77話 援軍
神様サバイバル12日目
警察署内、会議室。
長机を囲むように集まったのは四人。
不知火。
夢見。
署長・高橋。
そして風俗嬢達の代表。
窓の外は既に薄暗く署内には重たい空気が漂っていた。
誰もが分かっている。
神愛教は必ず来る。
問題は、いつ来るかだった。
「まず確認したい」
静かに口を開いたのは不知火だった。
「ここの警備能力はどれくらいある?」
署長の高橋は腕を組み、小さく頷く。
「拳銃はある」
「もちろん扱える者も少なくない」
机の上へ一丁の拳銃を置く。
「ただし、あくまで通常の警察官へ支給されるものだ」
「長距離射撃には向いていない」
「建物へ侵入しようとする相手を、至近距離で迎え撃つのが限界だろう」
不知火は静かに頷く。
「他は?」
「警察官は全員、柔道か剣道の有段者だ」
「近距離戦なら、そう簡単には遅れは取らん」
(なるほど……)
不知火は頭の中で署内の構造を思い浮かべる。
入口は限られている。
狭い廊下。
遮蔽物も多い。
(建物内に入られなければ戦える)
(逆に乱戦になれば厄介だ)
そこへ風俗嬢が恐る恐る手を挙げた。
「私達は……何をすればいいですか?」
不知火は少し考えた。
「その前に一つ聞かせてくれ」
「あの……夜さんのメイクを剥がした子」
「どんな子だった?」
思い出しながらゆっくり話し始めた。
「夜さんに憧れて……キャバ嬢になった子です」
「夜さんが風俗へ移ってから、その子も後を追うように風俗へ来ました」
「夜さんも妹みたいに可愛がってました」
「だから……」
俯く。
「裏切るなんて、信じられません」
部屋が静まり返る。
すると。
「あっ……」
風俗嬢が何かを思い出したように声を漏らした。
「何か思い出したか?」
不知火が尋ねる。
「何日か前なんです」
「忘れ物を取りに、一人で家へ帰ったんです」
「近かったですし、お昼だったので大丈夫かなって……」
「それで?」
「帰ってきてから……」
「仕事もしなくなって」
「話しかけても返事もしないし」
「夜さんのことも、『夜さん』じゃなくて……『あの人』って呼ぶようになって……」
「あと……」
少し考え込む。
「神様って言葉を、何回も呟いてた気がします……」
不知火の表情が変わる。
(その時か)
(神愛教と接触した)
(いや……)
(元々神愛教だった可能性もある)
どちらにせよ。
署内へ敵は入り込んでいた。
(まだ他にもいるのか?)
(どうやって見つける?)
答えは出ない。
だが一つだけ確かなことがある。
あの女は言った。
『裁きは近日中に行います』
(今日ではない)
(少なくとも少しだけ時間はある)
その時間を使うしかなかった。
22時。
警察署正面。
一台の車が到着する。
「援軍連れてきたぞ」
不知火の声と共に現れたのは。
的場。
そして盗丸だった。
「いやぁ!」
警官服へ着替えた的場が満面の笑みを浮かべる。
「制服ってなんかテンション上がるよな!」
「お前だけだ」
盗丸は苦笑しながら帽子を被る。
「周り警官ばっかで気まずいったらありゃしねぇ」
夢見が二人へ深々と頭を下げた。
「ありがとうございますぅ」
「助かりますぅ」
的場は大きく笑う。
「いやいや!」
「こういうの大好きなんだよ!」
「逆に呼んでくれてありがとな!」
夢見は目を丸くする。
「えぇ?」
盗丸は照れ臭そうに頭を掻いた。
「婆さん……いや」
「姉ちゃんにはメイクの借りもあるしな」
「これでチャラだ」
夢見は嬉しそうに微笑む。
「はぃ〜」
「じゃあお互い様ですねぇ」
盗丸も少しだけ笑った。
作戦会議は終わった。
警察官達は交代制で見張りにつく。
入口。
屋上。
廊下。
それぞれ持ち場へ散っていく。
不知火達も休むことになった。
だが。
誰も眠れない。
「……眠くねぇな」
盗丸が天井を見上げる。
「疲れが消えたせいか」
「身体は元気なのに寝る気にならねぇ」
不知火も頷く。
「身体は休ませた方がいい」
「疲れなくても筋肉は壊れる」
「無茶だけはするな」
その頃。
的場は一人。
トレーニングルームで黙々と身体を鍛えていた。
汗だけが床へ落ちる。
「そういやよ」
盗丸が不知火を見る。
「賭博場ってどうだった?」
「プレイルームも気になるんだけどよ」
不知火は咳払いをする。
「……よく分からん」
「なんだそれ」
盗丸は笑う。
「なんか隠してねぇか?」
「気のせいだ」
不知火は視線を逸らした。
あの夜を思い出し。
首筋を無意識に触る。
盗丸はニヤリと笑うだけだった。
静まり返る警察署。
時計の針だけが音を刻む。
カチ。
カチ。
そして。
午前0時。
世界中の動きが止まる。
誰もが空を見上げた。
神が現れる時間だった。
『やぁ』
『神だよ』
『神様サバイバル13日目』
『始めようか』
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”
9日目 “ 約束”
10日目 “ アルコール”
11日目 “ 血の繋がり”
12日目 “ 疲れ”




