35話 晒けだしなよ
神様サバイバル8日目
0時。
空が、また光った。
「やぁ、神だよ」
もう誰も驚かない。
鍋の湯気の向こうで、
全員が空を見る。
「神様通話、みんないっぱいありがとうね」
「これからも神は24時間受付中だよ」
軽い口調。
それが余計に腹立つ。
「8日目」
「今の人類の残り——65%」
空気が少し重くなる。
減っている。
確実に。
神は気にした様子もない。
「みんなさ」
「自分の容姿ってなんでそんなに気にするの?」
「寝癖があろうが」
「スッピンだろうが」
「別によくない?」
楓が嫌な顔をする。
「……嫌な予感」
夢見も眉をひそめた。
「分かりますぅ……」
神が笑う。
「だから」
「気にならないように」
一拍。
「今日は“鏡”を消します」
沈黙。
「じゃあね」
映像が消えた。
数秒。
そして。
「最悪!!!!」
夢見が叫んだ。
「くそ神死ね!!」
楓も叫ぶ。
「わしの老眼鏡が……」
医楽がつぶやく
対して。
「いや、鏡ならラッキーじゃね?」
盗丸。
「たしかに」
廃人も頷く。
「今までで一番平和かも」
的場も苦笑する。
不知火も正直そう思った。
ピエロは無反応。
だが。
「はぁ!?」
楓がキレる。
「どうすんのよ!!」
「化粧!!」
「ドライヤー!!」
「ツケマ!!」
スマホを取り出す。
インカメ。
真っ黒。
「はぁぁ!?」
「インカメもダメじゃん!!」
「くそ神!!」
夢見も手持ち鏡を取り出す。
見る。
映らない。
「……まじかぁ」
本気で落ち込んでいた。
楓が肩を掴む。
「おばあちゃん!!」
「分かる!?」
「めっちゃ分かる!!」
「分かりますぅ!!」
妙な友情が芽生えていた。
盗丸が呆れる。
「いや、生き死にの世界だぞ」
「それどころじゃねぇだろ」
楓と夢見が同時に振り向く。
「それとこれとは別!!!」
ハモった。
「うるせぇ」
盗丸が引く。
きっと今この瞬間。
世界中で。
女性たちの悲鳴が上がっている。
そんな気がした。
早朝6時。
古民家。
出撃前。
空気は張っていた。
黒闇の拠点へ向かう。
メンバーは四人。
不知火。
的場。
盗丸。
そして。
ピエロ。
白塗りのまま、
静かに立っている。
留守番は。
楓。
廃人。
医楽。
夢見。
本来。
楓は車の運転役として行く予定だった。
だが。
「やめたほうがいいです」
夢見が珍しく真剣な顔だった。
「昨日も言いましたよねぇ」
「死相が見えるって」
楓が顔をしかめる。
「まだ言ってんの?」
「占いってそんな当たるの?」
夢見は笑わなかった。
「今回は」
「嫌な感じなんです」
沈黙。
不知火が見る。
夢見の目は、本気だった。
楓は舌打ちする。
「……分かったわよ」
不満そうだったが、
押し切るほどではなかった。
「その代わり」
「絶対帰ってきなさいよ」
不知火が頷く。
廃人はノートを広げていた。
びっしり。
防衛キーワード候補。
「まだ考えてるのか」
盗丸が呆れる。
廃人は笑った。
「絶対攻略してやる」
「このゲーム、穴あるって」
「絶対ある」
完全に楽しんでいた。
医楽がため息をつく。
「ゲーム感覚か」
「ゲームだろ?」
廃人が笑う。
「負けたら死ぬけど」
医楽は何も返さなかった。
不知火と的場は、
医楽から薬を渡される。
「抗生物質」
「ちゃんと飲め」
「痛くなくても傷は治っとらん」
「分かってる」
不知火。
的場も飲む。
ピエロは無言。
だが、昨日より顔色はいい。
盗丸が笑う。
「よし」
「黒闇討伐隊って感じしてきたな」
的場が楽しそうだった。
「で」
ピエロを見る。
「ダイナマイト何本持ってる?」
不知火が即ツッコむ。
「聞くな」
ピエロは少しだけ肩をすくめた。
なんとなく。
空気が少し和らぐ。
そして。
玄関。
朝の空気が冷たい。
不知火が振り返る。
「行ってくる」
楓が腕を組む。
「全員で帰ってきなさいよ」
夢見は静かに見ている。
医楽は酒ではなく、
今日はコーヒーだった。
廃人はノートから顔を上げない。
盗丸がドアを開ける。
朝日が差し込んだ。
ピエロが先に一歩出る。
迷いなく。
黒闇のいる方向へ。
その背中を見て。
不知火たちも歩き出した。
消滅ワード
1日目 “法律 ”
2日目 “ 電気”
3日目 “ 罪悪感”
4日目 “ 鍵”
5日目 “ 痛覚”
6日目 “ 肉”
7日目 “ 地図”
8日目 “ 鏡”




