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フラワ、イケメンと出会う

 カウンターに戻ると、受付嬢のお姉さんが、『初めての治癒師ヒーラー』という本をくれた。


「あとはこれを参考にしてください」


なんか塩対応だな。

そんなことじゃ、彼氏、できないぞ。

 

空いてるテーブルについて、本を読む。


――――――

ジョブチェンジしたら、まずロベリアンネ神殿に行こう。

 神殿に登録しておけば、お金が無くても衣食住の世話をしてもらえるぞ。

 さらに定期的に奉仕活動をすれば、神官に取り立ててもらえる。安定した職につけば、人生の苦難も減るはずだ。

――――――


 なんか、いきなり、冒険者を否定しているような。


 う~ん、無銭飲食できるのは魅力的だけど、なんかいろいろ面倒くさそう。

 私は、イケメン冒険者の奥さんに永久就職が目標だから、パスかな。


 ――――――

 スキルを覚えよう。

 神殿に所属したら、先輩神官に取り入ろう。仲良くなれば、スキルを伝授してくれるぞ。

 コミュニケーションに自信のない君。そんな君には、とっておきの手がある。こっそり賄賂を渡すんだ。額が多ければ多いほど効果的だ。


 ほかにも、スキルを覚える方法を紹介しよう。


 方法①

 スキル本を読む。高価だが、自分の好きなスキルを覚えられる。


 方法②

 スキルを奪い取る。同業の治癒師ヒーラーを襲い、無理やりぶんどる方法だ。神殿に所属している治癒師ヒーラーだと、あとが大変なのでフリーの治癒師ヒーラーを狙うと良いだろう。ちなみに、強奪するにはスキル奪取ロブというスキルが必要だぞ。


 方法③

 モンスターを倒してスキルをゲットする。モンスターの中にはスキルを持っているモンスターもいる。そんなモンスターを倒せば、スキルが手に入ることもあるぞ。

 やっぱりスキル奪取ロブのスキルが必要だ。

――――――


 なんだか、著者の心が真っ黒い気がする。というか、フリーの治癒師ヒーラーを悪の道に誘導してませんか。


――――――

 パーティを組もう。

 治癒師ヒーラーは仲間を回復するのが仕事だ。戦闘中は、適当に杖を振って、戦っている振りをしていれば仲間が敵を倒してくれるはず。

 頭の悪い戦士と世間に慣れていない魔法使いの組み合わせが最高だ。君がパーティの財布を握れば、裏でやりたい放題だぞ。

――――――


 なるほど、なるほど。

 頭が悪くてイケメンの戦士を探せばいいのね。オッケー。

 

――――――

 レベルアップしよう。

 神殿に所属すれば、奉仕活動の一環で治療奉仕をさせてもらえるぞ。これは、神殿を訪れた怪我人や病人に、治療技ヒールスキルをかける活動だ。EXPはモンスターを倒す以外にも、効果的にスキルを使った時にも上がる。

 つまり、安全で確実なレベルアップ方法が、これだ。

 もし、まだ神殿に所属していないようなら、急いで、近くの神殿へ駆けこもう。まだ間に合うぞ。

――――――


 なんか、勧誘がしつこくなってきた。これ、著者、絶対、神殿関係者だよね。


――――――

 装備を整えよう。

 神殿に所属していても、神官にならなければ報酬は得られない。まずはがんばって神官になることだ。

 神官になれたら、等級にあった神官衣を貰えるぞ。等級の高い神官衣ほど、防御力も付与高価も高い。

 ほかにも不心得者を成敗するために必須なメイス、や、祈る時にさりげなく見せびらかせる素敵なアミュレットなど、神殿で購入可能だ。お金をためて、それらを買えば、君も威厳を保てるぞ。

