上段から木刀を振り下ろす。


ト書き55

ケイン、アッシュの木刀を見切り、後退してギリギリで躱す。


ト書き56

ケイン、即座に踏み込み、下段からアッシュの左脇腹へ木刀を振り上げる。


ト書き57

アッシュ、木刀を右手一本で持ち、ケインの木刀を受ける。


ト書き58

アッシュ、ケインの木刀に自らの木刀を滑らせ、ケインの顔を狙う。


ト書き59

ケイン、上半身を反らせて木刀を躱す。


ト書き60

ケイン、後退して距離をとる。呼吸は乱れている。


ト書き61

アッシュ、ケインに笑みを向ける。

アッシュ

「以前のお前なら、さっきので終わってたよな」


ト書き62

アッシュ、再び上段で構える。

アッシュ

「けど……まだ本気じゃねえな」


ト書き63

ケイン、呼吸を整えながらアッシュに視線を返す。

ケイン

(身体能力《フィジカル》じゃ勝てない)


ト書き64

ケインの視点。アッシュを正面から見る。

ケイン

(こいつ……叔父さんより強いぞ……)


ト書き65

アッシュ、にやりと笑う。

アッシュ

「どうした? 来ねえならこっちから――」


ト書き66

ケイン、構えるより先に踏み込む。

アッシュ

「なっ!」


ト書き67

ケイン、地を這うような動きでアッシュに迫る。木刀を左手一本で持ち、アッシュの足首めがけて右から水平に木刀を振るう。


ト書き68

アッシュ、木刀を下ろし、足元への攻撃をギリギリで防御。

アッシュ

(あぶねえっ!)


ト書き69

ケイン、木刀が防御された瞬間、右手を添えて両手で木刀を持ち、そのままアッシュの顔めがけて振り上げる。

ケイン

(決まりだ!)


ト書き70

アッシュの顔のアップ。ケインの木刀に目を向ける。


ト書き71

ケインの顔のアップ。呆けたような表情。


ト書き72

アッシュ、体を捻ってケインの木刀を躱す。

 ※時間が停止したような表現


ト書き73

ケイン、木刀を振り上げた姿勢のまま固まる。

ケイン

(やべ……)


ト書き74

アッシュ、防御のために下ろしていた木刀を、ケインの左脇腹めがけて振り上げる。

アッシュ

「終わりだぜ!」


ト書き75

木刀がケインの左脇腹に当たる直前、ぴたりと止まる。


ト書き76

ケインの顔のアップ。自らの左脇腹に当てられた木刀をじっと見る。


ト書き77

アッシュ、ふうっと息を吐き、木刀を下ろす。

アッシュ

「引き分けだ」


ト書き78

アッシュ、振り返ってケインに背中を見せる。

ケイン

「お……おい。何でだよ。今の、どう見ても――」

アッシュ

「最後……躊躇しただろ」


ト書き79

歩きだしたアッシュ、ケインに背中を向けたまま問いかける。

アッシュ

「代表戦の候補者を怪我させるわけにはいかないってか?」


ト書き80

ケイン、アッシュの言葉に、額に汗を浮かべて弁明する。

ケイン

「そ、それは……」

アッシュ

「分かったよ」


ト書き81

修練場の出入り口の前に来たアッシュ、背中を向けたままケインに言う。

アッシュ

「お前が代表戦のこと……本気で考えてるってことはな」


ト書き82

ケイン、呆然とした表情でアッシュを見る。

アッシュ

「腹減ったからよ、飯の準備してくるぜ」


ト書き83

振り返り、ケインに笑顔を向けるアッシュ。

アッシュ

「先生が戻ってくるまで、泊まってけよ」


ト書き84

ロデリック家の食堂。ケインとモートンがテーブルに座り、アッシュが食事の支度をしている。

モートン

「では、アッシュくんはロデリック様の家に住み込みで――」

アッシュ

「はい。俺、家族いないんで」


ト書き85

アッシュ、鍋をかき混ぜながら話す。

モートン

「いない?」

アッシュ

「もともと親父と二人だったんですけど、俺がガキの頃に流行り病で死んじまって。孤児院にいた俺を、先生が引き取ってくれたんですよ」


ト書き86

ケイン、座ったまま、アッシュに話しかける。

ケイン

「そっか。お前、苦労したんだな」


ト書き87

アッシュ、鍋を持って振り返る。表情は笑顔。


ト書き88

アッシュ、煮込み料理が入った鍋をテーブルの中央に置く。

アッシュ

「つまんねえ話はやめようぜ」

ケイン

「おおおっ!」


ト書き89

ケイン、鍋をきらきらした目で見つめる。

ケイン

「お前……すごいな」

アッシュ

「大したことねえよ。獣肉と野菜を下ごしらえして煮込んだだけだ」


ト書き90

ケインとモートン、スプーンですくって食べながら話す。

ケイン

「いや。大したことあるよ」

モートン

「基本がしっかり身についてますな」


ト書き91

アッシュ、照れ臭そうに笑う。

アッシュ

「いっぱい作ったから、好きなだけ食ってくれよ」


ト書き92

食事を終えた三人、居間に移動し、ソファに座って話をしている。


ト書き93

ケイン、向かいに座るアッシュに話しかける。

ケイン

「ところでお前さ」

アッシュ

「ん?」


ト書き94

ケイン、笑顔で話を続ける。

ケイン

「将来は先生の後を継いで、ここの道場長みたいなのになるの?」


ト書き95

アッシュ、虚をつかれたように固まる。


ト書き96

アッシュ、自嘲気味に笑って答える。

アッシュ

「いや……その気はねえよ」


ト書き97

ケイン、体を前に乗り出して尋ねる。

ケイン

「何でだよ。お前が継がないと、ここは――」

アッシュ

「俺じゃねえ」


ト書き98

アッシュ、ケインから視線を逸らし、小さく溜息をつく。

アッシュ

「一番強い奴が継がないと、他の連中は納得しねえだろ」


ト書き99

ケイン、驚きを隠さず問う。

ケイン

「お……お前より強い奴が、この道場に――」

アッシュ

「ああ」


ト書き100

イメージ映像。レナの後ろ姿。

アッシュ

「いるんだよ……世の中には、どうしても越えられねえ天才ってのがな」


ト書き101

文字のみ。

ナレーション

「代表戦まで、あと363日」

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