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23話 準備

紙の上に、いくつも言葉が並んでいた。

目的。防衛キーワード。報酬。

それぞれに、いくつかの候補。

けれど。


「……足りないな」


廃人が言う。

ペンを回しながら。


「足りない?」


楓が聞き返す。


「情報量が」


短く答える。


「10秒で1年」


一拍。


「無駄な質問、1つでもしたら終わり」


空気が少しだけ張る。


「じゃあ削る?」


楓が言う。


「絞るしかないでしょ」


「違う」


廃人が首を振る。


「削るんじゃなくて、“勝ち筋だけ残す”」


不知火が紙を見る。

並んだ言葉。


どれも必要に見える。

だからこそ、危ない。


「……優先順位をつける」


静かに言う。


「一番上は?」


楓が聞く。

間を置かずに答える。


「目的」


廃人も頷く。


「同意」


「このゲームが“何をさせたいのか”」


「そこ外したら、全部ズレる」


楓は腕を組む。


「でもさ」


少しだけ眉を寄せる。


「それ聞いて、答えてくれると思う?」


沈黙。

医楽が酒を一口飲む。


「神様、だろ」


ぽつりと言う。


「都合のいいことしか言わん」


その言葉が、刺さる。


「……じゃあ意味ない?」


楓が言う。


「いや」


不知火が否定する。


「“どう答えるか”に意味がある」


一拍。


「嘘でも、偏ってても」


「そこに意図は出る」


廃人が小さく笑う。


「さすが教師」


ペンを走らせる。


【①目的:このサバイバルの最終条件】


「次」


廃人が続ける。


「防衛キーワード」


「これ、まだ分かってないこと多すぎる」


指で項目を叩く。


「概念系の上限」


「適用範囲」


「共有の条件」


「……あと」


少しだけ目を細める。


「バグがあるかどうか」


楓が顔を上げる。


「バグ?」


「あるだろ」


即答。


「こんなシステム、完璧なわけがない」


その言い方は断定だった。


「穴を突くゲームでもある」


不知火は少しだけ考える。


「……じゃあ聞き方が重要だな」


「どう聞く?」


廃人が見る。


「“何ができるか”じゃなくて」


不知火が言う。


「“できないことは何か”を聞く」


一拍。


「制限の方が、本質が出る」


廃人が頷く。


「いいね、それ」


書き足す。


【②防衛キーワード:制限・適用範囲・共有条件】


楓が口を開く。


「ねえ」


少しだけ真面目な顔。


「報酬も重要じゃない?」


三人が見る。


「最後まで残ったら“なんでも”って言ってたけどさ」


「それ、本当?」


「本当じゃなかったら?」


一拍。


「全部、無意味になるよ」


沈黙。

それは、重い問いだった。

医楽が、少しだけ笑う。


「夢、見すぎだ」


ぶっきらぼうに言う。


「報酬なんてのはな、釣り餌だ」


「全部信じるな」


楓が少しだけムッとする。


「でも、ゼロじゃないでしょ」


「だから聞く」


不知火が言う。

短く。


「具体性」


「範囲」


「代償」


廃人が補足する。


「あと“例外”」


書き足す。


【③報酬:内容・制限・代償】


少し、間が空く。

紙は埋まってきている。


でも。

まだ、何か足りない。


「……なあ」


盗丸が口を開く。

壁にもたれたまま。


「その質問さ」


視線が集まる。


「全部、“勝つ前提”じゃねぇか?」


一瞬、止まる。


「……どういう意味だ」


不知火が聞く。

盗丸は肩をすくめる。


「生き残る前提で考えてる」


「でもよ」


一拍。


「死ぬ側の情報、いらねぇの?」


空気が、変わる。


「……例えば?」


廃人が聞く。

盗丸は指を立てる。


「“どのタイミングで死ぬやつが多いか”」


「“何が原因で脱落するか”」


「“運なのか、選択なのか”」


一つずつ落とす。


「負け方を知らねぇと、勝ち方も分からねぇだろ」


沈黙。

それは、今まで誰も触れていなかった視点だった。


「……なるほどな」


廃人が呟く。

少しだけ笑う。


「泥棒、いいとこ突くじゃん」


楓も小さく頷く。


「確かに、それ必要かも」


不知火は、ゆっくりとペンを取る。

書き足す。


【④脱落条件:死因・タイミング・傾向】


医楽が静かに言う。


「人はな」


一拍。


「死に方の方が、よく覚えてるもんだ」


誰も、何も言わない。

紙を見る。


四つ。

これが、今の“全て”だった。


「……時間は限られてる」


不知火が言う。


「優先順位を詰める」


「順番で聞く」


廃人が頷く。


「最悪、途中で切れてもいいように」


楓が深く息を吐く。


「10秒って、思ったより短いね」


盗丸が笑う。


「人生だってそんなもんだろ」


軽い。

けれど。

誰も否定しなかった。


「……決めるぞ」


不知火が言う。

静かに。


「これが、俺たちの“選択”になる」


誰も、目を逸らさなかった。

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