フラワはVIP扱いされていた
「やっぱり光と闇の神ってところが、なんか古いんじゃないですかね」
白い靄がたちこめた世界。
フワフワの地面に膝をたてて座って、同じように座ってるルシディア様と話しているとこ。
「まあ、そうなんですけど。一人二役ってところが画期的じゃないですか。だいたい、光の神と闇の神がいて、争っているみたいな構図じゃないですか。まあ、でも、そうですね、私もだいぶ飽きてきましたし。そろそろ新しい役職になった方がよいかもしれませんね」
ルシディア様も、ユルユルな雰囲気で座っている。
「一人二役だとすると有と無とか」
「ちょっとイメージがしづらくないですか?」
「じゃあ、陰と陽とか」
「おっ、いいじゃないですか。それ、いただこうかしら。陰と陽を司る者、陰陽姫、みたいな」
「世界観もガラッと変えてみてはどうでしょう」
「東洋風味、マシマシですか。なるほど、なるほど」
「ここもなんか殺風景ですし」
「なんか、神様っぽいかなって思ったんですけど。難しいんですよね、神様っぽさって。ほら、あんまり尖がりすぎると、聖典とかに描写してもらえなくなるじゃないですか」
もう、結構な時間、ルシディア様とダラダラと話してる。
うん、暇なんだよ。
知りたいことも、疑問も、全部教えてもらっちゃったしさ。
最初はルースの様子とか見せてもらってたんだけど。
ルシディア様が下界をあんまり覗かない理由がわかったよ。
めちゃくちゃストレスたまる。
歯がゆすぎる。
口と手を出したくなる。
でも、そこで、干渉しちゃうと、なんらかの形で強い影響が出ちゃうらしい。
例えば、ルースに助言したりしたら、その分、不運に見舞われたりするみたい。
「できれば、魔王が誰か教えてあげたいんですけどねえ。それをすると、勇者が生きていることも魔王にバレるんですよ、たぶん」
世界の調整作用というらしい。
特に、勇者と魔王に関しては、世界に影響が大きい分、調整がかなり強く働くそうな。
ちなみに、ルシディア様が前回、勇者にお告げをしたら、その反動で魔王がパワーアップしたらしい。
「ブレン・ブルーの神殿の件もそうですよ。あれ、聖女アーナにお告げをした揺り返しです」
神様も大変だなあ。
反動がくることを見越して、それでもやらないといけないことをしないとなんだから。
ストレスが凄そうだよ。
「う~ん、もうそろそろマミが来てもいい頃なんですけど。ついさっき見たら、あなた方が住むところに近い、あの、ちっぽけな村にいましたから」
神様はあんまり名前を覚えたりしないらしい。それ自体が、加護として作用してしまうからだとか。
「ロイ村ですよ。もうすぐですね」
この世界と下界じゃあ、時間の流れ方が全然違うから、本当に、もうすぐだね。
ていうか、ルースが私の家に来るとか。
なんか緊張するなあ。
立ち会いたかった。
ルースのイケメンぶりを見て、感心する家族の顔を見たかったぞ。
フラワの癖に、こんなイケメンを捕まえてきた、だと……。
みたいな。
伯母さん二人と姉一人は、さぞ驚愕することでしょうな。くくっく、ざまあ。
いきなり、私とルシディア様が座ってるすぐ側が、ピカーっと光った。
光は薄くなりながら人の形をとる。
「こんにちは、ルシディア様。フラワも久しぶり」
お祖母ちゃんだった。
「マミ。お土産ありますか?」
「はい、はい、ありますよ。『少年ジャンパー』5年分です。私は『鬼減らしの刀』がお勧めですね」
お祖母ちゃんが光の塊をルシディア様に渡した。
ルシディア様から喜びの声が聞こえます。
お祖母ちゃんの【かしこさ】は、12桁までいちゃったらしい。そこまでいくと意識を別世界に飛ばせるらしくて、お祖母ちゃんはちょくちょく異世界に意識だけ戻って、マンガを読み漁っているんだってさ。
ルシディア様ともこんな風に気楽に会いに来れるとか。
ていうか、ルシディア様の性格がこんななの、絶対、お祖母ちゃんの影響を受けてるよね。
さっそく寝転がって、光の塊から大きめでカラフルな本に変わったものを読み始めるルシディア様。
