106話 回収早すぎやしないか?
確かに、私は体を動かしたいと思った。カルマートさんに遊ばれたフラストレーションを発散したくて、短時間で終わりそうな良い感じの依頼がないかなぁ…と、依頼書が張り出されている掲示板を見て、それでも良いのがなくて、そのまま家に帰った。
夜中、とんでもなく嫌な予感がして跳ね起きた。家の中からではなく、どこか遠くの方から…禍々しさすら感じる程、嫌な予感を感じた。
「お〜!!お嬢さんも敏感になってきたなぁ。まぁ、お嬢さんは色々な所が敏感になっとるもんなぁ。」
影の精霊のセクハラをスルーしつつ、私は事態を冷静に把握するべく深呼吸をした。
「…影の精霊、今何がどうなっているんですか?」
「そやな…分かりやすく言えば、今学園がちょっとピンチやな。先生さんが凄く面倒くさそうやで〜。」
影の精霊の発言が終わる前に、私はスマホをむんずと掴んで外に出ていた。
それは、鈍く輝く月を背に現れた。
あるモノはボロ布を身に纏った骸骨、あるモノは体の一部が抉れて白骨化していて、あるモノは体の一部が欠損していて、あるモノは体の一部があり得ない捻れ方をしていた。
全てに共通しているのは、現れたモノ全てが生命としての『命』と言うモノを失っているのにも関わらず、生命ではない『命』を宿されている事だ。
「この世の終わりみたいな画ですね。」
「ここが墓場だったら、説得力が凄い事になりそうだね。」
慌てて外に出た時、ルナさんもまた同じタイミングで外に出ていて…私の直感がこの人は使えると判断したので、ルナさんの腕を掴んで、転移魔法で学園へ飛んだのだ。
と言うか、私は恐怖とかで精神がやられる事がないのは分かるけど…ルナさん、普通に平気そうでビックリだよ。アホ毛凄く通常運転。
「何がどうしてこんな事になったのか、考えるのは後にして…これは、どうすれば良いんでしょう?」
「まさかのノープランだった。コトハにしたら珍しいよね、ノープラン。」
割りと私はノープランなんだけど…そこは言わなくても良いかな。多分追々バレると思うし。
「お〜、お前ら来たのか。」
「あっ、アルベロ先生だ〜!!お仕事?」
目の前の骸骨やらゾンビやらに気をとられていたら、横からいつもの雰囲気のアルベロ先生が現れた。…何だろう。ここまでいつも通りだと、この人も何だか怪しく見えてくるな。いやまぁ、いつも通りじゃないアルベロ先生だと、それはそれで怪しいんだけど。
「仕事しようと思ったが、お前らが来たから帰るわ。」
「私のせいなんですか?私のせいなんですか!?」
帰るんじゃないよこんな地獄絵図の状態でさ!!ああ、この人はアルベロ先生ですよ!!アルベロ先生以外居ないわこんな人!!
「大丈夫、大丈夫。コイツら普通に物理効くから。じゃ、頑張れ〜。」
「本当に帰るんじゃないよバカァァッ!!」
「コトハコトハ、何かこう…剣を持った骸骨さんがこっちに来てるよ!!」
ルナさんにそう言われて、アルベロ先生から視線を外したタイミングと骸骨が私に向かって剣を下ろすタイミングは一緒だった。
「んぎっ!?」
ギリギリで振り下ろされた剣を躱し…そのタイミングで私の中で何かがキレた。
骸骨が振り上げようとした剣を足で踏みつけて、それを足場に飛び上がり、思いっきり骸骨の頭を蹴り飛ばした。
頭を蹴り飛ばした時、骸骨の頭が砕け散る感触がしたんだけど…わ、私そんなに蹴る力強かったんだろうか。む、無意識に身体強化使ったとかそんなんだよね?ねっ!?
「わ〜、コトハ容赦ないね。」
「す、少しカチンッとしてしまいまして…アレ?」
砕いてしまった頭蓋骨の中に、何か良く分からないけど…取り敢えず良くないモノってのは分かる、親指の爪サイズの暗色の石が貼り付いている骨を見付けた。
「あ、お嬢さんお嬢さん。その石は後でまとめて浄化した方がええで。ウチ、集めておくからなっ。」
そう言って、影の精霊はその石を抱えてどこかに行ったのだけど……やるしかないのか、私。




