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64話 ついてきてよかった

神様サバイバル11日目

11日目の朝。


古民家。

庭先で不知火が薪を割っていた時だった。


玄関からノック音が響く。

コンコン。


不知火は斧を置く。

こんな時代にノック。

妙に律儀だった。


扉を開く。

そこには警官が三人立っていた。


全員拳銃を携帯している。

警棒もある。

不知火は思わず目を細めた。


「何か御用ですか?」


警官の一人が手帳を取り出す。

そして一枚の紙を見せた。


夢見羽衣。

手配書だった。


「この女性がこちらにいるという情報があります」


「出していただけますか」


不知火は表情を変えない。


「知りませんね」


「それより」


警官達を見る。


「警察はまだ機能しているんですか?」


警官は頷いた。


「我々は自発的に残った警察官です」


「この人物は危険です」


「隠していても良いことはありませんよ」


不知火は警官達の腰へ視線を落とす。


拳銃。

警棒。

装備は本物だった。


「中を確認しても?」


不知火は少しだけ考える。

そして微笑んだ。


「えぇ」


「問題ありませんよ」


警官は後ろを振り返った。


「連れてきてくれ」


その言葉に。

一匹の警察犬が姿を現す。

不知火の眉が僅かに動いた。


(警察犬……)



リビング。

全員が集まっていた。


楓。

盗丸。

的場。

廃人。

医楽。

夢見。

ピエロ。

華。

華の母親。


警官は室内を見渡した。

少しだけ驚く。


「随分と大所帯ですね」


不知火は苦笑した。


「こんな世の中ですから」


「助け合わないと」


警察犬が歩き始める。

一人。

また一人。


順番に匂いを嗅いでいく。


楓。

盗丸。

的場。

廃人。

医楽。


そして。

夢見の前で止まった。

警察犬の耳が立つ。


次の瞬間。


ワン!!


夢見が肩を震わせた。


「ひっ」


警官が夢見を見る。


「あなたが夢見羽衣さんですね」


静かな声だった。

夢見は何も言えない。

警官は続ける。


「手配書と顔が違っても構わない」


「連れて来いとの命令です」


「同行願います」


空気が張り詰める。

夢見の顔が青ざめる。


「あ〜……」


小さく頭を抱えた。


「夜ちゃんかぁ……」


不知火が振り返る。


「知り合いなのか?」


夢見は苦笑した。


「昔のお客さんですぅ」


その瞬間だった。

的場が立ち上がる。

いつの間にか拳銃を握っていた。


廃人も武器へ手を伸ばしている。

楓はスタンガン。

ピエロはダイナマイト。

医楽は華と母親を奥へ避難させる。


警官達も拳銃へ手を掛けた。


だが。

銃は抜かない。

警官は冷静だった。


「全員逮捕したいところですが」


「今は見逃します」


「夢見羽衣さんも悪いようにはしません」


不知火は一歩前へ出る。


「信じろと?」


「この世の中で警察を?」


警官は答える。


「信じなくて構いません」


「ですが抵抗されれば対処します」


「我々も撃ちたくはない」


「夢見羽衣さん一人です」


「他の方へ危害を加えるつもりもありません」


沈黙。


誰も動かない。

やがて警官が言った。


「心配なら一人だけ同行を認めます」


「それでも納得できないなら」


拳銃へ手を添える。


「ここで誰かが死ぬことになる」


「やめろ」


不知火だった。


「おれが同行する」


夢見を見る。


「いいか?」


夢見は少し安心したように笑った。


「はぃ〜」


「お願いしますぅ」



数時間後。


警察署。

車を降りた不知火は思わず足を止めた。


「……なんだこれは」


警察署だった。

確かに建物は警察署だ。


だが。

中身が違った。


入口。

受付。

廊下。

あらゆる場所に女性達がいた。


派手な服。

濃い化粧。

甘い香水の匂い。

笑い声。

まるで遊郭だった。


元警官達は完全に骨抜きになっている。

肩を揉まれている者。

膝枕をされている者。


女性達と談笑している者。

警察署とは思えなかった。


夢見が小さく笑う。


「夜ちゃんらしいですねぇ」


不知火は呆れる。


「笑い事じゃない」


その時だった。

一人の女性が近付いてくる。


「いらっしゃ〜い」


不知火の腕に抱き付いた。


「お兄さんタイプだ〜」


「少し遊んでいきなよ」


不知火は固まる。

夢見が吹き出した。


「ふふっ」


「ついてきて良かったですねぇ」


「どこがだ」


即答だった。

夢見は肩を竦める。


「私一人だったら」


「もっと大変でしたからぁ」


不知火は嫌な予感しかしなかった。

警官に案内され。

二人は警察署の最奥へ向かう。


署長室だった部屋。


扉の前。

左右には風俗嬢達が並んでいた。

まるで花道だった。


夢見がため息を吐く。


「怒ってるでしょうねぇ」


不知火が眉をひそめる。


「誰がだ」


夢見は苦笑した。


「夜ちゃんですぅ」


警官が扉を開いた。


ギィ――。


真っ暗な部屋。


その奥に。

一人の女が座っていた。

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

10日目 “ アルコール”

11日目 “ 血の繋がり”

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