66話 楽しんでましたしぃ
神様サバイバル11日目
【人類残り40%】
『神愛教?』
Bちゃんは机の上の紙を指で弾いた。
夜は静かに頷く。
「最近急速に勢力を伸ばしている宗教団体よ」
「嘘つきには死の制裁、か」
Bちゃんは鼻で笑う。
『物騒だな』
夜は笑わなかった。
「先週、整形していた風俗嬢が一人殺された」
部屋の空気が変わる。
「顔を偽った罪」
「そう書かれていたわ」
Bちゃんの目が細くなる。
夜は続けた。
「私は整形してない」
「でもメイクで顔を作っている」
机の上の化粧品を見る。
「そして鏡が消えた」
夜は拳を握った。
「自分の顔を確認する術もない」
「本当に大丈夫なのか」
「今どんな顔をしているのか」
「分からなくなった」
弱々しい声だった。
いつもの女王の姿はない。
ただ不安を抱えた一人の女性だった。
「だから羽衣を呼んだの」
「B面のメイク、A面の占い」
「両方必要だった」
Bちゃんはしばらく黙る。
そして立ち上がった。
『ったく面倒くせぇな』
夜が少しだけ笑う。
「やってくれるの?」
『Aちゃん次第だな』
メイク道具を手に取る。
『私はどっちでもいい』
夜は安心したように目を閉じた。
一時間後。
署長室の扉が開く。
夜と夢見が出てきた。
夜が自分から部屋を出るのは、
久しぶりだった。
廊下にいた警察官達が驚く。
「夜さん!」
「元気だったんですね!」
「良かった……!」
風俗嬢達も集まってくる。
「夜さん今日も綺麗〜!」
「苺採ってきました!」
「食べますか!?」
「夜さん心配してたんですよ〜!」
夜は笑顔で応える。
「ありがとう」
「みんなも無理しないでね」
その姿は。
まさに女王蜂だった。
その時。
夜の視線がある方向で止まる。
夢見も振り返る。
そこには。
ソファーに座る不知火がいた。
周囲を五人の風俗嬢に囲まれ。
頭には。
なぜか風俗嬢のパンツ。
「そこで言ってやったんだ」
不知火は得意気だった。
「俺達は」
「お前が人を殺すところを見たくない」
風俗嬢達が黄色い声を上げる。
「きゃ〜〜!!」
「不知火さんかっこいい〜!」
「漢〜!」
「惚れちゃう〜!」
夜は思わず吹き出した。
「あら」
「お邪魔だったかしら?」
風俗嬢達が振り返る。
「夜さん!」
「元気になったんですね!」
「良かった〜!」
一斉に駆け寄る。
その隙に。
不知火と夢見の目が合った。
不知火は無言だった。
ゆっくりと。
本当にゆっくりと。
頭のパンツを外す。
夢見は黙って見ていた。
数秒。
沈黙。
先に口を開いたのは不知火だった。
「……もう話は終わったのか?」
夢見は笑顔で頷く。
「はぃ〜」
「久しぶりに夜ちゃんと話しましたぁ〜」
「怒ってなくて良かったですぅ〜」
不知火は小さく息を吐いた。
「そうか良かったな」
そして立ち上がる。
「じゃあ帰るか」
だが夢見は首を横に振った。
「いえぇ」
「今日は泊まろうかと思いましてぇ」
不知火が固まる。
夢見はちらりと視線を落とした。
先ほどまで頭に乗っていたパンツ。
「不知火さんも楽しんでますしぃ」
「大丈夫ですよねぇ?」
不知火の顔が引き攣る。
「いや、これはだな」
「急に被せられて、抵抗はしたんだが」
「その……」
夢見はくすりと笑う。
「いいですよぉ」
「誰にも言いませんからぁ」
不知火は本気で安心した。
「助かる」
その瞬間だった。
「きゃあああああ!!」
警察署内に悲鳴が響く。
全員が振り返る。
空気が一変した。
不知火が駆け出す。
夢見も。
夜も。
人だかりを掻き分ける。
そこには。
一人の警察官がいた。
壁へ磔にされている。
心臓には深々とナイフ。
既に絶命していた。
辺りが静まり返る。
不知火は足元に落ちていた紙を拾う。
そこには。
【独身と偽り家族を捨てた罪により処刑】
【神愛教】
静寂。
夜の表情が強張る。
夢見も笑顔を消していた。
不知火は紙を見つめる。
そして。
無意識に握り締めていた物を見る。
手の中のパンツだった。
数秒。
見つめる。
そして静かに床へ落とした。
「どうやら」
紙を握る。
「楽しんでる場合じゃないらしいな」
警察署の空気が凍り付く。
神愛教。
その名は。
もう噂では済まなくなっていた。
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”
9日目 “ 約束”
10日目 “ アルコール”
11日目 “ 血の繋がり”




