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49話 宝物

神様サバイバル9日目

桐山が楓の元へやってきた。


「楓」


「金剛さんが呼んでる」


楓はソファに寝転がったまま答える。


「また?」


「まただ」


面倒そうに起き上がる楓。

その様子を見ていた盗丸は、内心ほっとしていた。


夢見の特殊メイク。

完璧だった。


桐山はまったく気付いていない。

楓が立ち上がる。


「じゃあ行ってくるわ」


「おう」


盗丸は小さく頷いた。

楓が連れていかれる。


扉が閉まる。

そして盗丸は立ち上がった。


「さて」


楓の救出も大事だ。

だが今は別のことも気になる。


金剛。

あいつがなぜここまで自分を探しているのか。

その理由だ。


盗丸は静かに歩き出した。

向かう先は私物保管庫。



所長室。


ノックもせず楓が入る。


「なによ?」


金剛は葉巻を咥えたまま窓の外を眺めていた。


「なんかよ」


「おめぇのツレだから出してくれって」


「刑務官の娘が騒いでるらしいが」


ゆっくり振り返る。


「知り合いか?」


楓は即答した。


「知らないわよ」


橋本恵。


確かに同級生だ。

だが友達ではない。

助ける理由もない。


金剛は鼻で笑った。


「そうか、ならいい」


それだけだった。

楓は少し考えてから聞いた。


「あの檻に入ってる人たちはどうするのよ?」


金剛は葉巻の煙を吐く。

そして突然言った。


「十二年」


「は?」


「なんの数字か分かるか?」


楓は眉をひそめる。


「なによ急に」


金剛は椅子に深く腰掛けた。


「おれがこの刑務所に入れられてた期間だ」


沈黙。


「最初はな」


「毎日外に出たかった」


「毎日キレてた」


「毎日誰か殴ってた」


苦笑する。


「でも十二年もいるとな、色々諦める」


葉巻の先が赤く光る。


「二度と手に入らねぇもんをな」


楓は黙って聞いていた。


「それはあんたがそれだけのことをしたんじゃないの?」


金剛は怒らない。

むしろ笑った。


「そうかもな」


そして突然聞く。


「楓、親は好きか?」


楓は顔をしかめた。


「急になによ」


「好きか嫌いかだ」


楓は少し考えた。

そして答える。


「あんなのクソよ、どうでもいいわ」


金剛は笑った。

心底楽しそうに。


「お前はやっぱりいいなぁ」


楓は嫌そうな顔をする。


「なによそれ」


「盗丸の件が片付いても」


金剛は言った。


「ここにいろよ」


「不自由はさせねぇぜ」


楓は即答する。


「まぁ正直悪くないけど」


「仲間もいる。だから帰る」


金剛は笑った。

その答えも気に入ったらしい。


楓は少しだけ迷った。

そして聞く。


「なんでそんなに盗丸探してるのよ」


金剛の表情が変わる。

笑顔が消える。


「あいつはな」


低い声。


「おれの“ 宝物”を持っていった」


楓は目を瞬く。


「宝物?」


「バックレたことなんてどうでもいい」


「好きにすりゃいい」


葉巻を灰皿に押し付ける。


「だがな、死刑執行が決まって」


「もう二度と手元に戻らねぇと諦めてたもんを」


拳が握られる。


「あのバカは持っていきやがった」


楓はごくりと唾を飲んだ。


「な、なにを持っていったの?」



地下。


私物保管庫。

盗丸は埃だらけの資料をめくっていた。


「金剛」


「金剛……」


そして見つける。


【金剛堕落】


没収品一覧。


指を走らせる。


財布。

タバコ。


そして。

盗丸の目が止まった。


「……時計?」



「時計だ」


金剛が言った。




場面は変わる。


地下。

さらに奥。

ホームレス達の集落。


今日の収穫報告が行われていた。


段ボール。

空き缶。

毛布。


壊れたラジオ。

様々なガラクタ。


その中に。

一つの懐中時計。


ホームレスの男が持ち上げる。


「今どき懐中時計かよ」


「安物だな」


カチカチと振る。

動かない。


「しかも壊れてる」


「時間も動かねぇ」


肩をすくめた。


「誰か欲しいやついるか?」


沈黙。


誰も手を挙げない。

当然だった。


価値がない。

そう思われた。


「おれがもらう」


低い声。


全員が振り向く。

そこにいたのは。


ホームレスの王。

天涯帝(てんがいみかど)


「天涯さん?」


男が驚く。


「そいつ安物ですよ?」


「時計としての価値もありません」


天涯は答えない。

懐中時計を受け取る。


ゆっくり開く。

中には一枚の写真。

女性の写真だった。


天涯はしばらく見つめる。

そして小さく笑った。


「バカが」


男達は首を傾げる。


天涯は写真から目を離さない。


「物の価値ってのはな」


静かな声。


「値段で決まるんじゃねぇ」


写真の女性を見つめながら呟く。


「“ 想い”で決まるんだ」


パチン。


懐中時計が閉じられた。

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

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