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そして二人は……

「よし、ルース、いつでもいいよ」

 パンパンとベッドを叩いて言った。


 かけているシーツの下はまっ裸です。ついさっき、えいやって脱ぎ捨てからね。


 大きなベッドに、壁の可愛らしいランプ。カーテンはベルベッド地のちょっと豪華な感じのやつ。


 ここは寝室。私たち夫婦にとっての愛の巣。つい半日前まで、伯母ズを隔離していた離れを私たち夫婦に提供してもらい、今日からここに住むことになったのだ。幸い、長女夫婦が一時住んでいたこともあって、大きなベッドも完備されてあった。

 

「あれ、えっ、フラワ? あれ?」

 ルースがドアの前で呆然としている。


 無理もないかな。

 ルースがパンダヒル家に来て、まだ丸一日経っていない。

 その間に、プロポーズして、私、復活。

 ついでだから、とそのまま結婚式になってしまった。



「せっかくだから、このまま結婚式にしましょうよ。サクラ、グラスのウェディングドレス、あるかしら」

 などとお祖母ちゃんが言って。


「あるある。いつでもトゥリを送り出せるように準備万端よ。ルース君のは、どうしようか? ミックのじゃあ、大きいわね」


「まあ、ジャックとミック君の服で、なんかどうか、できるでしょう。ウメ、モモは昼食の準備。あなたとミック君はここにテーブルと椅子を運んできて」


 当事者の私とルースが、プロポーズやら復活やらの余韻に浸っている間に、お祖母ちゃんとママが、テキパキと指示を出して、準備を進めてしまった。


 あれっ、と私が気づいたときには、純白のウェディングドレスの着付けをさせられていた。


「ねえ、なんで私、これ着てるの?」


「なんでって、これから結婚式をするからでしょう?」

 着付けしてくれるママが、今更、なに言ってるのみたいな感じで返した。


「はあ? これから? いや、無理でしょう。準備どうすんの?」


「大丈夫よ。こんなこともあろうかと、備えはしてあるから。姉さんたちや、娘たちが、男を連れてきたら、逃げられる前に式をあげようって、母さんと密かに訓練してたのよ」


 なんだよ、結婚式の訓練って。

 

「相手がいろいろ気づいたり、覚めたりする前に、結婚式を挙げる。それがパンダヒル家の結婚よ。大丈夫、一時間で式まで持っていってみせるわ」


 いや、一時間て。

 さすがに、無理でしょう。


 そう思うじゃん。

 マジで、整えたからね、式の準備。

 長女グラスが着たウェディングドレスを身に着け、五千年樹のところに戻ってみると、そこには。


 大きなテーブルをつなげて、白いクロスがかけられて。どっから出したんだか、高価そうな燭台に皿にカトラリー。

 

