105話 これもチキンレースの一種?
白雪さんにテシテシされながらも、柚季さんは私達が帰るまで頻りに私にお礼を言って、カルマートさんは「ねぇ、始。僕にもお礼を言うべきだと思うな。ねぇ始。」と、こちらも柚季さんをテシテシしていた。…何だろう、凄く和む。
そんな昨日の事を思い出しながら、私はせっせと事務作業をしている。
潜入とかはもうない…と思いたいけど、暫くはナヴェーさんやミストラルさんのフォローが直ぐに出来る位置に居ないといけないので、事務部のお仕事を手伝っている。
「夜風さん、最近はずっと武闘部の方のフォローがメインだったから、寂しかったんだよね〜。」
「コスモクロアさん…。」
私が事務部の研修をしていた時にお世話になた先輩の言葉に、思わず苦笑いをしてしまった。
私一人の事務作業のスピードは、一般の人とそう変わらない…と、思う。比べた事がないと言うか、いつも目の前の作業にいっぱいいっぱいになるから、分からないって言うのが正しいか。
それに比べて、戦闘等体を動かす作業は、それなりに有能だと自負している。今まで部活や依頼や影の精霊とかで鍛えたスキルを使えば、どんな酷い内容でも…まぁ、何回か心が折れかけたりしたけど…まぁ、どうにか生き残ってこれた。
「そりゃ、夜風さんがBランクの冒険者だからってのは分かってるけど…。」
「6:4…いや、7:3ぐらいかな。そのくらいの割合で、戦闘職の方が人材として使えますからね、私…仕方ないと思います。」
事務部ではパッとしない新人だけど、武闘部ではそれなりに重宝されていたもんなぁ…今でもそんな感じだけどさ。
「夜風さん…自分の扱い、それで良いの?」
コスモクロアさんに呆れられながらそう言われて、私は笑って誤魔化しながら、受け付けの交代に向かった。
「そう言えばさぁ、コトハ。今ね、ナヴェーさんと何か凄いオーラを持った男子が学校に通ってるんだよ!!」
「ご存じですよ〜。」
私が受け付けに入って少しして、何やらハイテンション気味なルナさんが来た。
混んでなかったのもあり、普通に話し出したのだが…思い当たる節がない訳ではないけど、それとは別の事でルナさんのテンションが高い場合もあるし…取り敢えず、話を聞いたら、案の定で少しホッとした。いや、知らない話題だったら変に緊張してしまうから。
ほら、学校が変わるとネタが分からず話題に付いていけなくてお互い気まずい空気になるアレが起きる可能性がない訳ではないじゃないですか。
「あ〜、やっぱりギルドに話通してたかぁ。もしかして、コトハが担当だったりするのかな?ナヴェーさんとも顔見知りだし、ギルドのランクから見てもギリギリ問題ないし。」
…これって、もしかしてルナさん、私が学園に居た事に気付いてるのか?いやでも、アホ毛は荒ぶってないし……どこまで出来るか分からないけど、一応探り入れてみるか。
「いくら顔見知りでも、私ならベテランさんに担当してほしいですねぇ。何だかんだ言って、私はまだまだ新人ですから信用も実績も心許ないですし。」
「そうかな?受け付けのお姉さん達や武闘部のオッチャンの話だと、コトハは真面目に仕事してくれるし、多少抱え込みやすいけど気遣いの出来る良い娘だって言ってたよ。」
ルナさんの交遊関係どうなってるんだ…コミュニケーション能力高過ぎ。最早特殊能力じゃないか。何、ルナさんにはコミュニケーション能力を上昇させる先天性加護でも持っているの!?
と言うツッコミは、唇をキュッと結ぶ事で抑えた。…ふっ、ルナさんのコミュ力の高さには毎回新鮮に驚かされてしまうな。
「それでは、そのお言葉に見合える仕事をしますか。ほら、ルナさん。そろそろ私、仕事をしなくてはいけないので。」
「そっか…じゃあ、今から何か仕事見繕ってくる!!」
そう言うと、ルナさんは依頼書が張り出されている掲示板に走っていった。…ううん、もう少し探りを入れれば良かったかも。




