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131話 笑顔なのに、何か怖い。


大変耳が痛くなるお話を聞いて、凄く謝りたい気持ちになっていると…不意に応接室のドアがノックされた。うん、普通にビクッとするよね。気を抜いていたのもあるけど、それ抜きにしても気配とか全く感じなかったし。


目の前の男性をチラリと見てから返事をした。もし暴れだしたら影の精霊の拘束をちょっと強めてもらおう。


「やぁやぁ、夜風さん。お休みだったのにすまないね。」


「あ…いえ。」


応接室に入ってきた男性の姿を見て、反射的に立ち上がる。入ってきたのは、総合部の部長の…やっべ、名前度忘れした。


えっと…そうだ、この方は、私の一応上司である総合部の部長のロアイトさん。ロアイトさんだよ、私。忘れちゃダメでしょ、他の部署のヘルプばかりで忘れがちとは言ってもさ!!


ひぃぃ…嫌にニコニコした顔なのがスゲェ気になる。え、何コレ…嫌な予感しかしない。やらかしちゃった?私、やらかしちゃった!?土壇場で思い出したとは言え、ついさっきまで名前覚えていなかったの、ロアイトさんの気に障った!?


「何で夜風さんが青い顔してるのかな?…まぁ、良いや。影の精霊さんから状況は聞いてるし、ここからは僕が引き継ぐよ。ごめんね、巻き込んでしまって。」


「い、いえいえ。ちょっと誘導された感じは否めませんが…何と言いますか、この方の話が聞けて良かったです。」


ロアイトさんの笑顔に背筋が冷えたけど、これは本心だ。上手く言葉に出来なくて歯痒いけど…少なくともこの人が、私(Bランク)が仕事している姿を見た時に失望しないよう日々精進していこう…そう思えた。…まぁ、こんな奴がBランクにならなくて良かったとも思ったから、私性格良くないんだなとも思った。性格の問題じゃないかもしれないが。


にしても、思った事を口に出しただけだから、発言が随分上からになってしまった。…い、いけない。このままだと、人前で脳内反省会からのネガティブスパイラルに突入してしまう。折角自分の中でちょっと前向きな気持ちに落とし込んだと言うのに!!落とし込んだとか思ってる時点でアウトっぽいけどこの際気にしない!!


「はっ、流石優秀なギルド職員さん。発言が上から優等生ですねぇ?」


「言葉足らずですみません…でも、これは私の本心です。貴方の言葉を胸に刻みながら、今後も精進していきます。」


誠意が伝わるように、出来るだけ真っ直ぐ男性の目を見ながら言葉を発して、そして丁寧にお辞儀をする。いや、だって自分でもないわ〜って感じだったし…そりゃ言いたくもなるよね、上から優等生って。はぁ、私っていつもそうだよなぁ。あ〜…過去のアレコレ思い出してしんどくなってきた。


「夜風さん、夜風さん。さっきも言ったけど、ここは僕が引き継いだんだから、夜風さんはもう帰って大丈夫だよ。」


「あっ…すみません。では、失礼します。」


結局ネガティブスパイラルに陥った自分に苦い気持ちになりながら、私は応接室から出た。


部屋を出る直前に見えた男性の顔がバツが悪そうな感じに見えたので、そこまで悪い人でもなかったのかな…と思った。とは言え、今までが今までだけに何とも言えないんだけど。


考えた所でどうしようもない事を考えてしまったので、頭を軽く振って思考を落ち着かせ、一つ大きな溜め息を吐いて切り替えた。


「あの男性、大丈夫ですかね…。」


軽く会釈をしてからギルドを後にして、何の気なしにデパートに入り、ブラブラと歩く。…特にやる事はないから、一時的に考える事を止めた話題が頭に浮かんでくる。


何か気になるんだよね、あのタイミングで登場したロアイトさんと言い、あの時のロアイトさんの笑顔と言い…嫌な予感がするんだよね。


「大丈夫やろ。少なくとも命は保証されとるで。」


…下手に突っつくと危険な話題って言うのは、私でも分かる。




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