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31話 報酬

古民家の空気は、妙に重かった。


不知火が戻ってきてから、

しばらく誰も口を開かなかった。


楓が、ようやく口を開く。


「……で?」


「何話したの?」


全員の視線が集まる。

不知火は一度、息を吐いた。


「神様サバイバルの目的」


「防衛キーワード」


「報酬」


「30日後」


「聞けるだけ聞いた」


廃人が身を乗り出す。


「で?」


「目的は?」


不知火は神の言葉を思い出す。


「……知りたいらしい」


「人間が、今より」


「物がない方が幸せなのか」


「ルールがない方が幸せなのか」


「感情がない方が幸せなのか」


沈黙。


「……は?」


楓が顔をしかめる。


「意味わかんないんだけど」


「神様ってそんな感じなの?」


「……知らん」


不知火が短く返す。


「でも、本心らしい」


「気持ち悪……」


盗丸が呟く。


「次」


不知火が続ける。


「防衛キーワードは、消滅ワード以外でも設定できる」


空気が変わった。

廃人の目が変わる。


「やっぱり!!」


立ち上がる。


「やっぱそうだ!!」


「絶対あると思ってた!」


楓がびくっとする。


「な、なによ急に」


「攻略法だよ!」


廃人が興奮気味に言う。


「このゲーム、消えるものに対応するだけじゃない!」


「こっちから世界のルールに干渉できる!」


「バグがある!」


「抜け道がある!」


完全に楽しそうだった。

楓が不安そうな顔になる。


「え……でも」


「私、“電気”に使っちゃったけど」


「大丈夫なの?」


少し弱い声だった。

そのとき。


「そのための仲間だろ」


的場が言った。

迷いなく。


楓がそちらを見る。

的場は笑っていた。


「一人で抱える必要ない」


盗丸も頷く。


「ちげぇねぇ」


「お嬢ちゃんの電気には世話んなってるし」


「借りは返すさ」


楓が少しだけ照れくさそうな顔をする。


「……べ、別に貸しとかじゃないし」


「次」


不知火が続ける。


「報酬は」


少しだけ間。


「想像しえることなら、大体なんでも可能らしい」


「……は?」


廃人が止まる。


「なんでも?」


「死者蘇生も」


沈黙。

空気が、止まる。


「……え」


楓の声が小さい。

盗丸も言葉を失う。

的場すら黙った。


不知火は、下を向いた。

拳が、わずかに強く握られている。

医楽だけが、その様子を見ていた。


何も言わない。

ただ、静かに。


「……30日で終わる」


不知火が続ける。


「ただし、“このゲームは”って言い方だった」


「引っかかるな」


廃人が言う。


「別ゲームあるやつ?」


「ありそうで嫌だわ」


楓が顔をしかめる。


「あと」


不知火の声が少しだけ低くなる。


「リタイアで一番多いのは事故死」


「でも、これからは病死が増えるらしい」


その言葉で、

医楽が反応した。


「……病死」


酒を一口飲む。

考える。


「感染症」


「持病」


「見えん内臓疾患」


「痛みがない今、異変に気づくのは遅れる」


一拍。


「下手すりゃ、自分が死にかけてることすら分からん」


楓が青ざめる。


「やめてよ……」


「事実だ」


医楽は淡々としていた。


「見た目で分かる怪我はいい」


「だが、腹の中は見えん」


「内出血でも、盲腸でも、肺でも、心臓でも」


「痛みがなけりゃ、人は死に近づいてることすら気づかん」


沈黙。

その重さだけが残る。



同じ頃。


刑務所。

檻の前。

白髪まみれの男が倒れていた。


元刑務官。

息はある。

だが、顔は別人みたいに老け込んでいる。


桐山がしゃがみ込む。

観察する。


「……なるほど」


メモを取る。

金剛が椅子に座って笑っていた。


「で?」


桐山が立つ。


「同じ年齢でも、寿命の減り方に差があります」


「通話中、白髪、皺、老化が進行」


「死んだ者は、ほぼ老衰死と同じ状態」


「つまり」


一拍。


「元々の寿命を削っている」


金剛が笑う。


「面白ぇ」


生還した刑務官が震えながら話す。


「報酬はなんでも……可能だと……」


その瞬間。

金剛の目が変わる。


「ほぉ?」


笑う。

獣みたいに。



警察署。


花魁夜がソファで脚を組んでいた。


「で?」


男が跪く。


「報酬はなんでも可能とのことです」


「へぇ」


花魁が笑う。


「面白いじゃない」


別の男を見る。


「次、誰が行く?」


「一番いい情報持ってきた人には——」


唇に指を当てる。

男たちの目がギラつく。



黒闇の拠点。


奴隷の男が震えながら報告する。


「し、死者蘇生……可能……」


黒闇は黙って聞いていた。


「……そうか」


それだけ。

だが、その目は何かを考えていた。



地下水路。


ネズミが走る。

カラスが鳴く。

湿った空気。


ホームレスたちの空間。


「天涯さん」


部下が言う。


「神様通話、どうします?」


「こっちも情報取りたいです」


天涯は缶を傾けた。

笑う。


「やらねぇよ」


「え?」


「なんでです?」


天涯はネズミに餌を投げた。


「欲しいもんくれる」


「願い叶える」


笑う。


「そんなうまい話」


一拍。


「この世で見たことあるか?」


部下が黙る。


「……でも」


「本当なら」


天涯が笑った。


「だからだよ」


「本当なら、尚更怪しい」


ネズミが足元を走る。

カラスが肩に降りる。

天涯は空を見た。


「神は信じねぇ」


少し笑う。


「だが——」


地下の暗闇で。

その目だけが、生きていた。


「人間は、面白ぇ」

【神様サバイバル ルール】


・期間は30日間。


・毎日0時、世界から1つのものが消失する。

(消えたものは元に戻らない)


・消失は全世界共通で発生する。


・各参加者は1つだけ「防衛キーワード」を設定できる。


・防衛キーワードは、消失の影響を“自分に限り”無効化する。

(他者には影響しない)

new 消滅ワード外にも設定は可能


・防衛キーワードは変更不可。


・30日間生存した者には報酬が与えられる。

new 報酬は想像しうる事なんでも可能。

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