最下位からの反撃!始動!
「いっけぇぇぇぇぇッ!!」
ブランが吠え、大剣を振り下ろす。炎が刃を走り、氷壁に亀裂を刻んだ。
「ここだ!」
マルコが土の杭を飛ばし、ひび割れを広げる。
その一瞬――。
「ルカ、今!」ティアの声が飛ぶ。
僕は前へ飛び出した。
迫る雷水の刃。息を止め、剣を突き出す。
――黒い点。
空間に浮かぶ結び目を視認した瞬間、ネメシスが脳裏に囁いた。
《斬れ。存在ごと》
「はああああッ!!」
虚無の剣が奔る。
水雷が、一瞬でほどけるように掻き消えた。まるで糸が切れたかのように。
「なっ……消えた!?」
ラースの声が震える。双子も顔を見合わせ、初めて動揺を見せた。
「今だブラン!」
「任せろぉッ!!」
炎を纏った剣が氷壁を粉砕する。熱風が吹き抜け、観客席から歓声と悲鳴が入り混じった。
「マルコ!」
「わ、わかってるってぇ!」
マルコの土槍がラースの杖を弾き飛ばす。
隙を突き、僕は再び剣を振り下ろした。
黒い軌跡が双子の前に走る。
「きゃっ……!」
「ぐっ……!」
リーナとリリスの魔法陣が霧散し、二人は膝をついた。
「嘘だろ……蒼が、押されてる!?」
観客席がざわめきに包まれる。
ラースは残った氷壁を必死に張り巡らせるが――。
「うおおおおッ!!」
ブランの全力の一撃がそれを粉砕した。
氷が砕け散り、ラースの体が弾かれる。
「勝負あり!」審判の声が響く。
「第一試合、黒クラスの勝利!」
観客席が、しばし沈黙した。
そして次の瞬間――轟音のようなどよめきが爆発した。
「黒が……勝っただと!?」
「虚無……あれが虚無なのか!?」
「まさか蒼が負けるなんて……!」
僕は膝をつき、肩で息をしていた。全身の力が抜け、剣を支えるのがやっとだ。
《ククッ……やるじゃねぇか、相棒》
「……うるさいよ。でも……ありがとう」
不思議と、心の奥が少しだけ温かかった。
僕たちは、確かに勝ったのだ。
「勝者、黒クラス!」
審判の声が響き渡った瞬間、僕らはしばし呆然と立ち尽くした。
次に来たのは、観客席からの怒涛のざわめきだった。
「嘘だろ……蒼が負けるなんて!」
「虚無ってやっぱり反則だろ!」
「黒が勝つとか……世も末だな」
歓声もある。けれど、それ以上に冷笑や疑念の声が突き刺さった。
「……勝ったんだよな、俺たち」
隣でブランが拳を握りしめる。
「うん、勝ったよ!」ティアが涙ぐみながら笑顔を見せた。
「すっげぇ! やった! これ絶対歴史に残るって!」マルコが飛び跳ねる。
僕は……力が抜けて、その場に膝をついた。
(ほんとに、勝てたんだ……)
◇
控室に戻ると、熱気は最高潮だった。
「ルカ! お前、やべぇよ! 氷も雷も水も、まとめて消すとか反則!」
「ち、違うよ! たまたま……!」
「謙遜するなよ!」ブランが肩を叩く。痛い。
一方でマルコは落ち着かない様子だった。
「……なぁ、次は紅だろ? あれ絶対ヤバいって。俺、出るのやめとこうかな……」
「はぁ!?」ブランが噛みつく。「お前逃げんのかよ!」
「ち、違う! 俺が出たら絶対足引っ張るって!」
その言葉に、僕は静かに首を振った。
「……それでも、一緒に出てほしい」
「ルカ……」
「蒼に勝てたのは、みんながいたからだ。僕ひとりじゃ何もできなかった」
ブランが口角を上げる。
「ほらな。ルカだって言ってんだ、逃げんなよ」
マルコは観念したように頭をかき、ため息をついた。
「わーったよ! 俺だって男だしな! 最後まで付き合ってやるよ!」
「……ありがとう」心の底から、そう言えた。
◇
夜。寮の一室。
窓の外では月がぼんやりと光っていた。
「紅か……あの化け物ぞろいに、どう挑むかだな」ブランがベッドに寝転びながら呟く。
「俺たち、蒼に勝ったんだぜ? もしかしたら奇跡、もう一発くらい……」マルコは半分夢心地。
「奇跡なんて二度も起きないよ」僕は笑って否定した。
《フン、奇跡じゃねぇさ。力でねじ伏せる、それが虚無だ》
「力……」剣を見下ろす。
(僕に、それを使いこなせる日が来るんだろうか……)
ティアがそっと口を開いた。
「ルカさん。私は信じてます。あなたなら――」
その言葉に、不思議と胸が温かくなった。
「……ありがとう」
《ククッ、いいねぇ。信頼ってのは最高の調味料だ。相棒、次はもっと暴れてやろうぜ》
紅クラスとの戦いは、もう目前に迫っていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
黒クラス、まさかの蒼クラス撃破!
会場の空気も揺らぎましたが、本人たちもまだ信じられていないと思います。
蒼の緻密な連携を打ち破れたのは、ルカが「虚無の感覚」を少し掴み始めた証拠です。
ブランの豪快さ、マルコの泥臭い支えも光りました。
次回は紅戦!
ルカたちはエース級相手にどう挑むのか?