「読むのは後にしてくださいよ。ルース君を待たせているんですから」
「ねえ、お祖母ちゃん、どう、私の彼氏、イケメンでしょう」
ドヤってみる。
「すっごい、イケメン。お祖母ちゃん、あと40歳若かったらなあ」
「ええ……、40歳若くても、厳しいんじゃない」
「そんなことはない」
「お祖母ちゃん、キリッとしても光だからわかんないよ」
「ちっ、不便なところだな、神界という奴は」
「お祖母ちゃん、そのネタなんだか知らないよ、私」
「ああ、これはですね。最近、あちらで流行っている……」
などと、ついつい、無駄話に花を咲かせている場合じゃない。
ルースが待ってるんだった。
「それで、お祖母ちゃん、私も連れて帰ってくれるんだよね」
ルシディア様の言うには、私の精神をお祖母ちゃんが肉体へと導けば、覚醒できるんだって。
だから、今ままでダラダラと待ってたわけでして。
別にサボってたわけじゃないぞ。
ちなみにルシディア様の力で私を覚醒させると、世界のどっかで3万人くらい死ぬらしい。揺り返し、怖いよ。
「ええ、そのつもりよ。ついでに【かしこさ】もそろそろあなたに譲ろうと思って」
「えっ、別にいいよ。3のままでも不便ないし。動物の言葉がわかったら、お肉とか食べにくくなるし。残留思念とか、いろいろきつそうだし」
「情報は視野を広げるが、行動を制限する元にもなる。知性とは、知るべきことと知る必要ないことを選り分ける能力だ」
クールな感じでお祖母ちゃんが言った。
「あっ、それ、『名探偵少女コナミ』の明日川君のセリフでしょ」
「ぶっぶ~、違います。これは『青き光』の名脇役、ロンド・デリカッセンのセリフです」
「それ読んでないし」
「ふふっ、これが、【かしこさ】3200億の実力というものだよ」
「お祖母ちゃん、【かしこさ】3200億の割には、全然かしこそうじゃないよ、この会話」
「まあ、それはいいとして。フラワ、ルース君とはどんな感じなの? もう、最後までしちゃった感じ? ひょっとして、そういう次元の話じゃない?」
ブッ。
いきなり、なんてことを聞くんですか、おばあ様。
「だって、まずいでしょ、このままだと。きちんと、それについて対策を練っておかないと」
さすが、【かしこさ】3200億。例の件のことも推測していたらしい。
「ああ、そこについては、ルシディア様と話し合って決めてあるよ。大丈夫、なんとかできそう。そうですよね、ルシディア様」
ああ? っと気だるげな声。
ルシディア様は仰向けに寝っ転がって、マンガを読んでいた。
◇
「じゃあ、いろいろとありがとうございました。もう会うこともないでしょうが、時々、チラ見してくださいね」
ルシディア様に手を振る。
「ええ……、寂しいことを言わないでくださいよ」
ルシディア様のテンションが駄々下がりです。
「たまには会いに来てくださいよ」
「いえ、お祖母ちゃんじゃあるまいし。無理でしょ。ルシディア様が会いにくると、変な影響があるっていうし。私たち、これで終わりにしていいと思うの」
「ううっ、フラワが私から巣立っていく。切ないものですねえ」
「ルシディア様もすっかりノリが良くなっちゃって。やっぱりマンガの影響はすごいわねえ」
やっぱお祖母ちゃんのせいじゃんか。
ルシディア様がこんななの。
「では、ルシディア様、もう会うこともないでしょうが。今ままでありがとうございました」
お祖母ちゃんが寂しげな顔で言った。
「いえ、あなたは、いつでも会いに来れるでしょう? というか、もうすぐ、こっちに永住する感じでしょう?」
「あっ、私、すぐ転生したい派なんで。フラワの孫とかに転生したいところですねえ」
「ダメです。マミは、陰陽姫の眷属で、今のロベリアンネの的なポジションに収まってもらうんですから」
「いえ、神様とか、絶対無理なんで。ほかを当たってくださいね」
そんなグダグダな会話をしてたら、また無駄な時間が経ってしまった。
いやいや、いい加減に戻らないと。
「じゃあ、お祖母ちゃん、私、ぼう~、としてるから、うまく誘導してね」
