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30話 神様通話

【神様通話】


・個別スクリーンにて誰でも通話可能。

・通話料10秒=寿命1年

・神と1対1。通話内容は周りに届かない。

・神は嘘をつかない。

黒い空間だった。


どこまでも。

果てがない。

床だけがある。


自分が立てる程度の、最低限の足場。

その先は、闇。


そして。

いた。

神。


人の形をしている。

けれど、人間ではないと一目で分かる。


存在の“輪郭”が、おかしい。


『やぁ』


笑っている。


『不知火焔』


『人生、楽しんでるかい?』


不知火は、神を睨んだ。


「……お前次第だ」


神が吹き出した。


『あはは』


『責任転嫁だ』


『よくないなぁ』


腹立たしいほど、軽い。


「質問する」


『どうぞ』


「神様サバイバルの目的はなんだ」


神は首を傾げた。

少し考えるように。

でも、すぐに答える。


『知りたいんだ』


「……何を」


神が笑う。


『人間ってさ』


『今より』


『物がない方が幸せなんじゃないか』


『ルールがない方が幸せなんじゃないか』


『感情がない方が幸せなんじゃないか』


一拍。


『それは本心だよ』


不知火は眉をひそめる。


「……くだらない」


神は肩をすくめた。


『そう?』


『でも、君たちっていつも』


『不満そうじゃん?』


『仕事が嫌だ〜』


『税金高い〜』


『人間関係だるい〜』


『だったら減らしてあげようかなって』


軽い。

あまりにも。


「防衛キーワード」


不知火が切り替える。


「なんでもいいのか」


『もちろん』


「消滅ワード以外でも?」


『うん』


即答だった。

不知火の目がわずかに変わる。


「……命」


神が笑う。


『あぁ』


『いい質問』


『設定できるよ』


「……どうなる」


神が指を立てる。


『君が』


『“命”をどう定義するかによる』


「……曖昧だな」


『概念ってそういうものでしょ?』


「報酬は?」


神が嬉しそうに笑う。


1分経過。


『お楽しみ』


「答えろ」


『でもまぁ』


少しだけ前に出る。


『君が想像しえることなら』


『だいたい全部可能』


不知火の呼吸が、わずかに止まる。


「……死者蘇生は」


神の笑みが深くなる。


『できる』


その一言が、

胸の奥を直接叩いた。


桝田千夏(ますだちなつ)


一瞬。

名前が浮かぶ。

すぐに振り払う。


「……30日で終わるんだな」


『もちろん』


「本当に?」


『うん』


神は笑う。


『“このゲーム”はね』


違和感が残る。

だが、時間がない。


「リタイアで一番多いのは?」


『今のところ?』


神は空を見上げた。


『事故死』


「……事故」


『法律』


『電気』


『痛覚』


『色々あったからね』


一拍。


『でもこれからは』


少しだけ声が変わる。


『病死かな』


「……なぜだ」


『それは』


神が笑う。


『これからのお楽しみ』


不知火は舌打ちした。

十分だ。

切る。


これ以上、神と話すべきじゃない。

スクリーンへ手を伸ばす。

そのとき。


桝田千夏(ますだちなつ)


身体が止まった。

空気が凍る。

ゆっくり振り向く。


神は笑っていた。


『助けたかった?』


拳が握られる。


『蘇らせたい?』


爪が食い込む。

血が滲む。


『できるよ?』


甘い声だった。

優しい声ですらあった。

だからこそ、気持ち悪い。


「……」


心が揺れる。

ほんの一瞬。

ほんの一瞬だけ。


でも。

違う。

これは。

誘導だ。


「……乗るかよ」


低く吐き捨てる。

通話終了へ指を伸ばす。

神が最後に笑った。


『あ、ちなみに』


不知火の動きが止まる。


『君たちの中で』


『最初に死ぬのは──』


プツン。


切れた。



現実。


古民家。

息が荒い。

全身に汗。


楓が最初に駆け寄る。


「不知火!?」


廃人も立ち上がる。


「長かった」


「2分2秒」


スクリーン表示。


【通話時間:2分2秒】


【消費寿命:13年】


沈黙。


盗丸が引いた顔をする。


「……たっか」


医楽が不知火を見る。

じっと。


「……」


楓が、少しだけ眉をひそめる。


「……なんか」


言いづらそうに。


「ちょっと老けた?」


冗談みたいな言葉だった。

けれど。

誰も笑わなかった。


本当に。

ほんの少しだけ。

不知火の顔が、疲れて見えたからだ。


不知火は答えなかった。

ただ。

拳から流れる血だけを、じっと見ていた。

キャラクター年齢表


不知火焔(しらぬいほむら)(25歳)

水無月楓(みなづきかえで)(16歳)

音棘廃人(ねとげはいと)(14歳)

的場射檻(まとばいおり)(23歳)

医楽世捨(いらくよすて)(62歳)

盗丸頼斗(とまるらいと)(33歳)

黒闇破滅(くろやみはめつ)(30歳)

花魁夜(おいらんよる)(27歳)

金剛堕落(こんごうだらく)(32歳)

天涯帝(てんがいみかど)(40歳)

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