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俺の彼女が可愛すぎる件

 次の日。

 目を覚まして早々、昨夜のことを思いだし、一人、ニヤニヤとしてしまった。

 だって、フラワとキスしたんだよ。

 フラワとさ。


 あの後、てっきり、興奮で眠れないかと思ったけど、いつの間にか眠っていた。

 たぶん、ニヤニヤしながら寝てたと思う。

 ちょっと、気持ち悪いな、俺。


 やばい、早く、フラワに会いたい。

 起きてるかな。

 とにかく、顔を洗おう。


 弾むように、洗面所に行って、少し念入りに顔を洗う。

 鏡に映った顔を見て、ちょっと不安になる。

 なんか、俺、男らしさが欠けてる気がする。


 女の子って、もっと、こう男らしい顔が好きなんじゃないだろうか。


 木こりのバックスさんみたいな。

 天を突く赤髪。渋い髭。鋭い目。大きな鼻と、頑丈そうな顎。

 バックスさんは、村でモテモテだったんだから。お婆さん達にだけど。


 鏡の前で、バックスさんみたいな男らしい顔を作ったら、全然似合わなかった。


 フラワの部屋をノックする。

 なんか、緊張するな。


 呼びかけると、フラワが先に行ってて、と返事を返した。

 声を聞いただけで、なんか、幸せな気持ちになった。

 早く顔が見たい。


 食堂に行って、コーヒーを注文。


「なんか、いいことあったのかい?」

 なんておかみさんに言われた。


 うわっ、俺、またニヤニヤしてるのかな。

 少し落ち着かないと。


 食堂に置いてある本を読む。

 よくわからないけど、恋愛小説だと思う。

 こういうの、ベラさんが貸してくれたことがある。


 コーヒーを飲んでいたら、フラワが来た。

 挨拶したら、照れ臭そうな顔になった。

 なんだろう、昨夜のことがあったからかな。

 いつもより、もっと可愛いんだけど。

  

 こんな可愛い子と、俺、あんなことを……。

 わっ、思いだしたら、顔が、熱くなった。


「ルース、余裕っぽかったじゃん。なんか手慣れてるって感じ」


 そんなわけ、あるかい。

 ものすごく、緊張したよ。


「嘘だ。初めてじゃないでしょ」


 リアにキスされたことあるし、初めてじゃない、か。

 俺が、初めてじゃないって言ったら、フラワの顔が、怖くなった。

 ギロッと睨んでくる。


 説明した。

 リアは近所に住んでた子だって。

 だけど、フラワの機嫌は全然直らなくて。

 それどころか、どんどん悪くなってる気がする。


 それが、急に、コロッと治った。

 あれ、なんで?


「とにかく、本当にドキドキしたんだよ。でも、フラワだけ覚えてるのズルいなって思って」

 本当に夢中だったからさ。


 フラワが顔を赤くして、うつむいた。

 俺の顔も赤いと思う。


 そこへおかみさんが朝食を運んできた。


「二人とも、いい雰囲気になってるじゃない。二人部屋にした方がいいかしら?」


 いや、二人部屋って。

 だって、そんなことになったら。

 俺、もう……。


「そ、それは、まだ」

「まだ早いです」


 フラワと俺の声が重なった。




◇◇◇

 



 朝食後、昨日の森に行くことにした。

 マザースライムも倒したことだし、ほかの冒険者たちが来る前に、スライムをたくさん狩った方がいいというわけでね。


 森に向かう途中、勇気を出して手をつなごう、と言った。

 ラビットボールを狩った草原で。


 宿を出てから、ずっと、思ってたんだ。

 フラワと、手をつないで歩きたいって。


 俺が言ったら、フラワの手が、すっ、とすごい勢いで伸びてきて、俺の手を取った。

 フラワもずっと手をつなぎたいと思ってたのかな、って、なんだか嬉しかった。

 

