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17話 施錠不可

朝の空気は、妙に乾いていた。

窓の外では車の音が続いている。


先日までなら日常の一部だったはずの音が、

今は別の意味を持っていた。


奪う者。

探す者。

狩る者。

そういう音だった。


不知火たちはリビングに集まっていた。

的場の姿は、まだない。


「……で、問題はこれ」


廃人が玄関を指差す。

ドア。


そこにあるはずの鍵は、もう意味を持たない。

回しても閉まらない。


掛けても守れない。

ただの飾りだった。


「施錠不能」


廃人は淡々と言う。


「つまり、誰でも入ってこれる」


楓が腕を組む。


「最悪じゃん」


「ここ三階だしね」


窓の外を見る。

十階建てマンション。


不知火の部屋は三階。

飛び降りれば無事では済まない高さ。


階段も廊下も一つ。

出口は玄関だけだった。


「攻め込まれたら詰み」


廃人が言う。


「逃げ道ゼロ」


不知火は黙って玄関を見る。

言われるまでもなく分かっていた。


ここは拠点であり、

同時に袋小路でもある。


「じゃあ、どうするの?」


楓が聞く。

誰もすぐには答えない。

打開策が、ない。


「……物理で塞ぐしかないな」


医楽が言った。


「鍵が駄目なら、物で止める」


それが現実だった。

棚を動かす。

机を寄せる。

ソファも押す。

玄関前に家具を積み上げていく。


ロープを取っ手に巻きつけ、

壁の金具へ固定する。


見た目は酷かった。

けれど、何もしないよりはましだった。


「……文明レベル下がってない?」


楓が汗を拭きながら言う。


「四日で中世」


廃人が返す。

不知火はようやく小さく笑った。


そのときだった。

外からサイレンが聞こえた。

全員がベランダへ向かう。


下の道路。

パトカーが走っている。

だが、警察の動きではなかった。


窓から腕を出し、

酒瓶を振り回す男。


荷台のトラックには笑う男たち。

刑務所の作業車まで混じっている。


「……囚人か」


廃人が呟く。

楓が目を細める。


「でも、あれ」


指差す。

先頭のパトカー。


ヘッドライトが点いていた。

この世界で、本来ありえない光だった。


「……電気か」


不知火が言う。


「楓だけじゃない」


誰かが防衛キーワードに“電気”を設定している。

それも複数。

街のどこかで。


「あいつら厄介だね」


廃人の声が低くなる。


電気持ちが敵なら、

車も機械も武器になる。


道路の向こう。

囚人たちの車列が一瞬止まる。

何かを見つけたらしい。


その先に、一人の男がいた。

顔は白塗り。

赤い鼻。

大きく裂けた笑顔のメイク。

服は派手な原色。


サーカスのピエロだった。

誰もいない歩道で、

一定の方向だけを向きながら、

ムーンウォークをしている。


見えない壁に手を当て、

風船を捻り、

犬を作り、

また拍手する。

観客は、いない。


「……なんだあいつ」


トラックの荷台から囚人が笑う。


拳銃を向ける。

パンッ。


銃声。


弾は頬をかすめ、後ろの壁を砕いた。

だが。


ピエロは瞬きもしなかった。


そのまま、

何事もなかったように帽子を取り、

見えない客席へ礼をする。


「うぜぇ、もう一発」


隣の囚人が腕を掴む。


「やめとけ」


「……は?」


「ああいうのは、完全にイカれてる」


視線を逸らしながら言う。


「指示は飯、酒、女、あと刑務官狩りだ」


「弾を無駄にすんな」


車列は再び動き出す。

ピエロだけが残る。


白昼の道路で、

一人きりの拍手を続けていた。

ベランダで楓が小さく言う。


「……この街、変なの増えてない?」


誰も否定しなかった。


──


その頃。


街の地下。

マンホールの下。

下水道の一角に広がる空間。


段ボールの壁。

拾われた家具。

ランタンの火。

地上とは別の街だった。


ホームレスの一人が駆け込んでくる。


「天涯さん!」


「上から人が降ってきた!」


「死にかけてます!」


中央で座っていた男が顔を上げる。


天涯帝(てんがいみかど)

裸足の王。


ゆっくり立ち上がる。

運ばれてきた男を見る。


血まみれ。

脇腹に銃創。

気を失っている。


だが、その顔を見た瞬間。

天涯は笑った。


「……なるほど」


しゃがみ込み、

その顔を覗き込む。


「これも運命か」


少しだけ、昔を思い出すように目を細める。


「恩は返さなきゃなぁ」


倒れていたのは、

的場射檻(まとばいおり)だった。

現在

不知火陣営

不知火焔(しらぬいほむら)(元教師)

水無月楓(みなづきかえで)(女子高生)

音棘廃人(ねとげはいと)(中学生)

的場射檻(まとばいおり)(武器オタク)退場中

医楽世捨(いらくよすて)(医者)


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― 新着の感想 ―
無秩序から秩序が現れましたね・・・! 四人の王に、不知火たちはどう立ち向かうんでしょうか? 私の好きな的場は、天涯の配下になるんでしょうか?それとも、不知火たちと合流するんでしょうか?楽しみです!!
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