「任せておきなさい。既成事実を作ってしまえばこちらのものです。くっくっく、気づいたときには、彼もパンダヒルの一族」
「お祖母ちゃん、今、光だから、悪そうな顔しても分かんないよ」
「おやおや、そうでした。ちっ、不便なところだな、神界という奴は」
◇
目が覚めるっていうより、ストン、と体に収まった感じだった。
お、これこれ、肉体肉体。
それで、目の前にはルースがいて。
相変わらずの超イケメンっぷりに、うっとりした。
おっと、私はまだ、ぼ~っとしてなくてはいけないんだった。
ボンヤリと虚空を見つめていなくては。
これはこれで大変だなあ。
「ところで、ルーシフォス君。あなたはフラワとの結婚を考えているかしら?」
お祖母ちゃん、いきなりいったよ。
すげえ、唐突だよ。
やばい超緊張する。
「はい。魔王を倒して、まだ俺が生きていたら、結婚を申し込もうと思っています」
ルース。ルース。
私もルースと結婚したいよ。
「あら、ダメよ。何年先になるか分からないのに、女を待たせたりしたら」
「でも、俺、ロイドさんから……、身代わりに俺のために死んだ人から、預かった命だから。魔王を倒さないと」
そうだね。私もベルカーラさんから命を貰ったから。
だから大切にしないと。大切に生きていかないと。
「もちろん、魔王は倒してもらいますよ。でも、そういう死亡フラグを立てるようなことはしちゃあダメよ」
おい、フラグとか言うなや。
ルースにはわかんないって。
「死亡フラグ?」
「ああ、そこに食いつかなくていいわ。流して。流して。とにかく、先に結婚しなさい。魔王が世の中に出てくるまで、まだ何年かかるかわからないんだから。張り詰めた気持ちで待ち続けていたら、いざというときに失敗するわよ。うん、今から、プロポーズしてちょうだい」
お祖母ちゃん、もう、力技だよ。
なりふり構ってない感じだよ。
「えっ、い、今からですか。でも、フラワもこんなだし。俺、指輪もなにも……」
ほら、ルースが戸惑ってんじゃんか。
「そんなのはいいのよ。私も、娘のサクラも、五千年樹の下で、プロポーズしてもらったの。五千年樹の下で、キスして、結婚を申し込む。これだけでオッケー。誰にでもできる簡単な仕事です」
お祖母ちゃん。雑だよ。まとめかたが雑過ぎるよ。
「さあ、行くわよ」
お祖母ちゃんは立ち上がり、私を引っ張って部屋から出ていく。
「ふふ、我ながら素晴らしい流れ」
お祖母ちゃんが、つぶやく。
なに自分に酔ってんの。ぜんぜん、だったよ。超テキトーだったよ。
ルースが後からついてくる。
「あの、俺、まだ、覚悟が……。というか、本当に、するんですか? プロポーズ」
後ろから言った。
「もちろんよ。騙されたと思ってやってみなさい」
いい笑顔で振り返って、お祖母ちゃん。
もっと適切な誘導してよ。なんで、だんだん雑になってるの。
「サクラ~、サクラ~」
お祖母ちゃんが大声でママを呼ぶ。
トトトとママがキッチンの方から廊下を走ってきた。
「どうしたの、母さん」
「これからルース君がフラワにプロポーズするの。木の下にみんな集めて」
「ポッ、こんなイケメンのお婿さんが我が家に」
ポッとか口に出して言わないで、お母様。恥ずかしいから。
「私のことは、ママって呼んでね。私、イケメンの息子が欲しかったのよ。サクラって呼び捨てにしてくれてもいいわよ。むしろ、この二択しか許さないわ」
やめてよ。ルースがリアクションに困ってるじゃんか。
「それなら私は、マミって呼び捨てにされたいわね」
「じゃあ、みんな呼んでくるね。母さんは先に行って準備してて」
トトトと、また行ってしまう母。
大丈夫かな。ルースに、呆れられてないかな。
後ろを振り返って、ルースの顔を見たいよ。
外に出る。
鼻をつく緑の匂い。
風が五千年樹の葉を揺らすサラサラって音が、何重にも響く。
お祖母ちゃん、鼻歌歌って、すごく上機嫌。
咲き誇る花壇。お祖父ちゃんお手製のプランコ。懐かしいなあ、全然変わってないよ。
裏庭を抜けて坂道を上る。