 手をつないだら、照れ臭くて、なにを話せばいいのかわからなくなった。

 フラワも同じみたいで、二人して、黙ったまま歩いた。

 だけど、全然、気まずくなくて。

 それどころか、ただただ、幸せな気持ちだった。



 スライムを剥がして、引っ張って、転がす。

 スライムを剥がして、引っ張って、転がす。

 同じ作業を延々とやっていると、どうしても、フラワのことを考えてしまう。

 フラワの手、柔らかくて、すべすべしてたなあ、なんてさ。


 フラワの風になびいたサラサラの黒髪が、頬に触れると、ふわふわっとしてて。石鹸の匂いが鼻をくすぐって。

 ドキドキした。


 俺、フラワと恋人になったんだよな。

 あんな、素敵な子と。

 何度も、何度も、自分の中で確認した。

 そのたびに、顔がニヤけた。


 ふと、気が付くと、地面がスライムで埋まっていた。スライムがそこらかしこに転がっているからなんだけど、その範囲が、広い。

 えっ、見渡す限り、地面が白くなってるんだけど。


 もちろん、フラワの仕業だろう。

 俺が一体転がす間に、何体、転がしてるんだろう。


 呆気に取られてる場合じゃない。

 俺も頑張らないと。フラワにばっかり負担をかけてられない。


 夢中でスライムを狩った。おかげで、レベルアップした。


 よし、確実に強くなってるぞ。

 この調子で、いつかフラワに追いつくんだ。

 追いつくんだ……。

 スライムで埋め尽くされた地面を眺めると、本当に追いつけるのか、不安になった。


 いや、いや。

 俺だって、勇者らしいから。

 レベルアップしていけば、強くなるはずなんだ。たぶん。

 とにかく、今は、自分のできることを精一杯やっていこう。

 フラワの恋人として恥ずかしくないようにさ。



 昼食時。

 フラワが、スライムの死骸をギルドの解体所に渡しに行きたい、と言った。

 フラワが持ってる収納袋じゃあ、入りきらないらしい。


 それはそうだよな。森の中の地面が、白くなってるもんな。

 俺たち、スライムの中に埋まってる感じだもん。いったい、何体の死骸があるんだか。


 俺はこのままスライムを倒し続けて、その間に、フラワが街へ戻ることになった。もともと、俺のレベルアップが目的だからね。

 フラワに手間をかけちゃうけど。

 彼女の手柄を、俺が横取りするのもよくないし。


 フラワが不安そうな顔で、俺を見る。

 うっ、一人にして大丈夫かな、みたいに思われてるっぽい。

 男として、情けないな。


 レベルアップしたし、前に比べてだいぶステータスも上がったから、大丈夫だって言い張った。


「もちろん、無茶なことはしないよ。自分が弱いのはわかってるから。危なかったら逃げるよ」

 ううっ、なんて情けないセリフだ。

 

「本当に、そうしてね。モンスターが来たら逃げるんだよ」

 フラワが、真剣な顔で言った。


 俺の両手を手に取って、「絶対、絶対だよ」って念を押す。

 ちょ、ちょっと、そういうことされると、抱きしめたくなるから。



 フラワは、ものすごい速さで戻ってきた。

 えっ、街まで行ったんでしょ、なんでそんなに速いのって、思った。

 それも、往復するたびに、スピードアップしてるみたいだった。


 地面を埋め尽くしていたスライムの死骸が、あっという間になくなってしまった。


「じゃあ、また狩りに戻るね」

 言って、可愛く手を振って、森の奥へ行ってしまった。


 よし、俺も負けてられないぞ。

 もう一回くらい、レベルアップしよう。


 奮起したおかげか、日が暮れる前にレベルアップした。

 だけど、森からスライムがほとんどいなくなってしまった。

 うん、フラワが狩りすぎたんだね。


「ごめんね、ルース。私、ついついやり過ぎちゃうの。もう、馬鹿馬鹿」

 ポカポカポカと自分の頭を叩くフラワ。

 舌を、べろ~ん、て出して。目はあさっての方向を向いてて。


 笑い過ぎて、死にそうになった。

 フラワは、なんて芸達者なんだ。


 ブレン・ブルーに戻る帰り道。

 また手をつないで歩く。

 風が強くて、フラワが飛んでいってしまいそうな気がして。

 強く、手を握った。


 フラワが、なにか言ったけど、風で声が聞こえなかった。


「さっき、なんて言ったの?」


「大好きって、言ったの」


 なんだよもう、可愛すぎるだろ。

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