80話 天罰
神様サバイバル13日目
【人類残り38%】
屋上。
轟音が響き渡る。
「神は絶対〜!!」
白装束の男が、笑顔のまま空から落ちてくる。
ドォンッ!!
地面へ叩き付けられた衝撃で、血飛沫が舞った。
肉と骨が四方八方へ飛び散る。
「なっ……!」
不知火は反射的に飛び退く。
しかし、終わらない。
「神は絶対!!」
「ばんざぁぁぁい!!」
二人目。
三人目。
四人目。
次々と人間が空から降ってくる。
避ける。
避けた先へ、また一人。
さらに避ける。
そこへまた一人。
「くっ……!」
逃げ場がない。
警官達も必死に走る。
「散れ!!」
「屋上から降りろ!!」
叫び声など意味を成さなかった。
ドゴォォン!!
一人の警官へ白装束が直撃する。
骨が砕ける音。
肉が潰れる音。
絶叫する暇すらない。
「ぎゃああああ!!」
次の瞬間には肉塊だった。
さらに。
ドォン!!
ドォン!!
ドォン!!
白装束達は笑っていた。
死ぬことなど最初から決まっているように。
いや、
死ねることを誇るように。
ほんの数十秒。
それだけだった。
屋上は、
血の海になっていた。
肉片。
砕けた骨。
赤黒い血液。
鼻を突く鉄の臭い。
胃がひっくり返る。
「うっ……」
不知火はその場へ膝をつく。
「げほっ……!」
込み上げる吐き気に耐えきれず、その場で嘔吐した。
胃液しか出ない。
それでも止まらない。
震える瞳で辺りを見回す。
立っているのは。
自分だけだった。
「そんな……」
掠れた声が漏れる。
「こんな、自爆覚悟で……。」
言葉にならない。
今までどんな敵とも戦ってきた。
だが。
こんな敵は知らない。
死ぬために笑って飛び降りる人間など。
見たことがなかった。
警察署正面入口。
一人の女性がゆっくり歩いてくる。
真っ白な装束。
穏やかな笑顔。
まるで散歩でもしているかのようだった。
入口を守る的場が軽く手を上げる。
「おーい。」
「君、誰?」
「神愛教の人?」
「悪いけどさ、今ここ立ち入り禁止なんだよ。」
女性は何も答えない。
ゆっくり顔を上げる。
笑っている。
その笑顔に。
生気はなかった。
カチリ。
金属が擦れる音。
「……?」
女性の右手。
握られていたのは。
安全ピンを抜かれた手榴弾だった。
的場の表情が一変する。
「離れろぉぉぉーーーッ!!」
轟音。
爆炎。
入口が吹き飛ぶ。
爆風が警官達を飲み込む。
五人。
一瞬だった。
身体が裂け。
壁へ叩き付けられる。
即死。
的場も爆風に巻き込まれる。
痛みはない。
だが身体が悲鳴を上げているのは分かった。
『正義』
防衛キーワード。
能力“ 不屈”
3分間物理ダメージは無効化する。
その能力だけが。
的場の命を繋いだ。
「がっ……!」
入口から大きく吹き飛ばされる。
壁へ激突する。
肺の空気が全て吐き出された。
その隙だった。
「神は絶対!!」
「裁きを!!」
白装束の集団が一斉になだれ込む。
「来たか!」
建物内。
盗丸が叫ぶ。
信者達が入口へ踏み込んだ瞬間。
足元が滑る。
「うおっ!?」
大量の油。
次々と転倒していく信者達。
その上から。
巨大な網。
「今だ!!」
風俗嬢達が一斉に引っ張る。
数十人の信者がまとめて拘束された。
盗丸はポケットから一本のマッチを取り出す。
火を擦る。
シュッ。
小さな炎が揺れる。
「一歩でも動いてみろ。」
「まとめて焼き殺すぞ。」
普通なら。
恐怖する。
命乞いをする。
だが誰一人。
暴れない。
逃げない。
代わりに。
信者達は笑顔で身体を横たえ始めた。
一人。
また一人。
自分の身体で油まみれの床を埋め尽くしていく。
「神に背く者へ裁きを。」
「厳正なる裁きを。」
「神に栄光を。」
「……。」
盗丸は思わず後ずさる。
「なんだよ。」
「こいつら……。」
気味が悪い。
今にも焼き殺される状況だ。
なのに。
誰一人。
死を恐れていなかった。
カツ。
カツ。
カツ。
革靴の音。
拘束された信者達の上を。
一人の男がゆっくり歩いてくる。
高級な白いスーツ。
整えられた髪。
穏やかな笑み。
信者達が歓喜する。
「総帥!!」
「呪崎様!!」
「裁きを!!」
「神敵に裁きを!!」
男は油を見下ろした。
「ふむ。」
「油ですか。」
小さく笑う。
「焼けば。」
「信仰心まで燃えるとでも?」
盗丸は目を細めた。
(あいつか。)
(親玉。)
警官達が一斉に拳銃を向ける。
「止まれ!」
「それ以上近付くな!」
呪崎はゆっくり立ち止まった。
「ほう私に銃を向けますか。」
「なるほど。」
警官が怒鳴る。
「黙れ!」
「両手を上げろ!」
「降伏しろ!」
呪崎は微笑んだまま首を傾げた。
「では、一つだけ質問しても?」
誰も答えない。
静寂。
その中で、
呪崎は穏やかに口を開いた。
「神は信じますか?」
「は?」
一人の警官が鼻で笑う。
「知るかよ。」
「あんなもん神じゃねぇ。」
「悪魔だ。」
周囲も口々に罵声を浴びせる。
「ふざけたゲーム始めやがって!」
「神なんか信じるか!」
「地獄へ落ちろ!」
盗丸は何も言わず。
ただ呪崎を見ていた。
呪崎は小さく目を閉じる。
「そうですか。」
ゆっくり目を開く。
そして。
微笑んだ。
「では。」
「自害しなさい。」
パンッ。
乾いた銃声。
「……え?」
盗丸の目の前で、
さっきまで怒鳴っていた警官が、
自ら拳銃をこめかみへ当て。
引き金を引いた。
血が飛び散る。
さらに。
「あ……。」
風俗嬢の一人が、
胸元からカミソリを取り出す。
迷いなく、
自分の喉を切り裂いた。
別の風俗嬢は、
自らの爪で喉を掻き毟る。
悲鳴。
血。
倒れる身体。
「は……?」
盗丸は言葉を失った。
信者達は歓喜する。
「さすが呪崎様!!」
「神の御力!!」
「神は絶対!!」
「神は絶対!!」
呪崎は静かに笑った。
「これは、天罰です。」
その笑みだけが。
誰よりも恐ろしかった
・不知火焔魂レベル120
・水無月楓魂レベル15
・音棘廃人魂レベル0
・的場射檻魂レベル30
・医楽世捨魂レベル20
・盗丸頼斗魂レベル20
・日枝三郎魂レベル30
・夢見羽衣魂レベル50
・黒闇破滅魂レベル100
・花魁夜魂レベル80
・金剛堕落魂レベル?
・天涯帝魂レベル?
・呪崎黄泉魂レベル?




