109話 反応を見て面白がるなバカ。
過去に相手した白くなった影の精霊は…まるで赤子の様な無垢さで普段の影の精霊と言う何とも扱いに困ると、色々あり過ぎて若干朧気になっている記憶がフラッシュバックしたので、私はすかさず黒い(ノーマル)影の精霊に白くなった影の精霊をぶん投げて、そこから白くなった影の精霊が黒い(ノーマル)影の精霊になるまでスルーする事にした。
…ええ、足元で「なぁ、なぁ、苛めてくれへんの?なぁ〜。」と詰め寄る漂白影の精霊なんて私は知らん。聞いた事ないってくらい純粋な声出すなバカヤロウ。
「で、アルベロ先生。この事の発端は何だったですか?」
必死に漂白影の精霊の存在を忘れようと、一応気になっていた事をアルベロ先生に聞く。何がどうなって、こんなゾンビやら骸骨やらが出てくるとんでもない展開に…。
「あ〜…あ〜…うん。」
「オイコラ、誤魔化すんじゃありません。」
アルベロ先生が目線をそらして体感で三秒くらい考えた後、面倒くさくなったのか会話を無理矢理止めようとしたので、すかさず食い下がる。あらましだけでも聞かないとこっちは気が済まないんだ!!話してもらうぞチクショウ。
「面倒くせぇし。」
「アルベロ先生しか詳しく分からないんですから。」
「あ〜…はぁ。」
「溜め息で誤魔化されません。…それとも、そんなに言いにくい状態だったんですか?」
いつものアルベロ先生なら、何の気なしに簡単なあらましぐらいなら教えてくれるけど…ここまで言いにくくしているとなると、一応これでも場の空気を読んでくれるアルベロ先生が言わないとなると、よっぽどヤバかったんだろう。それこそ、女子供が何かこうエグい事になっていた…とか。
「夜風って、良くそこまで頭回るよな。」
「回らない時はとことん回らないですし、的はずれする事の方が多いですよ。」
これは…遠回しの肯定って事なんだろうか?
「まぁまぁ、お嬢さん。どちらにしろ後でギルドに報告書上げるんやから、それを確認したらええんやないかな。」
「…それもそうか。」
と言うか、報告書で思い出した。私も一応報告書を書かないといけないんだった。…うはぁ、面倒くさい。
「はっ!!こ、コトハ…もしかしなくても、僕もその報告書を書かないといけない感じだったりするのかなっ!?」
「へ?……ああ、多分書かないといけないと思います。」
ルナさんと私でパーティー登録していて、そのパーティーの代表を私としていたらまた変わっただろうけど、生憎私とルナさんはパーティー登録していない。…つか、思えばルナさんと久しぶりに一緒に戦ったな。
「ま、マジかぁ…僕にだって期限が迫ったレポートとか色々あるんだけど。」
「レポートの類いを書くの、ルナさん苦手ですもんね。」
ルナさんが書く報告書って、言い回しがちょっと拙かったり表現の誤用があったりするけど、それでも結構正確に書いてあるんだよねぇ。尻叩かないと提出ギリギリに出すけど。
「ゆ、由榎ちゃんのスパルタレポート指導はもう嫌だぁぁっ。」
頭の中で報告書のアウトラインを考えていたら、ルナさんが酷く怯えた声でそう言った。…相変わらずなんだなぁ、その辺は。
「そう言えば、アルベロ先生っていつ報告書を提出してるんですか?やっぱり影の精霊ですか?」
「動くの面倒だからな。」
…影の精霊のヤツ、ギルド運営に食い込んで来てるな。何か恐ろしいんだけど。
「なぁなぁ、お嬢さん。もう少し強くウチを苛めてぇな。なぁなぁ。」
私の足元から、本当嫌になる程ピュアな影の精霊の声が聞こえてきて…反射的にピキッと固まってしまった。
「おい、ノーマル影の精霊。何でコイツまだ白いままなんだ。」
「え〜、やかて、面白いやろ?」
そう言ってニヤニヤ笑うノーマル影の精霊を掴み、漂白影の精霊に思いっきり押し付けた。