――――――


 う~ん、別に威厳はなくていいんだよね。それより、ドジでほっとない、あの子、みたいな立ち位置。それか、おもしれえ女、的な立ち位置がいいなあ。


――――――

 こんな仲間には気を付けよう。

 容姿が整い過ぎている若者に「パーティを組んでくれ」と誘われ、いつの間にか娼館に売り飛ばされる、そんな事案が多発している。美形には注意が必要だ。

 特に金髪碧眼で目尻が下がった、いかにも王子様という容姿には気を付けてくれ。

 心細げで頼りなく見えるなら、それはもう、間違いなく詐欺だ。美形が心細げな態度で君を誘ってくるなど現実ではありえない。

 特に以下の苗字には要注意。

 バックネット、バークネルテ、バクーナネリー、バクネレッツ。

 この名前がいたらご用心。

 レセディアス、ルーシフォス、レストラス。

――――――


 へえ、過去にこんな名前の危険人物でもいたのかな。

 それとも、著者が心底憎んでいる人とか。


 まあ、いいや、スルー、スルー。

 詐欺が怖くてイケメン狙いができますかって。


 バタン、と大きな音をたてて玄関ドアが開いた。

 

 なに? 

 うるさいよ。


 よろよろと血だらけの少年が入ってくる。金属の胸当て、腰に差した剣。戦士風の冒険者。


「……お願いします、助けて……」

 男の子はバタンと倒れた。


 あれ、誰も駆け寄らないぞ。

 店内には治癒師ヒーラーが何人もいるのに。

 カウンターのお姉さんも困ったような顔をしている。


 まあ、いいや。続き読もう。

 ……。

 …………。


 って、なんで誰もなんにもしないのよ。

 大怪我して倒れてるじゃん。死にそうじゃん。


 私は、倒れている少年の元へと行った。

 そりゃあ、ものすごく面倒さいけどさ。

 なりたてだけど、治癒師ヒーラーだし。

接触治癒タッチヒールのスキルを持っているのだ。


 さっきの受付嬢と目が合った。

 なに、ボケっと突っ立てるのよ。あんたのシマに怪我人がいるのよ。

 てな、感じでにらむ。


 受付嬢が小さく首を振った。

 なんじゃそりゃ。


 もしもし、生きてますか。

 うつぶせに、ぐてっと伸びている少年の体を揺らす。

 返事はない。ただの屍のようだ。


 あっ、ちょっと動いた。生きてる、生きてる。

 少年の体をひっくり返す。

 

 ドキッとした。

 だって、ものすごいイケメンだよ。

 学校一モテたトーマス・レインなんて、この彼と比べたら、ゴブリンにしか見えないよ。


 目を閉じていて、苦し気な顔で、しかも顔の半分くらい額から流れた血で汚れてるけども。

 でも、キラキラと輝いて見える。

 これが、真のイケメンというやつか。


 年は私と同じくらい。

 装備は、いかにも安物って感じ。体が細くて、防具に着られてる感じ。

 怪我は額の傷と、脇腹。

 腕や足なんかにも細々(こまごま)あるけど、そっちは大したことなさそう。


 さあ、治療、治療。

 イケメンとわかったからには、俄然やる気がでてきたぞ。


 ついさっき覚えた接触治癒タッチヒールの出番だ。

 ……出番だけど、スキルってどうやって使えばいいんだろう。


 まず、そこから書きなさいよ、『初めての治癒師ヒーラー』。


 まあ、いいや。とりあえず、適当にやってみよう。

 傷口に手を当てて。


接触治癒タッチヒール」と唱えてみる。


 おっ、手が白く光った。

 少年の額も光ってる。


 なんだ、超簡単じゃん。


 光はすぐに消えた。


 どれどれ。うん、ちゃんと治ってる。

 傷跡もまったく無くなってる。


 ああ、このサラサラの金髪、好き~。

 なんか、いい匂いしそう。

 

 おっと、治療の途中だった。

 イケメンを堪能するのは治してからよ、フラワ・パンダヒル。

 

 今度は脇腹に手を当てて……。


接触治癒タッチヒール


 また白い光。

 思ったんだけど、私、もう照明いらずじゃない?

