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22話 選ぶ為の準備

「……今、正面から来られたら、勝てないな」


廃人が言った。

静かな部屋に、その一言だけが残る。

誰も否定しなかった。


不知火も、医楽も。

現実だった。


銃。

人数。

経験。

どれを取っても、劣っている。


「だから、戦わない前提で考える」


不知火が言う。


「情報を取る」


「先に動く」


「避ける」


一拍。


「そのための、神様通話だ」


廃人が頷く。


「質問、ちゃんと組まないと無駄になる」


医楽は黙って酒を口に運ぶ。

止めない。


ただ、聞いている。


「じゃあ分担ね」


楓が言った。

空気を少しだけ軽くするように。


「私は食料調達」


盗丸を見る。


「案内して」


盗丸が肩をすくめる。


「いいけどよ」


少しだけ目を細める。


「逃げるかもだぜ?」


「逃げないでしょ」


楓はあっさり言う。


「私いるし」


一拍。


「見張り役」


その言い方は軽い。

でも。

理由はそれだけじゃなかった。


「……色々いるしね」


小さく付け足す。

誰も突っ込まない。

盗丸だけが、少しだけ口元を歪めた。


「了解、お嬢ちゃん」


不知火、廃人、医楽が残る。

テーブルに紙を広げる。

ペンを置く。


「まずは目的だな」


廃人が言う。


「神様サバイバルの“クリア条件”」


「何をもって生き残りなのか」


不知火が頷く。


「次」


「防衛キーワード」


廃人が続ける。


「どこまで拡張できるのか」


「“命”とか選んだらどうなるのか」


「概念系の上限」


ペンが走る。


「あと報酬」


不知火が言う。


「具体性が必要だ」


「何でも、は信用できない」


医楽が小さく笑う。


「神なんてのはな、言葉遊びが好きだ」


三人の間に、緊張が走る。


これは。

ただの会話じゃない。

寿命を削る“選択”だった。


一方。

楓と盗丸は街を歩いていた。


静かだった。

昼なのに、人の気配が薄い。


「この辺だな」


盗丸が指をさす。

一軒の家。

鍵は、ない。


ドアはそのまま開く。

中に入る。

荒らされた跡はある。

でも。


「……残ってる」


楓が呟く。

棚に、缶詰。

レトルト。

水。


「金目のもんだけ抜いたからな」


盗丸が言う。

楓がちらっと見る。


「……あんたほんとに、そういうのしか盗らなかったのね」


「癖でな」


軽く返す。


「お嬢ちゃん、いいとこの育ちだろ」


「え?」


楓が眉を寄せる。


「急になによ」


盗丸は肩をすくめる。


「おれはよ、昔から貧乏でな」


棚を見ながら言う。


「飯なんか、そこらの草でも虫でも食ってた」


「人は、意外と死なねぇ」


一拍。


「だからよ」


少しだけ笑う。


「金の方が価値あるって思っちまうんだよ」


楓は少しだけ黙る。

その価値観は、自分とは違う。


でも。

否定もしなかった。


「……なるほどね」


小さく言う。

そのとき。

盗丸が別の部屋を覗く。


「お」


振り返る。


「こっちもあるぞ」


楓が覗く。

服。

タンス。


「制服もあるな」


一拍。


「あと……」


少しだけ言い淀む。


「生理用品とかも」


楓の動きが止まる。


「……」


盗丸は、何でもないみたいに言う。


「使えよ、必要だろ」


楓は少しだけ目を逸らす。

そして。

小さく言った。


「……ありがと」


盗丸が笑う。


「泥棒はな」


「色んなとこにアンテナ張ってねぇと、生き残れねぇんだよ」


軽い口調。

でも。

そこには積み重ねがあった。


「……気が利くのね」


楓が言う。


「褒めてる?」


「半分ね」


少しだけ笑う。

空気が、少しだけ柔らかくなる。


袋に食料を詰める。

必要なものを持つ。

二人は外に出る。


「戻るか」


「うん」


歩き出す。

さっきより、距離が近い。

言葉は多くない。


でも。

さっきまでとは、違っていた。


古民家。

戻ると、不知火たちはまだ話していた。

紙には、いくつもの項目が並んでいる。


「……いい感じじゃん」


楓が言う。

袋を置く。

食料が増える。

それだけで、少しだけ安心する。


「収穫あり」


盗丸が言う。


「ちゃんと仕事してきたぜ」


廃人が頷く。


「助かる」


不知火は紙を見る。


そして。

ゆっくりと顔を上げる。


「……これで準備はできる」


一拍。


「問題は」


視線が集まる。


「何を聞くか、だ」


その答えで。

この先が変わる。


全員が、それを理解していた。

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