2914話 相手が『人間』想定のマナーだから。
お二方が帰った後……とんでもねぇ緊張感がなくなり、力が抜けて……ガクッと膝を付きそうになった。気合いで踏ん張ったけど。
はは……ちょっと手が震えてる。やっぱり神様がお二方揃うと……私一人だけだと難しいみたいだ。……いや、ヴァンさんだけだったとしても……かなり辛いけど。
辛いに辛いか重なったら、とっても辛いに決まってるんだよなぁ。
腹に力を入れ直して、後片付けをしていく。……あ、お二方、お茶もお茶菓子もキレイに食べ終わってる。
いやね?謝罪に来た場合はお茶もお茶請けのお菓子も手を付けない……みたいなビジネスマナーがあるんだけど……如何せん今回は相手が格上過ぎて、この考えには当てはまらないと思うの。
無理でしょ、神様相手に『あ、それビジネスマナー的には……。』とか言うの。寧ろコレは、お供え物とかそう言うのに近いと思うよ。
どの国でも……と言うか、どの世界でも、神様には何かしらお備えるじゃないですか。
そう考えると、人智を超えた存在に、こちらが提供出来るアレやコレやをお供えして……って思考は、誰もが持ってるモノなんだなぁ。
「お、お帰りになった……のね。ごめんなさいね、夜風さん。ギルド長、まだ来てなくてね。私達だけじゃ、どうにもならなくて。」
「いえいえ。前に関わった依頼関係のお話でしたし……まぁ、とっても緊張はしましたが。」
応接室から出てくると、ギルドに来た私に、いの一番にヘルプをしてきた女性が話しかけてきた。まぁ、気にしますよね。分かります。
私が少し笑いながらそう言うと、場の空気がフッと緩む感じがした。……当事者からこういう話をするしないは、結構重要だからなぁ。
少し笑い合ったら、お茶とかの片付けを代わってくれると言われたので……お言葉に甘えた。こう言う時も、ちゃんと頼るとね。更に場の空気が柔らかくなって……スゴい早さで、日常に戻って行くから。
不本意ながら……私、こう言う空気にさせがちなんだよなぁ。だから、出来る時にこう言う小技を挟んでいかないと。逆の立場なら、私もこういう対応してほしいもん。
あ、でも……何て言うのか。他責?と言うのかな。あまりに『相手がこうだったから〜。私は別に〜。』みたいな事を言われると……ちょっとなぁって思う。
仮にそれが本当でも、そこまで聞いてないって言うか。緊張感を緩めようとしたのに、逆に空気が悪くなってしまうからさ……何事も適宜適量だよね。難しいけどさ。
そんな事を考えつつ、私の想像通りにこの話は終わったって空気になったので……せっせといつもの事務仕事を始めた。
多分、どんだけあの会話が続くか分からなかったから、凄くガッツリ時間を取ってもらってるんだけど……想像していたより凄く早く終わったからね。時間が余ったなら、仕事しようねぇ。
ただ……私達に対するお話は早く終わったけど……あの空の方とヴァンさんの『お話』は、まだ続いていたりするのかな。あの空気感だとさ。
「まぁ、空の人はあんまり……滅多に?地上に降りへんからなぁ。その辺の調整は得意じゃないのは仕方ないとは思うんやけどなぁ。風竜さんは人の世に沿ってる感じやし、スパルタさんやからな。」
確かに、ヴァンさんは人の世に馴染んでる感じはしますけど……って、その話し方だと、ヴァンさんと空の方、まさか。
「あ、流石に今は何にもしとらんで。人の生活圏に近いからな。今は、ここら辺をブラブラしてるな。ご飯食べたり、服とかみたり。さっきも言ったけど、空の人はあんまり人の世に降りてこんからな。食べ物とか服とか、ふんわりとしか知らんのよな。」
それもそうか。
ずっと空から見ていて、かつ時間の感覚が……その、大分長めだから。
『なんか、気が付いたら地上ピカピカが増えたね〜?』とか、『なんか……変な鳥みたいなのが飛んでるなぁ。』とか。それも、あんまり気にしてなさそうなんだよなぁ、空の方。興味なさそうっていうか。
そんで、今日人の文化に触れたそしても……そんなに刺さらない気がしてる。
「普通はそんなもんなんやけどな。風竜さんとか、ウチとかみたいな感じが特殊って言うかな。」
……それを言われてしまったら、本当にそうとしか言えません。




