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45話 当たりますよ

神様サバイバル8日目

古民家。


重い空気が流れていた。

楓がいない。


それだけで、

いつもの騒がしさが消えている。


不知火は壁にもたれながら考えていた。

楓が連れ去られた。


今この瞬間も、

刑務所にいる。

何をされているか分からない。


その想像だけで、

胸の奥がざわついた。


「行こう」


最初に口を開いたのは不知火だった。


「刑務所だ」


その言葉に、

的場が顔を上げる。


「いいねぇ!」


嬉しそうに笑った。


「なんか不完全燃焼だったんだよな!」


ピエロを見る。


「なぁピエロ!」


「ダイナマイトくれよ!」


的場は笑っている。


つい数時間前に、

ホームセンターを吹き飛ばしかけた男とは思えなかった。


盗丸が頭を抱える。


「待て待て待て」


呆れたように言う。


「今さっき修羅場くぐったばっかだぞ?」


「普通休むだろ」


「まず医楽のじいさんと廃人の手当だ」


その言葉に、

全員が少しだけ冷静になる。


夢見は華と母親を和室へ案内していた。

襖を開ける。

夕日が差し込む静かな部屋。


「部屋はいっぱいあるんでねぇ」


「好きに使ってください」


夢見は笑う。


「まぁ私の家じゃないんですけどねぇ」


母親が小さく頭を下げる。

華も慌てて頭を下げた。


夢見はそんな二人を見て、

少しだけ安心した。


ピエロが守ろうとしていたものは、

ちゃんと残ったのだから。


しばらくして。

医楽が目を覚ました。


「……ん」


ゆっくりと瞼を開く。

周囲にいた全員が顔を上げた。


「医楽!」


不知火が声を掛ける。

医楽は周囲を見回した。


夢見。

廃人。

不知火。

盗丸。

的場。

ピエロ。


そして。

一人足りない。


「楓は?」


静かに聞いた。

不知火は答えなかった。


答えなくても、

その場の空気で分かった。


事情を聞く。

最後まで聞く。


医楽の右拳が、

布団の上で小さく握られた。

それから目を閉じる。


「……そうか」


短く呟いた。

しばらく沈黙。

そして。


「留守もろくに守れんとは、情けないな」


ぽつりと言った。


「申し訳ない」


夢見が首を振る。


「違います!」


「医楽さんは頑張りました!」


「私なんて……」


声が震える。


「私なんて何もできなかったのに……」


廃人も俯いていた。

鼻にはまだティッシュが詰まっている。


「ごめん俺も」


「ビビって全然動けなかった」


夢見も何か言おうとして、

結局言葉にならない。

誰も責めなかった。


責められる者など、

この場にはいなかった。


あの場にいたのが自分でも、

結果は変わらなかったかもしれない。

そう思っていたからだ。


不知火は夢見を見る。


「なぁ」


夢見が顔を上げる。


「楓に死相が見えるって言ってたな」


「あんたの占いは本当なのか?」


夢見は少し困った顔をした。


「信じてもらえるか分かりませんが……」


一呼吸置く。


「私の占い」


「ほぼ百パーセント当たります」


「百パーセント?」


不知火が眉をひそめる。


「じゃあ楓は確実に死ぬのか?」


「人はいつか死ぬだろ」


的場が言う。


「そりゃそうですけど」


夢見は苦笑した。


「回避できる未来もあります」


全員が見る。

夢見は続けた。


「未来は一本じゃないんです」


「枝分かれしてるんですよ」


木の枝を描くように指を動かす。


「私が見た未来にならないために」


「楓ちゃんが今の自分なら絶対しない行動を取れば」


「その未来を回避できる可能性があります」


廃人が首を傾げた。


「つまり?」


「思ったことと逆の行動?」


「まぁそんな感じですねぇ」


夢見は笑う。


「あと」


少し真面目な顔になる。


「運命の強い方がいます」


「本人以外の人の介入」


「それでも未来は変わるんです」


「助ける人、邪魔する人」


「偶然、選択」


「全部で未来は変動します」


的場が腕を組んだ。


「わからん」


「ですよね」


夢見が頷いた。



時刻は十八時前。


窓の外は赤かった。

もうすぐ夜になる。


楓がいつも座っていた場所。

そこだけ空いている。


不知火は、

しばらくその場所を見ていた。


笑っていた顔。

怒鳴っていた顔。

うるさかった声。

全部思い出す。


そして立ち上がった。


「明日行く」


誰も反対しない。


「楓を助ける」


不知火。

的場。

盗丸。

廃人。


四人で向かうことになった。


ピエロは紙に書く。


【華と母親を守りたい】


【助けてもらったのにごめん】


不知火は首を振った。


「気にするな」


医楽は怪我。

夢見も残る。

盗丸は露骨に嫌そうだった。


「俺行かなきゃ駄目?」


「駄目だ」


即答だった。


「刑務所までの道知ってんのお前だけだろ」


盗丸は天井を見上げた。


「はぁ……」


深いため息。


誰も笑わない。

誰も眠れない。


静かな古民家。

風の音だけが聞こえる。


そして。

時刻は零時。


突然。

聞き慣れた声が響いた。


『やぁ』


全員が顔を上げる。

神だった。


『神様サバイバル九日目』


『始めようか』

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

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