こんもりと盛り上がった草原。そのまん中から伸びるでっかいでっかい五千年樹。
お祖母ちゃんに手を引かれ、五千年樹の幹の側へ。
「すごい木ですね」
ルースが言った。
「五千年樹っていうのよ。私も、娘のサクラも、この木の下でプロポーズさせたの」
お祖母ちゃんが言った。
されたのじゃなくて、させたのってところがポイントですな。
パンダヒルの女はアグレッシブだからね。
「そんなわけだから、ルース君もここで、フラワにプロポーズをするのです。我が一族の輪の中でね。それが掟です」
なんか、掟に昇華してるし。
お祖母ちゃんが言うと、本当にそうなっていきそうだよ。
「でも、あの、できたら、フラワが治ってからの方が。こんな状態でプロポーズをするなんて……」
「大丈夫。フラワはいつもこんなものよ」
だから、フォローが雑なの。
【かしこさ】3200億はどうしたの。
なにに使ってるの。【かしこさ】3200億。
あっ、マンガだ。マンガのためだけに使ってたわ、この人。
そうこうしているうちに、我が一族が集まってきた。
「いきなりプロポーズとか急じゃないですか? 大丈夫ですか、あとで訴えられませんか?」
パパが言った。
「大丈夫よ。ルース君はそんな小さい男じゃないから。恋人を治してもらいに来たはずなのに、いつのまにか結婚させられていた。これは陰謀だ。なんて感じにはならないわ。ねっ、ルース君」
「えっ、はあ」
「まあ、私としてはこの家に男が増えるのは万々歳だが。本当にいいのかい? パンダヒル家に婿入りするのは大変だぞ」
「あの、俺がこちらに住むことになるんでしょうか?」
ルースはまだ戸惑っている。
当たり前です。
「それはそうよ。それが掟だもの」
いや、なんでも掟で済ますな。
ていうか、お祖母ちゃんが勝手に作ってるんでしょう。
「ちょっと、フラワがプロポーズされるって、本当なの。ねえ、私は、私はどうなるのよ」
二番目の姉トゥリが来た。
「しかも、イケメンだって? フラワの癖に生意気よ。まあ、お祖母ちゃんとか審美眼が古臭いからなあ。どれどれ、私が、イケメンとやらの面を拝んでやろうか。くっくっく」
我が一族はなんでこんなにアレなのかしら。
「おい、小僧、こっちを向け。私がそいつの姉のトゥリである」
「あの、初めまして。俺、ルースです」
姉が、ゲエエエ、とかいう汚い声をあげた。
「な、なんて、なんて、イケメンなの。見ているだけで、体中からいろんな液体が流れ出ていきそうだわ」
おい、なに言ってんだ。
すぐその腐った目を閉じろ。
私のルースが汚れるだろ。
「あ~あ、また姪に先を越されるのか。嫌だ、嫌だ」
「いい加減に諦めたら、モモ。開き直って二次元の男たちを愛でようぜ」
「なんの。こっちはまだウメちゃんと違って三十台。問題ない」
「あと一年で、お前も四十だけどな」
伯母ズが来た。
お祖母ちゃんの影響を色濃く受けて、マンガ大好き、二次元大好きなウメ伯母さん。ちなみに、男同士が、どうのこうのの、マンガを描いている。
モモ伯母さんは素敵な旦那様を捕まえようと、家を出ては、戻ってくるを、繰り返している。
ウヘエエ、イケメン様、ウヘエエ、とか壊れた感じでつぶやいている姉トゥリの側に来る伯母ズ。
「うおおおっ、美少年モデル、ゲットだぜ」
ウメ伯母さんが狂喜して叫んだ。
「これ、あれかな。フラワのダメさ加減に失望した彼が、大人で、できる私に惹かれてみたいな、パターンじゃないかな? そういう感じにならないかな。ていうか、そういう感じにするか。よし、そうしよう」
モモ伯母さんが、なにやら不穏な発言をしている。
「モモちゃん、年を考えなよ。彼が選ぶのは私よ」
姉トゥリが対抗しだした。
「私の方が、あらゆる面でフラワを凌駕しているもの。フラワの上位互換、それが私、トゥリよ。姉より優れた妹などいねえ」
「オホホホ、小便臭い小娘がなにやらたわごとを。愛は年齢を超越する。それこそが真実なのですわ」
「あら嫌だ。風に乗って加齢臭が流れてきますわ。その性格と小じわをどうにかしてから、出直しなさい」
姉トゥリとモモ伯母さんがなにやら始めたぞ。