 どんな暗闇でも、明るくできる接触治癒タッチヒール、ついでに怪我も治せます。


 脇腹の傷は少し時間がかかった。それだけ深い傷だったんだ。

 私は少年がいつ目を開けてもいいように、ふんわり笑顔を作った。もちろん、角度にも気を付ける。鼻の穴があんまり見えないように。


 さあ、こい。

 目を開けていいぞ。

 いつでも、こい。


 なかなか目を開けない。

接触治癒タッチヒールのおかげか、青白かった顔色が、良くなってる。

 いつ目を覚ましても、いい感じだ。


 おっと、前髪がちょっと変なカールをしてるじゃないか。直して直して。

 いいぞ、イケメン。

 目を開けて、このフラワ・パンダヒルのふんわり笑顔を見るのだ。


 ……。

 …………。

 表情筋が、限界、だ。

 ちょっと、休憩。

 

 ふにふにと顔をもむ。

 モミモミしながら、イケメンを眺める。


 はあ、それにしても、本当に、すごいイケメンだなあ。

 すっと通った鼻筋。形が良くて少し濃い眉。ほんのり赤くて柔らかそうな唇。

 眼福、眼福。


 パチッとイケメンの目が開いた。

 

 ええ……。

 ねえ、それはないでしょう。

 今、顔もみほぐしてるところじゃんか。

 ふんわり笑顔の休憩中じゃんか。

 すっげえ、変顔してるよ。


 とりあえず、ほっぺをつまんでいた手を放し、何事もなかったように、ふんわり笑顔。

 

 イケメンの青い瞳。その中に私の顔が映っているのが見える。

 セーフか? ぎりセーフだったか?

 目は開けども、意識には入っていなかった的なやつか。


「顔、どうかした?」

 イケメンが言った。


「えっ、どうして?」


「なんか、頬をつまんでたから」


 うん。まあ、ね。そうだよね。


 イケメンが上体を起こした。脇腹と額に手を当てる。


「君が治療してくれたのかい?」


「ええ、そうよ」


 そうです。治療したのは、この目の前の可憐な乙女です。

 フラワ・パンダヒルです。


「ありがとう。助かったよ」


 イケメンが微笑んだ。


 ドキッ、というかバチッという感じに全身に衝撃がきた。イケメンの微笑みはすごい威力だ。

 なに?

 殺しのきたの?  


 イケメンが立ち上がった。そうすると、思ったより背が高い。私より頭一つ分は大きい。

 ただ立っているだけなのに、妙にかっこいい。つまり、美しいポーズを決める凡人を、ぼ~と突っ立っているイケメンははるかに凌駕するということだ。

 これ、もうスキルじゃね。


「本当にありがとう。俺はルーシフォス・バックネット。ルースでいいよ」


 あれ、どっかで聞き覚えのある名前だな。

 ルーシフォス・バックネット。

 そんなような名前、知り合いにいたっけか。


「私は、フラワ・パンダヒル。フラワでいいわ」

 パチッとウィンク。


 毎日の地道な鍛錬のかいあって、様々な場面でさらっとウィンクができるのだ。


 ぷっ、とルースが笑った。

 ええ……、なにその反応。


「ごめん、だって、君が変な顔するから。おもしろいね、君」


 あっ、おもしれえ女、みたいなのきたよ。

 でも、なんか違くね?

 これ、ユニークじゃなくて、ユーモラスって感じのおもしろいじゃね?


「よろしく、フラワ」


 ルースが手を出す。

 私はその手をニギニギした。

 

「く、くすぐったい」


「よろしくね。ルース」

 キャピっとした声で言った。

 

 ビジュアル的に印象付けるのは失敗しっぽいから、ボイスで印象付けるのだ。

 フラワの声って、可愛いよな、ってなるようにね。


「とりあえず、顔洗ってきたら? 血がついてるよ」


 さっとハンカチを差し出す。

 こういう時のために使わないで取っておいたハンカチだ。

 さっきチキンの油を洗った時には、手をブンブン振って乾かしたからね。


 ルースが私の差し出したピンク色のハンカチを見る。

 あれ、なんかおかしい?


 不思議そうに私の顔を見る。

 へ、なに、なに?

