黒VS蒼
「第一試合――黒クラス対蒼クラス、開始ィィィ!」
リカルド先生の実況が、闘技場の結界に反響する。観客席は期待と嘲笑が入り混じったざわめきでいっぱいだった。
「黒クラス、どうせ三分だろ!」
「蒼の三人、相性抜群だからな!」
僕――ルカ=ヴォイドは喉がからからに乾き、剣を握る手が汗ばむ。
(やれるのかな……いや、やらなきゃ……)
《ビビんなよ、相棒。最高の舞台が整ってる。後は立つだけだ》
腰のネメシスが、いつも通り涼しい声で煽ってくる。
◇
「蒼クラス代表!」
リカルド先生が高らかに叫ぶ。
「氷の戦術家、ラース=ヴァレンティン! 水の緻密な制御、リリス=エルダ! 雷の爆発力、リーナ=エルダ!」
青いマントを翻し、三人は等間隔に広がった。双子の姉妹は手を取り合い、すぐに流れるような魔力を響かせる。
「対する黒クラス! 虚無の異端児、ルカ=ヴォイド! 炎の奔放者、ブラン=クローネ! 土の守護者、マルコ=ギルマン! 補欠は癒しの光、ティア=アーデルハイト!」
「……補欠って呼び方なんかやだな」ティアが小声でぼやく。
「お前は切り札だって」ブランが笑う。
「切り札は最後まで使わないもんだろ」マルコが茶化す。
でも観客席から飛んでくるのは冷笑ばかりだった。
「黒が勝てるわけねー!」
「虚無(笑)、また事故起こすぞ!」
「……見返してやろうぜ」ブランが小さく吐き捨てる。
「そ、そうだね……」僕は剣を握り直した。
ゴォン――鐘が鳴り響き、試合が始まった。
◇
「氷結――陣形展開」
ラースが床に氷紋を走らせる。白い霜が瞬く間に広がり、僕たちの足元を滑らせた。
「流れを整えて――」
リリスが水膜を張り巡らせ、滑走路を完成させる。
「そこに雷を落とす!」
リーナの指先から、紫電が弾け飛んだ。
氷で足場を奪い、水で勢いを乗せ、雷で撃ち抜く――三人の連携は完璧だった。
「くっ!」僕は剣を構えるが、動けない。
「マルコ、土壁だ!」
「わ、分かってる! ほいっ!」
土の壁がせり上がる。だが濡れた瞬間、雷が走って砕け散った。
「ブラン、炎で!」
「逆効果だ! 氷に押し負ける!」
押される。ブランの火は凍り、マルコの土は砕かれ、僕は虚無を使おうにも狙えない。
(僕、何もできてない……!)
《考えるな、掴め。虚無は“感覚”で使え》
「感覚って……無茶言わないで!」
氷槍が迫る。咄嗟に手が出た。黒いざわめきが指先にまとわりつく――。
ぱきん、と音が消えた。氷が、消えるようにほどけた。
「えっ!?」「消えた!?」
リカルド先生が叫ぶ。
「ルカ=ヴォイド、氷槍を消し飛ばしたぁぁ!」
《な? 掴めば消える》
(簡単に言わないで!)
◇
「姉さん、次は斜流」
「了解」
双子が手を合わせ、水と雷を編み上げる。さっきとは違う流れ、結び目がズレている。
「ルカ、右!」
「左も来る!」ブランとマルコの声が重なる。
「う、うん!」
必死に剣を振ると、黒い点が一瞬だけ走り、水雷がほどけた。
「今の……僕が?」
「ナイスだルカ! “結び目”だ! そこ狙え!」マルコが叫ぶ。
「結び目?」
「多分!」
(多分って言った!?)
《合ってる。信じろ》
「ブラン、援護!」
「おう!」
火球が双子の視線を割る。僕は剣先で結び目を突いた。
水雷がしゅんと消える。観客席がざわめく。
「やれるじゃんか!」ブランが吠えた。
「ボクも合わせるよ!」マルコが土の槍を放つ。
僕たちの呼吸が少しずつ合い始めた――が。
「甘い」ラースが氷の結界を張る。空気がさらに冷え込み、体が震える。
「段階を上げる」
「了解」
「了解」
水が刃に編まれ、雷が糸のように通される。氷は鞘になり、目に見えない剣戟が構築されていく。
「やば……」僕の膝が震えた。
「ルカ、下がって!」ティアが控え席から叫ぶ。
「下がれない! 僕が消さなきゃ……!」
《逃げたいか?》
(逃げたい!)
《でも行け》
(行く!)
自分でも笑ってしまった。膝は笑ってるのに、心はもう逃げていない。
「ブラン、マルコ、合わせて!」
「任せろ!」
「了解!」
僕ら三人が呼吸を揃えた瞬間、双子の“刃”が放たれる――。
結界全体が震え、光と音が交錯した。
◇
次回、黒クラスの反撃が始まる。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ついに始まった「黒 vs 蒼」。
氷・水・雷の連携に押されっぱなしの黒クラスですが、ルカが初めて“虚無の力”を仲間に合わせて使うシーン、いかがでしたか?
まだ「偶然」に近い一手ですけど、確かに彼は前に進み始めました。
次回はいよいよ反撃。
黒クラスがチームとして噛み合った時、蒼の連携にどう挑むのか……!
ぜひ楽しみにしてください!




