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黒VS蒼


「第一試合――黒クラス対蒼クラス、開始ィィィ!」


リカルド先生の実況が、闘技場の結界に反響する。観客席は期待と嘲笑が入り混じったざわめきでいっぱいだった。


「黒クラス、どうせ三分だろ!」


「蒼の三人、相性抜群だからな!」


僕――ルカ=ヴォイドは喉がからからに乾き、剣を握る手が汗ばむ。


(やれるのかな……いや、やらなきゃ……)


《ビビんなよ、相棒。最高の舞台が整ってる。後は立つだけだ》


腰のネメシスが、いつも通り涼しい声で煽ってくる。



「蒼クラス代表!」 


リカルド先生が高らかに叫ぶ。


「氷の戦術家、ラース=ヴァレンティン! 水の緻密な制御、リリス=エルダ! 雷の爆発力、リーナ=エルダ!」


青いマントを翻し、三人は等間隔に広がった。双子の姉妹は手を取り合い、すぐに流れるような魔力を響かせる。


「対する黒クラス! 虚無の異端児、ルカ=ヴォイド! 炎の奔放者、ブラン=クローネ! 土の守護者、マルコ=ギルマン! 補欠は癒しの光、ティア=アーデルハイト!」


「……補欠って呼び方なんかやだな」ティアが小声でぼやく。


「お前は切り札だって」ブランが笑う。


「切り札は最後まで使わないもんだろ」マルコが茶化す。


でも観客席から飛んでくるのは冷笑ばかりだった。


「黒が勝てるわけねー!」


「虚無(笑)、また事故起こすぞ!」


「……見返してやろうぜ」ブランが小さく吐き捨てる。


「そ、そうだね……」僕は剣を握り直した。


ゴォン――鐘が鳴り響き、試合が始まった。



「氷結――陣形展開」


ラースが床に氷紋を走らせる。白い霜が瞬く間に広がり、僕たちの足元を滑らせた。


「流れを整えて――」


リリスが水膜を張り巡らせ、滑走路を完成させる。


「そこに雷を落とす!」


リーナの指先から、紫電が弾け飛んだ。


氷で足場を奪い、水で勢いを乗せ、雷で撃ち抜く――三人の連携は完璧だった。


「くっ!」僕は剣を構えるが、動けない。


「マルコ、土壁だ!」


「わ、分かってる! ほいっ!」


土の壁がせり上がる。だが濡れた瞬間、雷が走って砕け散った。


「ブラン、炎で!」


「逆効果だ! 氷に押し負ける!」


押される。ブランの火は凍り、マルコの土は砕かれ、僕は虚無を使おうにも狙えない。


(僕、何もできてない……!)


《考えるな、掴め。虚無は“感覚”で使え》


「感覚って……無茶言わないで!」


氷槍が迫る。咄嗟に手が出た。黒いざわめきが指先にまとわりつく――。


ぱきん、と音が消えた。氷が、消えるようにほどけた。


「えっ!?」「消えた!?」


リカルド先生が叫ぶ。


「ルカ=ヴォイド、氷槍を消し飛ばしたぁぁ!」


《な? 掴めば消える》


(簡単に言わないで!)



「姉さん、次は斜流」


「了解」


双子が手を合わせ、水と雷を編み上げる。さっきとは違う流れ、結び目がズレている。


「ルカ、右!」


「左も来る!」ブランとマルコの声が重なる。


「う、うん!」


必死に剣を振ると、黒い点が一瞬だけ走り、水雷がほどけた。


「今の……僕が?」


「ナイスだルカ! “結び目”だ! そこ狙え!」マルコが叫ぶ。


「結び目?」


「多分!」


(多分って言った!?)


《合ってる。信じろ》


「ブラン、援護!」


「おう!」


火球が双子の視線を割る。僕は剣先で結び目を突いた。


水雷がしゅんと消える。観客席がざわめく。


「やれるじゃんか!」ブランが吠えた。


「ボクも合わせるよ!」マルコが土の槍を放つ。


僕たちの呼吸が少しずつ合い始めた――が。


「甘い」ラースが氷の結界を張る。空気がさらに冷え込み、体が震える。


「段階を上げる」


「了解」


「了解」


水が刃に編まれ、雷が糸のように通される。氷は鞘になり、目に見えない剣戟が構築されていく。


「やば……」僕の膝が震えた。


「ルカ、下がって!」ティアが控え席から叫ぶ。


「下がれない! 僕が消さなきゃ……!」


《逃げたいか?》


(逃げたい!)


《でも行け》


(行く!)


自分でも笑ってしまった。膝は笑ってるのに、心はもう逃げていない。


「ブラン、マルコ、合わせて!」


「任せろ!」


「了解!」


僕ら三人が呼吸を揃えた瞬間、双子の“刃”が放たれる――。


結界全体が震え、光と音が交錯した。

 



次回、黒クラスの反撃が始まる。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

ついに始まった「黒 vs 蒼」。


氷・水・雷の連携に押されっぱなしの黒クラスですが、ルカが初めて“虚無の力”を仲間に合わせて使うシーン、いかがでしたか?

まだ「偶然」に近い一手ですけど、確かに彼は前に進み始めました。



次回はいよいよ反撃。

黒クラスがチームとして噛み合った時、蒼の連携にどう挑むのか……!

ぜひ楽しみにしてください!


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