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47話 針千本の〜ます

神様サバイバル9日目

楓は考えていた。


“ 約束”。


神が消したもの。

聞いたことはある。


知っているはずだ。

なのに。


胸の奥が妙にざわつく。

何か大切だった気がする。

でも思い出せない。



小学校低学年。


運動会の前日。

楓は父親の腕にぶら下がっていた。


「絶対だよ!」


「来週の運動会は絶対見に来てよ!」


「楓、リレーに出るの!」


父親が苦笑する。


「分かった分かった」


「仕事が――」


「だめ!」


楓は首を振った。


「絶対!」


すると母親が笑った。


「じゃあ指切りしなさい」


小さな楓の指。

父親の大きな指。

絡まる。


「指切りげんまん〜」


楓はそこで回想が途切れた。


「……指切り?」


ぽつりと呟く。

あれは何をしていたんだろう。



同じ頃。


刑務所。

所長室。


金剛も同じことを考えていた。


机に肘をつき。

葉巻の煙を吐く。


頭の中に浮かぶ。


施設。

夕焼け。

女の声。


「じゃあ指切りしてあげる」


「は?」


「ほら」


無理やり小指を絡められる。


「嘘ついたら針千本の〜ます」


「そんなガキみてぇなこと」


そこで記憶が途切れる。

金剛は眉をひそめた。



楓。金剛。

別々の場所。

ほぼ同時。


「〜指切った」


二人の声が重なった。



楓は刑務所生活を満喫していた。


「ちょっと喉乾いたんだけど」


見張り役の囚人が飛び上がる。


「はっ!」


「はい!」


慌てて炭酸ジュースを差し出した。

キンキンに冷えている。

楓が蓋を開ける。


プシュ。

ぐびぐび。

ごくごく。


「かぁ〜!」


満足そうな顔。


「これよこれ!」


囚人は何故か嬉しそうだった。


「気が利くわね」


「なんで囚人なんてやってるのよ」


囚人は照れた。


「えへへ」


「強盗殺人で捕まってました」


楓。


「……そっ、そう」


少しだけ引いた。


「そういえば」


楓が聞く。


「金剛ってなんで盗丸の名前出した瞬間ブチ切れたの?」


「囚人仲間じゃないの?」


囚人は少し考えた。


「元々」


「盗丸は金剛さんの舎弟だったんです」


楓が眉を上げる。


「へぇ」


「力の無いあいつは刑務所で生き残る為に金剛さんの下についたんですよ」


「要領良かったですし」


「上手く立ち回ってました」


「それで?」


楓が続きを促す。


「それだけじゃないみたいで」


囚人は声を潜めた。


「噂ですけどね」


「金剛さんが大事にしてたものがあったらしいんです」


「私物だから刑務所で保管されてたんですが」


「他の囚人の私物も含めて」


「盗丸が全部盗んで逃げたとか」


楓。


「うわ、それは怒るわね」


そこへ。

別の囚人がやって来た。


「おーい、見張り交代だ」


「休んでいいぞ」


先程の囚人が立ち上がる。


「おっ、助かる」


そして思い出したように言う。


「そうだ」


「今食堂でクッキー焼いてるから」


「後で持ってきてやってくれ」


新しく来た囚人。


「は?クッキー?」


「あとプリンも欲しいらしい」


「紅茶も」


新しい囚人。


「……」


前の囚人は満足そうに頷いた。


「頼んだぞ」


去っていく。



静寂。


新しい囚人は辺りを見回した。

手錠なし。

檻なし。


見張り一人。

炭酸ジュース。

クッキー待ち。


「……」


数秒。


「いつからここはカフェになったんだ」


楓が振り向く。


「そうだ」


「クッキー取りに行く時」


「ケーキも作れるか聞いといて」


囚人。


「……」


「あと紅茶ね」


囚人。


「……」


「なによ?」


楓が首を傾げる。

新しい囚人は頭を抱えた。

そして言った。


「お嬢ちゃん」


「色々説明してくれ」


「なにをよ?」


「全部だよ」


楓。


「?」


囚人は周囲を確認した。


誰もいない。

ゆっくり顔を擦る。


「夢見のばあさん、すげぇな」


楓。


「は?」


囚人が小さく笑った。


「おれだよ」


「誰よ」


「ひでぇな」


ため息。

そして。


「盗丸だよ」

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

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