108話 白くなっては困るモノ。
暫くしていなかった命懸けの戦闘を繰り返して何分…何十分経ったかした頃、まぁ流石にその辺りの時間になると応援の冒険者や騎士団の方も出てきて、一回の戦闘の負担は軽くなっていた。
「お〜、お疲れ。」
「アルベロ先生…ふんっ!!…今更出てきたって事は、何か終わらせてきたんですよね?」
鎌のブレードを収納していつもの棒に戻していた私は、力任せに骸骨の骨を叩き割りながら、暢気に現れたアルベロ先生に声を掛けた。
「何かっつーか…まぁ、終わらせたな。あ、今出た奴らで最後だから頑張れな〜。…はぁ、面倒だった。」
「コレで最後…って、今までで一番ゾンビやら骸骨やらが来てるんですがそれは。」
アルベロ先生の言葉で改めて広く戦場を見渡せば…明らかに今集まっている冒険者や騎士団の人数の十倍は居そうなアンデット連合軍が攻めてきていた。うわ、何か馬とか犬とか…色々見える。
「頑張れ頑張れ。お前らなら出来るって。」
「また適当な事をっ!!対処しきれなくなったらアルベロ先生のせいですからね!?」
取って付けた様な声援に噛み付きつつ、私は冷や汗を隠せないでいた。
アルベロ先生の予想は外れた事はないけど…だからと言って、その言葉を鵜呑みに出来る程私は強くない。だから、アルベロ先生に責任転嫁する事でどうにかパニックにならない様にするしかない。嫌な性格してるよ、ホント。
「別に、お前一人寄り掛かってきた所でどうでも良いぞ?」
「私が嫌なんです。…と言うか、アルベロ先生。良い加減そこに居るの邪魔なんですけど。」
アルベロ先生が現れた所にもアンデット連合軍は進行してきて、私達は必死に戦っていると言うのに…アルベロ先生は剣士骸骨に切られてもアンデットの犬にガブガブされても、ずっと(・・・)変わらず(・・・・)そこに居る。
怪我をする以前に、髪や衣服の乱れも、汚れも…まるでアルベロ先生だけ違う次元に居るか、時間が止まってしまったんじゃないかと思う程、アルベロ先生は変わらない。…まぁ、思いっきりアクビをしているから、単に今移動するのが面倒なだけだろうけど。
「…分かってはいましたが、Sランク冒険者は伊達ではないですね。」
剣士骸骨の攻撃は、アルベロ先生に剣が触れた瞬間に剣どころか腕もろとも砕けて、ゾンビ犬は噛み付いた瞬間に歯が砕けて、血塗れの歯茎でアルベロ先生を最早アムアムしてる状態。アレは…もしかしたら剣士骸骨と同じで、歯以外にも顎の骨に支障を来したのかもしれない。
「だって、動くの面倒くさいし。」
「でも、そこに居ますよね?そこに…そこに居るなら…せめて動けぇっ!!」
改めてアルベロのバケモノっぷりを実感しつつ、それでも口から出た私の心の底からの叫びは、アルベロ先生に聞かれる事なく周囲に虚しく響いた。…あ、アルベロ先生にうっかりタメ口を使ってしまった。
アルベロ先生にタメ口で怒鳴ってからアンデット連合軍を倒しきったのは、そこから体感で五十分くらい経ったら後だった。…この後から残骸――もう既に骸の存在に『残骸』とは何とも皮肉――の片付けとか、戦闘のせいでメチャクチャになった所の整備と、やる事は山積みである。
ルナさんは、今は道とかの整備の方に回って忙しそうにしている。…私は今は休憩中。流石に少し休みたい。
「浄化と言えば…今思えばあのアンデット達、私が魔法で一斉浄化すれば良かったんじゃないですか?」
ふと思った事を言うと、影の精霊が如何にも小馬鹿にした顔をした。…腹立たしいな、この顔。普通に殴りたくなった。まだ耐えれるから耐えるけど。
「一回程度ならそれでも良かったが、流石に何回もお前の浄化魔法使われると、最悪この辺が下手な聖域より聖域になるぞ。」
いつの間にか隣に居たアルベロ先生のその言葉に反論できなくて、グッと言葉に詰まった。
そんな事してしまったら、現状一番の黒歴史になってしまっただろう。…や、やらなくて良かった。
「まぁ、お嬢さん。あの石はこのウチ風呂敷に包んどるから。ささっと浄化してな。」
どう見ても、双葉状のアホ毛が出来た影の精霊の頭部にしか見えないのだが…双葉状のアホ毛の真ん中に見える少し空いた隙間に指を突っ込んで、出力は影の精霊に任せて浄化魔法を使った。……んっ?何か影の精霊が…白くなってきた?




