表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/103

89話 聞いてほしい

神様サバイバル14日目

診療所をあとにし、三人は静かな山道を歩いていた。

誰も、すぐには口を開かなかった。


風が木々を揺らし、葉の擦れる音だけが耳に届く。

やがて、不知火がゆっくり口を開いた。


「……医楽。」


医楽は歩いたまま振り向く。


「前に言ってくれたよな。」


「話せば、少しは楽になるって。」


医楽は小さく笑う。


「あぁ。」


「なにかあったら聞くとも言った。」


「もちろんじゃ。」


「わしも、お前さん達に話を聞いてもらって、少しだけ心が軽くなった。」


「一人で抱え込むより、ずっとな。」


廃人も静かに頷く。


「……うん。」


「話した方がいいと思う。」


短い言葉だった。

だが、その一言には重みがあった。


不知火は空を見上げる。

雲一つない青空。

しばらく黙ったあと、小さく呟いた。


「……今夜。」


「みんなに話したい。」


その横顔には、どこか覚悟のようなものが浮かんでいた。



夕方。


古民家へ戻ると、香ばしい匂いが家中に広がっていた。


「おかえりー!」


楓が笑顔で手を振る。


「今日は豪華よ!」


盗丸が得意げに胸を張る。


「へへっ。」


「また松茸見つけてきた。」


「今回は前よりデカいぞ。」


夢見は目を輝かせる。


「すごいですぅ!」


「松茸ご飯ですかねぇ〜!」


「焼いても美味しいよねぇ〜!」


医楽は苦笑する。


「また山へ入ったんか。」


盗丸は肩をすくめた。


「元気ないジジイ見てられなくてな。」


「ちょっと探してきた。」


楓も笑う。


「医楽には元気でいてもらわないと困るし。」


医楽は照れ臭そうに鼻をかいた。


「まったく……。」


「年寄りを甘やかしおって。」


それぞれが個人モニターから食材を取り出す。

野菜。

米。

水。


財産が平等になった世界だからこそ、誰も遠慮なく食卓へ並べられる。


焼き網の上では松茸が音を立て始めた。

じゅう、と脂が弾ける。

部屋いっぱいに秋の香りが広がる。


「うわぁ〜。」


夢見は思わず頬を緩めた。


「いい匂いですぅ。」


「幸せぇ〜。」


みんなで食卓を囲む。

笑い声が少しずつ戻る。

医楽も、昼間より顔色が良かった。


それを見た楓は嬉しそうに笑う。


「やっぱり医楽は元気じゃないとね。」


医楽も笑い返した。


「そう言ってもらえるうちは、まだ働けそうじゃ。」


その光景を。

廃人だけは静かに見ていた。

視線の先には、不知火。


笑っている。

だが。

どこか無理をしている笑顔だった。



食事を終え、華と母親は先に部屋へ戻る。

静かな夜。

囲炉裏の火だけが小さく揺れている。


誰からともなくお茶を飲み、ゆったりとした時間が流れた。

その沈黙を破ったのは、不知火だった。


「みんな。」


全員が顔を上げる。


「これから、どうする?」


楓が首を傾げる。


「どうするって?」


「なにが?」


不知火は静かに続けた。


「神様サバイバルが終わったあと。」


「なにをしたい。」


「どうなりたい。」


「そういう話だ。」


楓は少し考えてから笑った。


「私は決まってる。」


「神様サバイバルをクリアする。」


「それだけ。」


「生きて帰る。」


「それが今の夢。」


夢見も頷く。


「私もですぅ。」


「夜ちゃんを生き返らせたい。」


「だから絶対にクリアします。」


その瞳に迷いはなかった。


医楽も穏やかに笑う。


「わしも同じじゃ。」


「取り戻したいものがある。」


廃人は頭の後ろで手を組んだ。


「ゲームなんだからさ。」


「クリアしないと。」


「そのためにはレベリングかな。」


「まずは強くならないと。」


的場は豪快に笑う。


「ん?」


「俺ぁまだまだ悪いやつぶっ飛ばしてぇな!」


「神愛教も倒して。」


「全部片付けてから考える!」


盗丸は静かに立ち上がる。


「おれは……。」


「一旦抜ける。」


みんなが振り向く。


「探したい人がいる。」


楓は驚く。


「え?」


「なんでよ。」


「一緒に探せばいいじゃない!」


夢見も寂しそうに俯く。


「寂しいですぅ……。」


盗丸は少し笑った。


「ありがとな。」


「でも。」


「これは俺が自分で探さなきゃ意味がねぇ。」


ピエロは紙へ文字を書く。


【花火、作ろうかな】


その文字を見た楓の表情が一気に明るくなる。


「え!」


「いいじゃん!」


夢見も手を叩いた。


「花火見たいですぅ!」


「夏祭りみたいですねぇ〜!」


さっきまで重かった空気が、少しだけ和らぐ。

笑い声が広がる。


その輪を見つめながら。

不知火は静かに息を吸った。


(みんな……。)


(未来を見てる。)


(俺だけが。)


(過去に縛られている。)


拳を強く握る。

もう。

嘘はつけない。

ついてはいけない。


不知火はゆっくり顔を上げた。


「……おれは。」


笑い声が止まる。

全員の視線が集まった。


「話さなきゃいけないことがある。」


囲炉裏の火が、小さく揺れる。


「今まで。」


「だれにも話せなかった。」


誰も口を挟まない。

静寂だけが流れる。

不知火はゆっくりと目を閉じた。


そして。

覚悟を決めたように口を開く。


「……おれは。」


「自分の生徒を殺した。」

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

10日目 “ アルコール”

11日目 “ 血の繋がり”

12日目 “ 疲れ”

13日目 “ 財産”

14日目 “ 嘘”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