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44話 囚人の王

神様サバイバル8日目

所長室。


楓は椅子に座らされていた。


目の前には、

巨体。


囚人の王。

金剛堕落。


葉巻の煙がゆっくりと漂う。

楓は唾を飲み込んだ。

正直、怖い。


だが。

ここで怯えた顔を見せたら負けな気がした。


金剛は立ち上がる。

ゆっくり。


一歩。

また一歩。


楓の前まで来た。

じっと見下ろす。


「……」


無言。

楓は思わず身構えた。


「な、何よ」


金剛は答えない。

顎を掴む。


右から。

左から。


品定めするように眺める。

楓はその手を払いのけた。


「触んな!」


金剛は鼻で笑った。


「立て」


命令だった。

楓は警戒しながら立ち上がる。


金剛は肩を掴む。

くるりと回す。


背中。

横。

正面。


確認するように見る。

楓は段々腹が立ってきた。


「だから何なのよ!」


その瞬間。


ビリッ。


ワンピースの肩口が裂けた。

楓が目を見開く。


「ちょっ!?」


慌てて胸元を押さえる。


肩口が破れただけだが、

下に履いていたクマさんパンツがちらりと見えた。


周囲の囚人たちが笑う。


「クマだ!」


「ガキかよ!」


「似合ってんじゃねぇか!」


楓の顔が真っ赤になる。


「うるさい!!」


金剛は興味なさそうに鼻を鳴らした。

そして。


「あぁ」


小さく呟き、

金剛が振り返る。


「おい」


指を差した。

楓を捕まえてきた三人組の一人。


「へ、へぃ!」


嬉しそうに前へ出てくる。

手柄を立てたと思っている顔。

金剛は肩を組んだ。


「頑張ってるじゃねぇか」


「なぁ?」


周囲の囚人たちを見る。


「だよな?」


男は照れ笑い。


「へへっ」


次の瞬間だった。


ゴキッ。


首が回った。

180度。


男の顔が後ろを向く。


そのまま。

崩れ落ちた。


沈黙。


楓の顔から血の気が引く。


「えっ……」


「えっ……?」


残り二人の囚人も固まった。


「金剛さん……?」


金剛は葉巻に火をつける。

まるで何事もなかったように。


煙を吐く。

そして。

低い声で言った。


「お前ら」


沈黙。


「こんな小便くせぇガキで」


葉巻を指で弾く。


「おれが満足すると思ってんのか?」


二人は首をぶんぶん振った。

声も出ない。


「次はねぇぞ?」


慌てて頭を下げる。


「す、すみません!」


「失礼しました!」


二人は逃げるように退室した。

部屋に残ったのは。


金剛。

桐山。

楓。


楓だけが状況についていけていない。


「え?え?」


桐山も少し呆れていた。

金剛は椅子へ戻る。

どかりと座る。


そして顎で合図した。

桐山へ。


桐山はため息をつく。


「帰っていいぞ」


楓。


「は?」


「帰っていいと言った」


「金剛さんはガキに興味はない」


「運が良かったな」


数秒。

沈黙。


楓の額に青筋が浮かぶ。


「ふざけんじゃないわよ!!」


桐山。


「!?」


楓は怒鳴った。


「いきなり拉致しに来て!」


「仲間傷つけて!」


「服まで破いて!」


「興味ないから帰れ!?」


「何様よあんた!!」


桐山が青ざめる。


(終わった……)


そう思った。

金剛を睨みつける楓。


金剛は。

数秒見つめたあと。


「ガハハハハハ!!」


笑った。

大声で。

豪快に。


「お〜お〜」


「気の強ぇ姉ちゃんだな!」


楓は腕を組む。


「誰のせいよ!」


金剛はまだ笑っている。


「あと五年経ったら」


ニヤリ。


「おれの女にしてやってもいいぜ」


「誰がなるもんですか!」


即答。

金剛はさらに笑った。


「気に入った」


桐山を見る。


「服を用意してやれ」


桐山。


「……え?」


「そんな格好じゃ帰るに帰れねぇだろ」


(あんたが破いたんだろ)


桐山は思った。

楓も同じことを思った。




三人は所長室を出た。


夕方。


窓の外は赤い。

もうすぐ日が落ちる。


金剛は歩きながら言った。


「どうせ暗くなる」


「泊まっていけよ」


楓。


「嫌よ」


「他の囚人どもには手出しさせねぇぜ?」


「嫌よ、仲間も心配してるだろうし」


即答だった。

金剛が笑う。


その時。

楓がふと思い出した。


「あ、そうだ」


金剛。


「ん?」


「あんた達囚人よね?」


「盗丸って知ってる?」


その瞬間。

金剛の足が止まった。


空気が変わる。

桐山の額に汗が浮かぶ。


ピリッ。


肌が粟立つ。

楓ですら気づく。


今。

何かが変わった。


金剛がゆっくり振り返る。

笑っていない。

目だけが細くなっていた。


「お嬢ちゃん」


低い声。


「今ぁ」


一歩近づく。


「盗丸って……言ったか?」


楓の背筋を、

冷たいものが走った。

消滅ワード


1日目 “法律 ”

2日目 “ 電気”

3日目 “ 罪悪感”

4日目 “ 鍵”

5日目 “ 痛覚”

6日目 “ 肉”

7日目 “ 地図”

8日目 “ 鏡”

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