もう少ししたら、殴り合いになると思うの。
「わしの可愛いフラワと結婚しようとは。いきなりやってきて、なんという無礼な奴。この剣の錆にしてくれん」
あっ、お祖父ちゃんが来た。
「ダメよ、父さん。フラワに彼氏ができるなんて、この先ないかもしれないのよ。ウメちゃんや、モモちゃんみたいになったらどうするの? トゥリだって、なんか、もうそっち側に行きそうなんだから。しかも、超イケメンなのよ」
「イケメンがどうした。男なら強さだろうが。フラワが欲しければ、わしに勝ってからプロポーズでも、なんでもするんだな。うん、これだ。これでいこう」
「父さん、私の時もそんなこと言って、母さんに怒られてたじゃない」
「ふん、マミは世間知らずなんだ。神殿にこもり切りだったんだぞ。わしに会った頃など、右も左もわからなくて。ふふっ、可愛いかったなあ」
「あら、ジャック。剣なんかもって、どうしたの?」
お祖母ちゃんが言った。
「まさか、せっかく我が家にきてくようとしているお婿様に、向けるつもりじゃあないわよね」
優しい声だけど、なんかやたら迫力があるぞ。お祖母ちゃん。
「う、うむ、これは、ちょっと素振りでもしようと思ってな」
「そうなの? 私はてっきり、孫娘が欲しければ、わしと勝負しろ、なんてわけのわからないことを言うのかと思ったわ。年甲斐もなく」
ゴホン、ゴホンとお祖父ちゃんが咳をする。それから矛先をパパに向ける。
「おい、ミック。お前はいいのか? どこの馬の骨ともわからない男に、娘を取られて」
「えっ、まったく構いませんよ、お義父さん。むしろ、我が家に男が増えるのはありがたいと思ってますけど」
「さすが、私のミック。父さんと違って器が大きいわあ」
「うっ、あの可愛かったサクラが……。男親とは切ないものだなあ」
「はいはい、切ない切ない。あっ、このルース君は冒険者もやってたのよ。あなたと気が合うかもしれないわね」
「なにぃ、それは本当かね。ついに、私の冒険仲間が……」
あっ、うちの家族のやかましさにルースが圧倒されてる。
俺、この中でプロポーズするの? みたいな雰囲気だよ。
パンパンとお祖母ちゃんが手を叩いた。
「はいはい。お静かに。これから、こちらのルース君が、フラワにプロポーズをしますよ。みんなで温かく見守りましょうね」
うわあ~、このきつい状況で振ってきたよ。
「はいはい、フラワはここで、ルース君はこっちね。よし、準備オッケー。いいわよ、ルース君。頑張れ」
ルースが、マジかよって顔してる。
ちょっと可愛そうだなあ。
でも、プロポーズして欲しいなあ。
して欲しいな。
してよ。
引きつった顔で私を見るルース。
そのまま時間が経っていく。
ガヤガヤと私たちを囲んで、言いたいことを言っているパンダヒル一族。
来るか、来るか、と待つ私。
なんか、始めてルースに会った時を思いだした。
倒れたルースを治して。
彼がいつ目を開けてもいいように、フンワリ笑顔で待ってたんだよね。
なかなか目を開けなくてさ。
頬が引きつってきて、モミモミしてるところで、ルースが目を開けて。
そんなことを思いだしたら、顔が緩んで、ちょっと笑ってしまった。
やべっ、ぼんやり、ぼんやり。心を無にするんだ。
下を向いていたルースは、いつのまにか顔を上げていた。
気づいてないよね。
その顔が近づいてきた。
おっ、おっ。
優しく唇に唇が当たった。
それはすぐに離れて。
ルースの両手が肩をつかんだ。
「フラワ。俺、君が好きだ。俺と結婚してくれないか」
もう、いいよね。
ていうか、無理。これ以上は我慢できない。
ルースの顔をしっかり見たくて。
笑いが顔中に広がっていって。
なんだか知らないけど、涙が出てきた。
「私も、ルースが好き。大好き。結婚する。やっぱり無しって言っても、結婚するから」
思いっきり抱き着いた。
その勢いでルースが倒れる。
驚いて、目を白黒させているルース。その目から涙があふれる。
そんな彼に頬ずりしながら、私は宣言した。
「幸せにするからね。絶対」




