表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/58

イケメンに貢ぐのです

 三日目。

 ラビットボール狩りを早めに切り上げて、ルースを買い物に誘った。

 ルースは、もう少し粘りたいみたいだった。(あと少しでレベルアップしそう)。


 やってきたのは、冒険者用魔法道具専門店『ブルンガル』。

 朝、受付嬢メリッサに魔法道具屋について聞いたら、ブレン・ブルーには高給な店と、格安な店の二つがあると教えてくれた。

 その格安な方が『ブルンガル』。


 ドアの前に立つと、勝手にドアが開いた。

 ビックリして、ホエエっと変な声が出た。

 

「すごいよ、ルース。ドアが勝手に開いたよ」

 と、はしゃいでいると、中から人が出てきた。


 あっ、普通に、この人が開けたのね。

 恥ずかし。


 クスっとルースが笑った。

「フラワは可愛いね」


 この野郎、なにいきなり褒めてんだ。

 顔が赤らむじゃねえか。

 イケメンめ。


 店内には、ベルトやマント、装飾品などが飾れていた。大物は壁にかけられていて、小物は低い飾り棚に置いてある。

 そして、一番高価な品物はガラスのカウンターの中にあった。


「2000万エネル……」

 なんてことない、銀の指輪ですよ。

 それが、2000万エネル。


 ただし、ステータスの全ての現状能力値が1.2倍アップ。

 つまり、【攻撃力】、【防御力】、【敏捷性】、【精神力】、【スキル力】、【魅力】が一気に跳ね上がる。能力値が高ければ高いほど上がり幅が大きいのか。

 持続効果三年間保障だって。有効期限あるんだ。高いのに。


「どれも高いなあ。とても手が出ないや」

 ルースがため息をつく。


 一番安いのが、【HP】を10上げる指輪だった。五万エネル。一年保障。


 実は、昨日の夕食時に、ルースのステータス値を紙に書き出してもらったのだ。

 その結果は、私が予想していた以上に、酷かった。


 基本能力値が、【かしこさ】だけが2で、それ以外1。

 現状能力値が、【攻撃力】5、【防御力】5、【敏捷性】3、【精神力】5、【魅力】3。

【HP】8の【SP】3。

 

 なんという、ポンコツステータス。

 だいたい、【魅力】も3っておかしいじゃない。

 ルースは魅力いっぱいだろ。


 しかも、これ、剣と防具を装備した状態でだからね。

 装備していない状態だと、【攻撃力】1の【防御力】1、【敏捷性】は5になるらしい。


 ルースのステータス値を聞くまでは、【攻撃力】を上げようと思ってた。

 でも【HP】8って、ヤバいんじゃないか。

 なんか簡単に死んじゃいそうだよ。


 どんな優秀な治癒師ヒーラーだって、死んだ人間を生き返らせることはできない。

 死んじゃったら、お終いなんだ。


 それを思えば、【HP】を10上げる指輪は買っておいていいんじゃない?


 ただ、八万エネル出せば、【HP】を15上げるネックレスが買える。完全に女物だけど。

 さらに12万エネル出せば【HP】30上げる腕輪が買える。


 一度、ギルドに戻って、今日の稼ぎを換金すれば、【HP】30の腕輪が買える。

 でも、スッカラカンになっちゃう。


 ルースは宿も変えたいって言ってたしなあ。


「ルース、どれがいいと思う?」


「そうだね。フラワにはネックレスがいいと思うよ。ほら、その治癒師ヒーラーの服、シンプルで飾り気がないし」

 でも、五万エネルかあ、とつぶやく。


「いや、私じゃなくて、ルースがつけるんだよ」


「お、俺が……。でも、これどれも女性向けの物だよ」


「そうだけど。ルースがつけなきゃダメなの。【HP】8じゃあ、危なすぎるもん」


 私の【HP】は3000ありますからね。

 10や30上がっても、あんまり意味がないの。


「決めた。腕輪にしよう。一度、ギルドに行って、ラビットボールをお金に変えてくるね」


「でも、これさ、俺の腕に入らないよ」


 あっ、そうか、サイズの問題があった。

 うわっ、それじゃあ、無理じゃん。

 いや、ネックレスなら、なんとかいけそうかな。


「ネックレスにしようか。ちょっとつけてみようよ」


 私は、カウンターからルースをジロジロ見ていた女性店員を呼んだ。


「これ、つけてみていいですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


「つけるだけで、効果があるんですよね」


「はい。つけるだけで大丈夫です」


 そんなやりとりの間にも、店員さんの目はルークの顔をチラチラ。

 ふふ、私のルースはイケメンじゃろ。


「はい、ルース。つけてみて」


 トップに花弁のデザインがついた可愛いネックレスをルースに渡す。


「う、うん。あれ、どうやればいいんだ」


 店員さんの、お前がつけるんかい、という雰囲気を無視して、ルースの後ろに回って、つま先立ちで、ネックレスのチェーンを結ぶ。

 ネックレスというより、チョーカーっぽくなった。

 しかも、意外に似合う。

 すげえぜ、イケメン。


「あっ、なんか、力が湧いてくる気がする」


「大丈夫そうだね。これくださ~い」




◇◇◇




 まだ時間が早かったので、先に宿を決めることにした。


「長期間滞在するようにしたら、安くなることもあるんだってさ」

 ルースがそんな情報をくれた。


 おまけに、良心的な値段の宿も見繕みつくろってくれていた。

 私が、ルースのステータスをどうしようか悩んでいる時に、ルースは宿のことを考えていたらしい。


 冒険者ギルドの近くで、『優しい宿』という宿屋に決めた。

 一週間以上の連泊で、朝食つき一泊5000エネル。ただ、一週間分前払いが条件なので、一度、ギルドに戻り、ラビットボールを換金。ついでに早めの夕食もとった。


『優しい宿』のおかみさんは、きっぷの良い大らかそうな人。

 あの、格安宿のおばあさんと違い、ものすごく感じが良かった。


「二人部屋もあるわよ。ベッドは二つに別れてるから、節約したいならそっちにしてもいいんじゃないかしら」

 なんて提案してくれた。


 一人部屋を二部屋取ると一万エネル。

 二人部屋なら7000エネルで済む。


 う~ん、どうだろう。

 ベッドが別々なら、それでも、いいような気もするし。

 ルースと同じ部屋で寝るっていうのも、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいし。

 でも、寝れるか、私?

 めちゃくちゃ、意識しそうだぞ。


「いえ、別々の部屋でお願いします。できれば、隣部屋がいいんですが」

 ルースが、あっさり断ってしまった。


 ちょっと、切ない。

 葛藤とか迷いとか、なかったの?

 おかしいな。結構、意識されてるような気がしたんだけどなあ。

 

「私は、同じ部屋でも良かったんだけどな」と、つぶやいてみる。


「ダメだよ。俺だって男なんだからさ。その、フラワに変なことしちゃうかもしれないし」

 顔を赤くして、最後はごにょごにょと言った。


 なに、え、いきなりそういこと言うのマジで、困るよ。

 顔が赤くなって、心臓がバクバクいってるぞ。というか、体中が赤くなってるかもしれん。


 おかみさんが、微笑ましい、みたいな目で見てた。

「いいねえ、若い子たちは」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