78話 お疲れ様笑
神様サバイバル13日目
【人類残り38%】
時計の針が午前0時を指す。
世界中の人々が空を見上げた。
『やぁ、神だよ』
『神様サバイバル13日目』
『始めようか』
神はいつものように笑っていた。
『ねぇ、人間ってさ』
『“親ガチャ”って言葉、流行ってるよね』
『親のお金、親の地位』
『生まれた瞬間に人生が決まる』
『自分じゃどうにもならない』
『つまらないよね』
世界中が静まり返る。
『それに今もそう』
『食料を山ほど持ってる人、飲み水を独占してる人』
『物資を抱え込んでる人』
『一方で、何も持たずに飢えて死んでいく人』
『もう勝負ついちゃってるじゃん』
『そんなゲーム、見てても面白くない』
神は少し肩をすくめた。
『もっと足掻いてよ』
『もっと工夫してよ』
『もっと自分の力で掴み取ってよ』
『自分の人生だろ?』
少しだけ間を置く。
『だから、一回リセットします』
世界中の人々が息を呑む。
『今日消えるのは──』
『“ 財産”』
一瞬。
世界から音が消えた。
『安心して無くすわけじゃないよ』
『世界中の現金、食料、飲み水、日用品』
『一度全部回収しました』
『そして、生き残った人類全員へ平等に分配します』
『個人モニターに”指定ポケット”を追加したから確認してね』
『自分に割り当てられた財産は、そこから自由に出し入れできるよ』
『もちろん“肉”はもう消えてるから入ってないけどね』
神は悪戯っぽく笑う。
『あ、そうそう』
『今まで食料や水を独占してた人』
『独占、お疲れ様笑』
『今日からみんな仲良く半分こです』
笑い声が世界へ響く。
『あと、お金』
『今は特に使い道ないけど……』
『明日の特典で使えるかもしれないね』
『楽しみにしてて、じゃあ、また明日』
神は消えた。
地下深く。
巨大なシェルター。
分厚い鉄扉。
最新設備。
大量の保存食。
山積みの飲料水。
発電設備。
医薬品。
ありとあらゆる物資を蓄えた空間。
「これだけあれば10年は生き延びられる。」
責任者が満足そうに笑った。
その瞬間だった。
「あれ?」
一人の男が倉庫を見て固まる。
「……ない。」
保存食が。
消えていた。
「水は!?」
「全部消えてる!!」
「米も!」
「缶詰もだ!!」
悲鳴が飛び交う。
責任者は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「盗まれたのか!?」
誰かが震える声で言う。
「違う……。」
「神だ。」
全員の個人モニターが光る。
【指定ポケット 追加】
責任者は確認する。
確かに食料は入っていた。
だが。
ほんの僅か。
「ふざけるな!!」
「何ヶ月かけて集めたと思ってる!!」
拳を机へ叩き付ける。
すると。
シェルターの奥から一人の男が笑った。
「だったら、責任者さん」
「今までみたいに配ってくださいよ」
「俺達を養ってくださいよ」
空気が変わる。
「そうだ」
「責任者なんだから何とかしろ」
「食料出せ!水出せ!」
誰も従わない。
財産を失った瞬間。
地位もまた。
音を立てて崩れ始めた。
一方。
人気のない路地裏。
幼い兄妹が身を寄せ合っていた。
兄は十歳ほど。
妹はまだ六歳。
二人とも頬は痩せ細り。
立ち上がる力も残っていない。
「お兄ちゃん……」
妹が小さく呟く。
「お腹……すいた」
兄は笑おうとした。
「大丈夫、きっと……。」
その時。
個人モニターが光る。
兄は恐る恐る指定ポケットへ触れた。
光が溢れる。
次の瞬間。
一本の水。
焼きたてのようなパン。
缶詰。
果物。
兄の目が大きく見開く。
「え……?」
妹も目を丸くした。
「パン……」
兄は震える手でパンを取り出す。
温かい。
夢じゃない。
「食べて。」
妹は夢中で頬張った。
涙を流しながら。
「おいしい……」
「お兄ちゃん……」
兄もパンを口へ運ぶ。
涙が止まらなかった。
「ありがとう……」
空を見上げる。
「神様……」
生まれて初めて。
心の底から。
神へ感謝した。
世界はまた一つ。
大きく姿を変えた。
持つ者は失い。
持たざる者は手にした。
平等。
それが本当に幸福なのか。
まだ誰にも分からなかった。
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”
9日目 “ 約束”
10日目 “ アルコール”
11日目 “ 血の繋がり”
12日目 “ 疲れ”
13日目 “ 財産”




