68話 プラチナチケット
神様サバイバル11日目
一時間後
夜との話を終えた夢見は、署長室を後にした。
廊下を歩いていると。
前方から大きな歓声が聞こえてくる。
「おおおおお!!」
「いけぇぇぇぇ!!」
「兄ちゃん勝負だ!!」
異様な熱気だった。
夢見は首を傾げる。
「なんですかねぇ?」
人だかりを掻き分ける。
そして。
その中心を見て固まった。
そこには。
震える手でチップを握る不知火がいた。
「……」
夢見は数秒黙る。
なぜか不知火は目が血走っている。
周囲の警察官達も興奮していた。
「兄ちゃんすげぇな!」
「一枚からここまで増やしたのかよ!」
「今日はゴールドチケット確定じゃねぇか!」
「いやシルバー五枚でも十分だろ!」
不知火の手元。
50枚のチップ。
さらにポケットには3枚。
合計53枚。
夢見にはよく分からなかった。
ただ。
不知火が大勝ちしているらしい。
不知火は真剣だった。
50枚。
ここで交換すれば。
ゴールドチケット一枚。
それも悪くない。
シルバーチケット五枚でもいい。
だが。
視線はその先にあった。
プラチナチケット。
必要枚数。
チップ100枚。
そして。
交換先。
花魁夜。
「……」
不知火は腕を組む。
夜の顔が脳裏に浮かぶ。
綺麗だった。
そして。
夢見の知り合い。
もっと話してみたい。
そんな気持ちがあった。
やがて。
不知火は立ち上がる。
「よし」
チップ50枚を掴む。
「赤だ」
周囲が静まる。
「焔の赤に50枚賭ける!!」
賭博場が爆発した。
「うおおおおおお!!」
「兄ちゃんやる気だ!!」
「今日一番の勝負だぞ!!」
「全部乗せやがった!!」
不知火はルーレットを睨む。
その時だった。
後ろからひょこっと夢見が現れる。
「不知火さぁん」
「なんだ」
「これってぇ」
夢見は首を傾げた。
「数字を当てるゲームじゃないんですかぁ?」
不知火は目を離さない。
「あぁ」
「だが赤か黒なら二倍だ」
「今大事なところだから」
「少し静かにしてくれ」
夢見は素直に頷く。
「なるほどぉ」
少し考える。
そして。
「0の場合は何色になるんですかぁ?」
「色はない」
即答だった。
「0は特別枠だ」
「へぇ〜」
夢見はルーレットを見る。
そして。
ぽつり。
「次0がきますよぉ」
不知火は思わず振り返った。
「は?」
「0ですぅ」
「いや」
「そんな適当な……」
投票終了まで残り数秒。
不知火はため息を吐く。
「分かった分かった」
ポケットの3枚のチップを掴む。
「これでいいだろ」
適当に。
0へ置いた。
「いいな?」
「はぃ〜」
夢見は笑った。
投票終了。
玉が転がる。
コツン。
コツン。
歓声。
怒号。
祈り。
全員が見守る。
玉が赤へ近付く。
「よし!」
不知火が拳を握る。
「赤だ!」
次の瞬間。
コツン。
玉が弾かれる。
落ちた場所は。
0。
沈黙。
数秒。
誰も理解できなかった。
そして。
「0だぁぁぁぁぁ!!」
賭博場が揺れた。
不知火は固まる。
「……」
赤は外れた。
だが。
さっき適当に置いた3枚。
どこに置いた?
「0に3枚!!」
誰かが叫ぶ。
「108枚!!」
「大当たりだぁぁぁ!!」
歓声。
拍手。
悲鳴。
不知火は呆然としていた。
横を見る。
夢見が不思議そうな顔をしている。
「0に全部賭ければ良かったんですよぉ」
「簡単でしたぁ」
不知火は頭を抱えた。
「……」
22時。
不知火はプレイルーム受付に立っていた。
手には。
プラチナチケット。
受付嬢へ差し出す。
受付嬢の接客は笑顔だった。
だが。
チケットを見る。
固まる。
「え?」
もう一度見る。
「プラチナ……?」
周囲の風俗嬢達までざわついた。
「本物?」
「マジ?」
受付嬢は咳払いをする。
「い、一応確認ですが」
「盗んだわけじゃありませんよね?」
「賭博場で交換した」
「ちゃんと記録もある」
受付嬢は慌てて確認する。
そして。
深々と頭を下げた。
「失礼しました」
「五番のお部屋へご案内します」
案内された部屋は豪華だった。
柔らかなベット。
良い香りのロウソク。
綺麗に整えられた室内。
この世界では贅沢と言っていい。
不知火は落ち着かない。
座る。
立つ。
また座る。
そわそわする。
やがて。
コンコン。
扉がノックされた。
不知火の背筋が伸びる。
「どうぞ」
扉が開く。
静かに。
優雅に。
一人の女性が入ってきた。
花魁夜。
完璧な所作。
完璧な笑顔。
そして。
完璧な美しさ。
夜は綺麗なお辞儀をした。
「ご指名いただき」
「光栄でございます」
顔を上げる。
その瞳が不知火を見る。
少しだけ楽しそうに。
「今夜は」
微笑む。
「二人きりで楽しみましょう」
不知火は思わず息を呑んだ。
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”
9日目 “ 約束”
10日目 “ アルコール”
11日目 “ 血の繋がり”