 イケメンに凝視されると、すごい緊張するんだけど。

 脇にすげえ、汗かくんだけど。


「君は、俺のこと嫌わないんだね。治癒師ヒーラーなのに」


 ほえっ? と変な声が出た。


「ひょっとして、ジョブチェンジしたばかりとか?」


「うん、ついさっき、ジョブチェンジしたところ」


「そうか。じゃあ、まだ読んでないのかな……」

 ルースはブツブツ言いながら奥の通路へと行ってしまった。


 差し出したままのハンカチが切ないぜ。

 

 コホン、コホン、とカウンターで咳払い。

 受付嬢のお姉さんが、こっちに来い、と目で合図している。


 なに? イケメンと仲良くしてたから、嫉妬した? 

 これだから美人は。

 すべてのイケメンは自分のものだって、思ってるんだからさ。


「フラワさん。ちゃんと本、読みましたか?

『初めての治癒師ヒーラー』」


「読んでますよ。見てたでしょう?」


 そこに立ってたなら、私が読書に励んでいる姿がバッチリ見えてたはず。


「じゃあ、なんでルーシフォス・バックネットと仲良くなるんですか。注意事項に書いてあったでしょう」


 うん?

 そうだっけ?


 テーブルから『初めての治癒師ヒーラー』を取ってくる。


「ほら、そこに」


 受付嬢に言われたページ。

 ああ、本当だ。

 それで、どっかで聞いたような名前だったんだ。


 金髪碧眼、垂れ目で心細げのイケメンって、まんまじゃん。

 名前もバッチリ該当していますね。

 えっ、なにこれ、当て書き?


「それで、誰も彼のこと、治してあげなかったんですか? お姉さんも、無視してたし」


「し、仕方ないんですよ。ロベリアンネ神殿から圧力があって。『初めての治癒師ヒーラー』も、三年前に無理やり差し替えられたんですから」


「大人の事情ってやつですか。ルースがなにかしたんですか? 神殿に忍び込むとか」


「別に彼を名指しってわけじゃないんですよ。今までも、金髪碧眼のハンサムな人は、結構、治癒師ヒーラーから嫌がられて。治癒師ヒーラーがいないと、パーティがなりたたないでしょう。それで結局、パーティを組めなくてですね」


「貴重なイケメン冒険者になんてことするんですか。一人の女として、心底軽蔑します。イケメンは保護してナンボなのに」


「とにかく、彼には近づかない方が身のためですよ。いいですか、私はフラワさんが、ば、あまり頭が良くない人だから親切に忠告しているんですよ」


「具体的に、どういう弊害へいがいがあるんですかあ。それって、イケメンと親しくなるメリットを凌駕するデメリットなんですか?」


「そうですね。とりあえず、ロベリアンネ神殿の利用はできなくなるでしょう」


「あっ、別にいいですよ。私、縦のつながりも横のつながりも嫌いなんで」


治癒師ヒーラーはロベリアンヌ神殿の奉仕活動をした方が得ですよ」


「でも、組織のしがらみとか面倒くさいじゃないですか。せっかく、冒険者っていう気楽で自由な職業なのに、台無しです」


「ほかのパーティからいびられるかもしれませんよ」


「ええ……、冒険者ギルドってそういう行為を放置するんですかあ。小さな腐敗から組織の崩壊は始まるんですよ」


「も、もちろん、過ぎた行為は、取り締まりますけど」


「私、すごく繊細そうに見られるんですけど、結構、メンタル強めなんですよ」


「いえ、見たまんまですが」


「靴を隠されたときは、逆にクラス全員の靴を隠してやりましたし。スープに虫を入れられた時は、一週間、毎日、昼食の時間に大量の虫を、教室に解き放ち続けましたから」


 やられたら三倍返し。犯人がわからなければ、全員に三倍返し。パンダヒル家の家訓です。


 ルースが戻ってきた。

 お姉さんが知らぬふりをする。


 綺麗になったルースは、キラキラと輝いていた。まぶしいよ。なに、この超イケメン。


「綺麗になったかな」


「うん、もうまぶしくて目が開けられないくらい、美しいです」


 クスっとルースが笑う。

「やっぱり、面白ね、フラワさん」


「あ、ちょっとその表情と角度を維持して。心の目に焼き付けておくから」

 マジでベストな角度、表情。ああ、この映像を切り取って、永久保存したい。


「えっ、こ、こう?」


「あっ、ちょっとズレた。まあいいや。ねえ、座ろうよ。なにか食べない?」


 イケメンを食事に誘ってしまった。

 しかも、超自然に。

 すごくね、私、すごくね。

 

 心臓が、バクバクいってるけどね。


 ふっ、とルースの顔が曇った。

 なに、束縛の強い彼女いるとか、そういやつ。

 それともダイエット中とか?


