イケメンに貢ぐのです
三日目。
ラビットボール狩りを早めに切り上げて、ルースを買い物に誘った。
ルースは、もう少し粘りたいみたいだった。(あと少しでレベルアップしそう)。
やってきたのは、冒険者用魔法道具専門店『ブルンガル』。
朝、受付嬢メリッサに魔法道具屋について聞いたら、ブレン・ブルーには高給な店と、格安な店の二つがあると教えてくれた。
その格安な方が『ブルンガル』。
ドアの前に立つと、勝手にドアが開いた。
ビックリして、ホエエっと変な声が出た。
「すごいよ、ルース。ドアが勝手に開いたよ」
と、はしゃいでいると、中から人が出てきた。
あっ、普通に、この人が開けたのね。
恥ずかし。
クスっとルースが笑った。
「フラワは可愛いね」
この野郎、なにいきなり褒めてんだ。
顔が赤らむじゃねえか。
イケメンめ。
店内には、ベルトやマント、装飾品などが飾れていた。大物は壁にかけられていて、小物は低い飾り棚に置いてある。
そして、一番高価な品物はガラスのカウンターの中にあった。
「2000万エネル……」
なんてことない、銀の指輪ですよ。
それが、2000万エネル。
ただし、ステータスの全ての現状能力値が1.2倍アップ。
つまり、【攻撃力】、【防御力】、【敏捷性】、【精神力】、【スキル力】、【魅力】が一気に跳ね上がる。能力値が高ければ高いほど上がり幅が大きいのか。
持続効果三年間保障だって。有効期限あるんだ。高いのに。
「どれも高いなあ。とても手が出ないや」
ルースがため息をつく。
一番安いのが、【HP】を10上げる指輪だった。五万エネル。一年保障。
実は、昨日の夕食時に、ルースのステータス値を紙に書き出してもらったのだ。
その結果は、私が予想していた以上に、酷かった。
基本能力値が、【かしこさ】だけが2で、それ以外1。
現状能力値が、【攻撃力】5、【防御力】5、【敏捷性】3、【精神力】5、【魅力】3。
【HP】8の【SP】3。
なんという、ポンコツステータス。
だいたい、【魅力】も3っておかしいじゃない。
ルースは魅力いっぱいだろ。
しかも、これ、剣と防具を装備した状態でだからね。
装備していない状態だと、【攻撃力】1の【防御力】1、【敏捷性】は5になるらしい。
ルースのステータス値を聞くまでは、【攻撃力】を上げようと思ってた。
でも【HP】8って、ヤバいんじゃないか。
なんか簡単に死んじゃいそうだよ。
どんな優秀な治癒師だって、死んだ人間を生き返らせることはできない。
死んじゃったら、お終いなんだ。
それを思えば、【HP】を10上げる指輪は買っておいていいんじゃない?
ただ、八万エネル出せば、【HP】を15上げるネックレスが買える。完全に女物だけど。
さらに12万エネル出せば【HP】30上げる腕輪が買える。
一度、ギルドに戻って、今日の稼ぎを換金すれば、【HP】30の腕輪が買える。
でも、スッカラカンになっちゃう。
ルースは宿も変えたいって言ってたしなあ。
「ルース、どれがいいと思う?」
「そうだね。フラワにはネックレスがいいと思うよ。ほら、その治癒師の服、シンプルで飾り気がないし」
でも、五万エネルかあ、とつぶやく。
「いや、私じゃなくて、ルースがつけるんだよ」
「お、俺が……。でも、これどれも女性向けの物だよ」
「そうだけど。ルースがつけなきゃダメなの。【HP】8じゃあ、危なすぎるもん」
私の【HP】は3000ありますからね。
10や30上がっても、あんまり意味がないの。
「決めた。腕輪にしよう。一度、ギルドに行って、ラビットボールをお金に変えてくるね」
「でも、これさ、俺の腕に入らないよ」
あっ、そうか、サイズの問題があった。
うわっ、それじゃあ、無理じゃん。
いや、ネックレスなら、なんとかいけそうかな。
「ネックレスにしようか。ちょっとつけてみようよ」
私は、カウンターからルースをジロジロ見ていた女性店員を呼んだ。
「これ、つけてみていいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「つけるだけで、効果があるんですよね」
「はい。つけるだけで大丈夫です」
そんなやりとりの間にも、店員さんの目はルークの顔をチラチラ。
ふふ、私のルースはイケメンじゃろ。
「はい、ルース。つけてみて」
トップに花弁のデザインがついた可愛いネックレスをルースに渡す。
「う、うん。あれ、どうやればいいんだ」
店員さんの、お前がつけるんかい、という雰囲気を無視して、ルースの後ろに回って、つま先立ちで、ネックレスのチェーンを結ぶ。
ネックレスというより、チョーカーっぽくなった。
しかも、意外に似合う。
すげえぜ、イケメン。
「あっ、なんか、力が湧いてくる気がする」
「大丈夫そうだね。これくださ~い」
◇◇◇
まだ時間が早かったので、先に宿を決めることにした。
「長期間滞在するようにしたら、安くなることもあるんだってさ」
ルースがそんな情報をくれた。
おまけに、良心的な値段の宿も見繕ってくれていた。
私が、ルースのステータスをどうしようか悩んでいる時に、ルースは宿のことを考えていたらしい。
冒険者ギルドの近くで、『優しい宿』という宿屋に決めた。
一週間以上の連泊で、朝食つき一泊5000エネル。ただ、一週間分前払いが条件なので、一度、ギルドに戻り、ラビットボールを換金。ついでに早めの夕食もとった。
『優しい宿』のおかみさんは、きっぷの良い大らかそうな人。
あの、格安宿のおばあさんと違い、ものすごく感じが良かった。
「二人部屋もあるわよ。ベッドは二つに別れてるから、節約したいならそっちにしてもいいんじゃないかしら」
なんて提案してくれた。
一人部屋を二部屋取ると一万エネル。
二人部屋なら7000エネルで済む。
う~ん、どうだろう。
ベッドが別々なら、それでも、いいような気もするし。
ルースと同じ部屋で寝るっていうのも、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいし。
でも、寝れるか、私?
めちゃくちゃ、意識しそうだぞ。
「いえ、別々の部屋でお願いします。できれば、隣部屋がいいんですが」
ルースが、あっさり断ってしまった。
ちょっと、切ない。
葛藤とか迷いとか、なかったの?
おかしいな。結構、意識されてるような気がしたんだけどなあ。
「私は、同じ部屋でも良かったんだけどな」と、つぶやいてみる。
「ダメだよ。俺だって男なんだからさ。その、フラワに変なことしちゃうかもしれないし」
顔を赤くして、最後はごにょごにょと言った。
なに、え、いきなりそういこと言うのマジで、困るよ。
顔が赤くなって、心臓がバクバクいってるぞ。というか、体中が赤くなってるかもしれん。
おかみさんが、微笑ましい、みたいな目で見てた。
「いいねえ、若い子たちは」