 ルースはお祖母ちゃんが支度してくれたらしく、黒い上着にズボン。シャツにベスト。ネクタイ。上着が少し大きめだけど、ほかはそれほど変じゃない。

 いや、ポカンとしているルースが可愛いな。


「はい、ケーキ持ってきたよ」


 伯母のモモちゃんがクリームたっぷり、フルールいっぱいの大きなケーキを持ってきた。 


 いや、いや。なんでだよ。

 どうして、そんなケーキがすぐ出てくるのよ。


「半年前に、モモが、今回はいけるって、自信たっぷりにいってたから、みんなで備えてたんだよね。これ、そんときに作って収納袋に入れておいたケーキだわ」

 ウメちゃんが教えてくれた。


 そう言うウメちゃんは、ローストチキンとミートパイの載った大皿を持ってきていた。

 それらも、やっぱり仕込みをして収納袋に入れてあったらしい。

 すげえよ、うちの家族。 


 おまけに、馬に乗ったお祖父ちゃんが長女グラスを小脇に、その夫レックを後ろに乗せて、戻ってきた。

 えっ、どこの山賊ですか。


「いい、ペースね。あとは私たちの支度を整えるわよ。まだ諦める時間じゃないわ。40秒で支度しな」


 お祖母ちゃんが言って、その言葉にみんなが一斉に母屋に走っていった。

 あとに残された、私とルース。


「まさか、いきなり結婚式するなんて」


 ルースがつぶやいて、それから今、気づいたみたいに、ウェディングドレスを着た私を見る。

 顔が赤くなった。 


「その、綺麗だよ、フラワ。すごく」


「ルースもかっこいいよ。なんか、ごめんね。うちの家族、なんかいろいろアレな感じで」


「これから結婚するだよね」


「ええと……嫌?」


 ルースは、即座に首を横に振った。

「フラワがこうして、元気で。フラワと話せて。笑ってくれて。本当に幸せなんだ。もう、離れたくない」


 やべ、顔が緩む。変な笑いが出てきそうだ。


「ビックリしたけど。でも、今、結婚できるなら、そうしたい。本当だよ」


 ああ、もう、我慢できん。

 ふらふらっ、吸い寄せられるみたいに、近づいて。

 ルースが私を抱きしめる。

 そのまま、キスした。

 今度は私からね。



 その後、見事に結婚式の準備が整い。

 私たちは結婚した。


 つまり、今は結婚初夜。

 ついに、その時がきたのですよ。

 セックスというやつをいたすときがな。


「ほら、ルース。女に恥かかせないで」

 ベッドの上で、全力でおいでおいでをする。


「ごめん、なんか、まだ、ぼ~、としてて」


「お酒、飲まされてたもんね。まだ酔ってる?」


「いや、それは大丈夫だと思うけど」


「いける? セックス、できそう?」


「ま、まあ、たぶんね」


 ルースが視線を落とした。みるみる顔が赤くなっていく。

 うう、初い奴。


「よし、やろう」


「……うん、まあ、とにかく、そっちに行くよ」


 う~ん、なんかムードがでないぞ。

 難しいな。


 ルースがベッドの側に立った。

 ものすごい所在なさげだ。

 

「さあ、服を脱ぎたまえ」


「えっ、うん、そうだね」


 ルースがシャツのボタンを外していく。おお、なんかエロい。興奮するぞ。

 心臓が、バクバクいってる。


 シャツが、ふぁさり、と床に落ちた。

 そのまま下着を脱いで。ズボンも脱いで。

 ルースが生まれたままの姿になっていく。


 ダメだ。凝視できん。


「脱いだら、来てね」

 言って、シーツに潜る。


 みんなさあ。

 どうやってるのかな。

 ひとつひとつの段取りが、もうサッパリだよ。わけわからんよ。


 ていうか、ちゃんとできるのかな。

 ベルカーラさんからいろいろ教わったけど、なんかイメージがつかなかったというか。


 とにかく、最初は痛いらしいから、我慢しないとね。


 ベッドが揺れた。ルースが乗ったんだ。 

 いよいよか。いよいよなんだな。

 すげえ、緊張するよ。


「フラワ、いいよ」


 そっとシーツの上からルースの手が触れてくる。

 私はシーツから顔を出すと、ルースに抱き着いた。


 肌と肌が触れ合って、なんだか、それだけで、興奮のあまり鼻血がでそうだった。



「ご、ごめんね」


「大丈夫。こっちこそ、ごめん」


 ベッドで隣り合って横になって、天井を見ながら謝る私たち。

 つまり、結果は、かんばしくなかったわけでして。


 いや、頑張ったんだよ。でも、すっごい痛くてさ。

 悲鳴に、ルースがギョッとなってさ。

 それで、男の人のアレって、ナイーブだってベルカーラさん言ってたけど、本当にそれで。

 つまり、へこたれてしまったわけで。


「次は頑張るからね」


 決意をこめて言うと、ルースが手を握ってきた。


「焦ることないさ」

 優しく言った。


 なんか、胸がいっぱいになって、ルースの胸に顔を寄せる。

 厚い胸板。じんわりと汗をかいてて、唇を当てると、少し震えた。

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