104話 想像するしかない感動。
白雪さんに言われたのもあり、リビングのソファーでキツネの姿で丸くなっていた。…抱き上げたら、白雪さんとは違う、触り慣れた柔らかい中に張りのあるモフモフに、顔が緩んだ。
人の家でここまで寛げるなんて、この子は大物になるかもしれない。単に、小春には私達人間の社会のしがらみが関係ないと感じているだけかもしれないけど。
「む、きゅう?……琴姉?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
抱き上げた時の衝撃で、スヤスヤと寝ていた小春が、ピョコンと耳を動かして、重たそうに目蓋を持ち上げた。出来るだけソッと持ち上げたつもりだったんだけど…起きる時は起きてしまうのは分かるけど…寝惚け小春は、とても可愛いけど。
「ん〜ん…へへっ、琴姉に抱っこされるの、好き〜。」
「そっか。」
小春がにへらっと笑いながらそんな事をいうので、もう少し理性が働くのが遅かったら小春が苦しく感じるくらい抱き締めてしまったかもしれない。…まぁ小春は精霊だから、苦しく感じるのは呼吸ではなく魔力の供給過多のせいだろうが。
普通は精霊の契約を維持する魔力をどうやって少なく抑えるかとか…少ない魔力でどうやりくりするか、そう言う所を必死になって考えると言うのに、私が不用意に小春とスキンシップを図れば図る程、小春の存在が危なくなるって言う…。
「そして、そうならない為にウチが増えていくわけやね、分かります。」
背後から影の精霊の声が聞こえて、私は一時的にスンッと表情をなくした。当たり前ながら、振り返らないと背後に影の精霊の顔は見えないのだが…振り返らなくても影の精霊が腹立つ顔をしているのが分かったので、振り返らずにエントランスに戻った。
「すみません、お待たせしました。」
「眠っている娘を連れてくるんだ、仕方ないよ。寧ろ早かったくらいだ。」
カルマートさんと社交辞令のやり取りをした後、私は柚季さんの方を向く。…緊張からだと分かっているけど、目が合った瞬間にビクッと怯えられると苦い気持ちになってしまう。
「ほ、本当に触って良いんですか?」
「検証の意味合いもありますから…あ、くれぐれも優しく、ですよ?」
イマイチ状況が読み込めていない小春が、トキョンとした顔でキョロキョロしている。…そこで私も柚季さんも気付いた。
先程まで柚季さんが近付いてきただけで体をジタバタさせていた小春だったが、今は状況を把握する為にキョロキョロしているだけで、凄く落ち着いている。
「ふふ。まぁ自信はあったけれど、これで僕の研究は正しかったと証明された訳だね。」
ドヤッと胸を張るカルマートさんを軽く流して、柚季さんは意を決した様に、ゆっくり小春に手を伸ばした。
そこで小春が先程の記憶を思い出したみたいで、ビクッと体を強張らせたのだが…暫く考えて、先程まで感じていた嫌な感じがしない事に、頭上に疑問符を飛ばしだした。あ〜、あるある。思っていた衝撃が来なかった時、そんな感じになるよね。
「……ふあっ!?わ、わぁ…と、とても…柔らかい、です。」
「きゅ、きゅい?……嫌な感じ、しないの。……きゅっ!?な、泣いてるの?」
小春の言葉に、私とカルマートさんはバッと柚季さんの顔を見たら、柚季さんは凄いスピードで顔を逸らした。
「始ぇ〜…ふふ、良かったねぇ?泣いちゃうくらい、嬉しかったのかなぁ?」
「そ、そりゃ…嬉しいですよ。今まで散々避けられていたんですから。…ありがとうございます、主。夜風さん。」
手の甲で涙を拭ってから、柚季さんはお礼を言いつつ照れ笑いを浮かべた。
「お兄さん、撫で撫で上手〜。」
「へへ、ありがとう。…アイテッ!?」
柚季さんが小春にあまりにデレデレしているのが気に食わなかったのか、白雪さんが柚季さんに体当たりをしていた。…嫉妬かな?




