2916話 慣れてないから、翻弄されてる。
恐る恐る、ヌイグルミっぽいシャボン玉クラゲさんを指先でツンッと突っついてみたら……短毛の布みたいな、さ。ベルベットというのかな?そんなサラッとモフッとした手触り。柔らかさは……中々質量のあるフカフカの触り心地。綿がパンパンに入ってる感じ。でも……生き物的なフニっとした感じも遠くに感じる。良く分からん。このヌイグルミ……さては色んな人の趣味で成立しているから、このクラゲさん……沢山居るのかな?知らんけど。
少なくとも分かるのは……近くを通りかかった事務部の人が私の近くを通る時に、ジッと……シャボン玉クラゲさんをガン見してくる事がな。皆さん、可愛い物を見つけるの上手すぎだと思うんだよなぁ。もしかして……
ん?そう言えば……私は特に何も感じていないけど、もしかしてこのシャボン玉クラゲさん……神様としての気配が滲んでいるのかな。見た目云々関係なく、不思議な気配がするから気になる……
「あ、気配の管理はウチも手伝っとるから……今は、ちょっと位の高そうな精霊ぐらいに見える様に調整しとるで。このシャボン玉クラゲさんに集まっとる視線……それは単純に、シャボン玉クラゲさんが可愛らしいって判断されとるからやで。」
あ、私の感覚が他の人と比べて致命的に狂ってしまったとかではないんだ。良かったぁ。
まぁ、絶賛羨ましいとか、嫉妬……かな?ちょっと暗めの感情が感じ取れますね。
つまり、良い意味でも悪い意味でも……様々な目線が、私は向けられている。
さっきとんでもねぇ方々の相手をしたから……現状の精神的なダメージが、私の胃までに比べたらま……比較的抑えられていると思う。
「そう言えば……お嬢さん。この子の名前、シャボン玉クラゲさんって呼び名でええんやな?まぁ、本体は兎も角……今この場に居るのは、依代のヌイグルミやもんなぁ。それに……このクラゲさんも、本当のお名前?を教えたら駄目なタイプやからなぁ。風竜さんとかみたいに、人に教えても大丈夫な……人の世に馴染む為のお名前を作ってないから、各々好きに呼んだらええと思うで。クラゲさんもそう言ってるし。知らんけど。」
影の精霊の言葉に、肯定するみたいに縦揺れ?をしていたシャボン玉クラゲさんだったが……最後の言葉の『知らんけど。』って言葉に、『えっ!?』とでも言いたげな……ビクッとして、ヌイグルミの体とは思えないくらい、ぷるるんっと体を捻る感じの横揺れ?をしていた。
その反応後、一秒そこら意識が少し飛んだシャボン玉クラゲさんは……ハッとした様に、ピクッとした後、弁明するみたいにポヨポヨと縦揺れを始めた。
そんで、気が付いたら頭の中に、『ちが、違うんです。影の精霊さんの話……本当ですから。』と。……例のとんでもなく不思議な声が。
「慌てなくても大丈夫ですよ。その反応だけでも、伝わりましたから。」
手足……と言うか、触腕がピョコピョコと動いて……シャボン玉クラゲさんには申し訳ないけど、可愛かったです。
あ、『自分が聞きたい事がちゃんと伝わった。』ってのが嬉しかったのか……シャボン玉クラゲさんがフルフルと震えて、ポワポワとした雰囲気が。
ふふ……その成功体験、とても大切だと思う。言葉が伝わるって、それだけ心が近付けたって事だからさ。
『私』の世界の言葉だけどさ。言語を覚えたかったら、覚えたい言語を使う恋人を作れ……みたいな話があった。この世界、共通言語が浸透してるから……そこまで困ることはないんだけど。
言語に限った話だけじゃなくてさ。『知りたい』『学びたい』……そしてって気持ちは……そして、恋愛をしたいって気持ちは、年歴関係ないからね。
問題は……うん。恋人云々は兎も角としてね。私は本当にその辺無関係だから、うん。
本当に、問題なのがさ。若い頃より、新しく物事を始めるって……かなり腰が重いって言うか、億劫って言うか。若い頃にやるより、ハードルが馬鹿みたいに高くなるんだよなぁ。
物事を覚えるのに割ける時間が取れなくなるから、集中力の持続時間が少なくなるから……色んな言い訳が頭に出てくる。そういう所が、私のダメな所なんだろう。




