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46話 指切りげんまん

神様サバイバル9日目

0時。


神が現れた。


『やぁ』


聞き慣れた声。

誰も驚かない。

驚く元気も残っていなかった。


神は楽しそうに続ける。


『みんなさ』


『簡単に約束するよね』


静かな夜。

神の声だけが響く。


『守れないのに』


『すぐ忘れるのに』


『未来の自分が守る保証なんてないのに』


少し笑う。


『なら最初からするなよ』


間。


『てことで』


『神様サバイバル九日目!』


『今日消滅するのは“ 約束”』


誰かが息を呑む。

神は構わず続けた。


『みんな神に感謝してね』


ぷつり。

声が消えた。



古民家。


静寂。

不知火は天井を見ていた。


何かがおかしい。

胸の奥。


引っ掛かる。

何か大事なことを忘れている気がする。


でも。

何を忘れたのか分からない。


楓。

刑務所。

救出。


違う。

もっと前。

もっと些細なこと。


思い出せない。

不知火は眉をひそめた。


「……なんだ?」


隣では盗丸も首を傾げている。


「なんか気持ち悪ぃな」


的場は欠伸をした。


「腹減った」


こいつだけ平常運転だった。



同じ頃。


刑務所。

所長室。


ガンッ!!


机が吹き飛んだ。


「金剛さん!」


囚人たちが慌てる。

金剛が暴れていた。


椅子を蹴り飛ばす。

壁を殴る。


額に血管が浮いていた。

桐山が近づく。


「どうしたんですか?」


返事はない。

また机を殴る。


「金剛さん!」


桐山が声を張る。

金剛が振り返る。

目が血走っていた。


「それが分からねぇから問題なんだろうが!!」


怒鳴り声。

部屋が静まり返る。


金剛自身も困惑していた。

何かを失った。

そう思う。


だが。

何を失ったのか分からない。

胸の奥が、妙にざわついていた。



楓は刑務所内を歩いていた。


昨日とは違う服。

見張り役付き。


とはいえ、手錠も縄もない。

妙な扱いだった。


廊下を歩く。

鉄格子。

檻。


その中には元刑務官たち。

そして家族。


不安そうな顔。

疲れ切った顔。


皆、自由に歩く楓を見ていた。


「なんだあいつ」


そんな視線。

楓は気にしない。

すると。


「あっ!」


女の声。


「楓!」


楓が振り返る。

下着姿の女。

どこか見覚えがある。


「……誰?」


女が固まる。


「ひどっ!」


「橋本よ!」


楓は思い出した。

同じクラス。

橋本恵(はしもとめぐみ)


「あぁ」


橋本は鉄格子にしがみつく。


「楓!」


「あんたなんでそんな自由に歩いてるのよ!」


「てかその服!」


目を見開く。


「私の服じゃない!?」


楓は自分の服を見る。


「あぁ」


納得した。


「これあんたのだったの」


昨日夕方。

見張り役の囚人が。


「ちょうど良さそうなのがあった」


と言って持ってきた服だった。

橋本は半泣き。


「返してよ!」


「いや今着てるし」


楓は即答。

橋本がさらに必死になる。


「楓!」


「お願い!」


「あんた囚人と知り合いなんでしょ!?」


「親のコネでも何でもいい!」


「出して!」


「友達だって言って!」


楓は少し考える。


橋本。

橋本恵。

クラスメイト。


破られた制服。

陰口。

笑い声。


橋本はいつも中心にいた。

楓は冷めた目で見た。


「橋本……だっけ?」


橋本が頷く。


「そう!」


「そうよ!」


「同じクラスでよく話して――」


楓が遮った。


「悪いけど」


静かな声。


「それはできない」


橋本の顔が引きつる。


「なんで!?なんでよ!!」


楓は振り返らない。


「嘘つきは泥棒の始まり」


歩き出す。


「なんでしょ?」


橋本の顔が歪んだ。


「待って!」


楓は止まらない。


「楓!!」


絶叫。


「悪魔!!」


「くそビッチ!!」


「死ね!!」


楓は無視した。

見張り役へ言う。


「新しい服用意して」


「この服は捨てといてね」


囚人が吹き出した。



数時間前。


刑務所。

廊下。


金剛が立ち止まる。

ゆっくり振り返った。


「あ?」


楓が一瞬だけ息を呑む。


「お嬢ちゃん」


低い声。


「今」


一歩近づく。


「盗丸って言ったか?」


凄まじい圧。


楓の背筋に冷たい汗が流れる。


「え……えぇ」


少しだけ声が上擦った。


「囚人だったって聞いたから」


「知り合いかなって」


金剛は数秒黙る。

そして。


「探してたんだ」


ぽつりと言った。


「盗丸の居所をな」


楓は嫌な予感がした。

金剛は歩き出す。


「悪いなお嬢ちゃん」


振り返らないまま言う。


「今日は泊まりだ」


楓は何か言い返そうとして。

やめた。


本能が告げていた。

今は逆らうなと。


見張り役の囚人が付き。

楓はそのまま刑務所に泊まることになった。

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

9日目 “ 約束”

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