「俺とあんまり仲良くしない方がいいよ。その、君は治癒師ヒーラーだから、特に」


「あっ、それってこれのこと? これ気にしてるの?」


 言いながら、『初めての治癒師ヒーラー』をパラパラめくる。

 あった、注意事項のページ。


 ルースの顔から血の気が引いた。

 そりゃあ、これだけドンピシャで当てはまればねえ。

 

「大丈夫。大丈夫。私、人にやめろって言われたら、むしろやりたくなっちゃうタイプだから。触るな危険、とか書いてあったら、取り合えず触ってみるタイプだから」


「で、でも、君がひどい目に……」


「別に平気だってば。ロベリアンネ神殿に行かなければいいんだし。もともと、行く気なかったし」


 ルースの手を取って、さっきまで座っていたテーブルに連れていく。

 ぐふふ、合法的接触。

 イケメンは手触りまで、ええのう。


 ルースと一緒にテーブルにつく。

 周りから、すごい見られてるけど。

 治癒師ヒーラーからめっちゃくちゃ睨まれてるけど。

 全然気にならないね。

 むしろ、心地よい感じ。

 そうよ、私はイケメンと相席しているのよ。


「ルースはいつ冒険者登録したの? 最近でしょう?」


 胸当ての劣化具合を見るに、あまり使い込んでいなさそう。


「一週間前。村から出てきたんだ」


「偶然だね。私も村から出てきたんだよ。村ってダサいよね。やっぱ街がいいよね」


「いや、もう村に帰りたいよ。俺……」


 弱気になってる。この一週間、よっぽどな目にあってきたんだね。


「ダメだよ、ルース。せっかく、あんな村から出てきたんじゃない。頑張って、街で暮らしていこうよ。あんな、狭くて、せせこましくて、ギスギスした村に戻って、みじめに一生を終えるっていうの?」


 ルースが笑った。

「そんなに酷い村じゃないよ。山の中だけど、みんな優しくて仲良くて」


 ルースが目を閉じた。唇をかみしめる。

 なんか、想い出に浸ったり、決意を新たにしたり、そういう感じかな。

 

 私はその前で、ウェイトレスのお姉さんを呼んで、次々と料理を注文した。

 ふっ、私は空気を読める女。

 ルースの感傷を邪魔するようなことはしないぜ。


「ありがとう、フラワさん。俺、もう少し頑張ってみるよ」


「具体的に、どう頑張るの?」


「えっ、なんとか冒険者として、やっていけるように……」


「ルースはパーティ組まないの?」


「ほら、俺、治癒師ヒーラーから嫌われてるから、誰も組んでくれなくて」


「ああ、そうだった。忘れてたよ。ごめんね、心の傷口をえぐっちゃったよね。もう、私の馬鹿」

 ポカっと頭を叩く。


 ずいっと前のめりなって、ルースの手を両手で握った。

 おお、近いぞ。イケメンとの間が十五センチくらいだぞ。

 動悸が。動悸が。


「私とパーティ組まない?」


 ルースが驚いた顔になった。

 ふぁさっと、睫毛まつげのなっがいまぶたが、パチパチ。


「パーティ組もうよ」


 ルースが泣きそうな顔になった。

 なに? もう、胸が痛くなるんだけど、イケメンのそういう顔。


「でも、俺、本当に、君の足を引っ張るから」


「大丈夫。私、めちゃくちゃ足速いから。どんなに足を引っ張られても、平気だよ」


 ルースの目から涙が一滴こぼれた。

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