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339.新たなスプラ、変わらぬスプラ

 今まで世話になったり世話したりの関係各社を回って色々新企画を手助けしたリック社長は、ようやく自社の新企画に取り組んだ。


 次回のスプラシリーズの企画は、異世界の記憶と無関係なものとなった。

 その「スプラオラクルム(神託)」の内容は…


 古代帝国滅亡後の戦雲渦巻く時代、天から戦乱を沈める命を受けた青年が10mの巨人に変身し、悪辣な盗賊や奴隷狩り、魔獣を討ち果たす。

 その活躍に人々が慕って小国を成す。


 これに目を付けた有力貴族が彼を取り込もうと金や女、果ては我が娘まで使って篭絡せんとするが、青年はその邪心を見抜き退ける。


 貴族の命令に従い忠義を誓う、悪人ではない軍勢と対峙する青年。

 やむを得ぬ戦いが始まるかと思われたが、彼は瞬時に貴族の本陣に現れ、これを取り押さえんとする。

 しかし魔導士の召喚した魔獣との対決となり、これに勝利。

 貴族は魔獣の餌食となり果てる。

 貴族の娘は我が命と引き換えに民と兵の助命を請い、青年は娘共々許す。


 こうして小国は成長し、ついに地域を統一せんとする王国と戦う。

 敵の王は相応の人物であり、戦いを避けんとする主人公は変身せず一騎打ちを求め、勝利する。


 巨大英雄ではあり、時に魔獣や竜も登場するが、あくまで歴史伝説ものの態を取っていた。

 主人公の発想で飛行機なども登場し、豪壮な宮殿や堅城の大破壊もある。

 更には、銀と赤のウェットスーツだけでなく、鎧装甲を胸、腕に付け、更に格闘戦、剣戟戦、魔法戦になると鎧部分の色が赤、青、黄に光って変色する。

 これは玩具でも再現される予定だ。


 なおこのパイロットフィルムの俳優は…

「お父さん!帰りました!」

「おー、ブライ、良い所に帰っ…」

「映画なら出ませんよ!」

「ちぇー」

 どうにも探検に向かった先々で、彼が出演したパイロットフィルムを見た女性陣が押しかけて色々苦労したそうだ。


「お父さんが演ればいいんですよ、まだ見た目若々しいし!」

「それいいわね!」

「俺は特撮がやりたいの!」


 結局王立学院映画学部の俳優志望者から安く募って本編部分を撮影した。


 これを放送するテレビ局も未定のまま製作し、数話のパイロットフィルムを売り込んだ。


******


 結果は各社とも

「未来感が全くない」

「今はSFの時代だ」

と拒否した。


「事前に相談して欲しかった」

「これが架空の宇宙の話なら」


 結局で完成した4話まで王立放送局で放送する事となったが、時間帯にも恵まれず宣伝も行われず、あまり反響は無かった。


「俺の実力はこんなもんかなあ」

 リック社長は軽くしょげて見せた。


 だが見ている人は見ているもので、マギカ・テラで何と50%の視聴率。

 どうも単純明快に強い王、というのが刺さった様だ。


 マギカ・テラ王立放送局が権利を買い、26回のシリーズ化を果たした。

 このあと主人公の若者は滅んだ帝国の落着だと噂され、その真偽に悩むもただの平民だと判明し、味方となってくれた仲間達との友情を深める。

 また世界を制覇する力を手に入れるよう周りから求められるが、他人を意のままに操るその力の恐ろしさを理解し、魔力を秘めた宝を粉砕する。


 それら試練の都度悪意の塊の様な魔人、魔獣が現れ、1/5というスプラシリーズの倍の縮尺で再現された古代建築の中で戦いが描かれる。


 なお、本編は幸運にも王立学院の学生たちがそのまま起用される事となり、彼らはこのシリーズを好演する事が単位習得の条件とされ、更に相応の出演料を貰えるまでになった。


 こうしてスプラシリーズは存続した。それも放送局を2度も変えて

 この反響にキリエリアでも放送を望む声が起こり、ヨーホーテレビではなく王立放送局のままで放送再開。


 なんと休日の朝という変わった時間帯ながらも40%を記録した。

 予定通り発光人形や、鎧部分の玩具も発売され、スイッチで光の色が変わる優れものとあって売れた。


「これがリックさんの実力ですよ?」

「命拾いしたよー」

「いや、主の作品には力があるのだ!」


******


 この新作「スプラオラクルム」が呼び水になったのか、スプラルジェントを大画面で見たいとの要望が沸き起こった。


 そこで

「いつかの時代、どこかの星で」

と、地球とは違う星を舞台に、未来感あふれる舞台での映画が企画された。


 争い合い、滅びを迎えつつあるその惑星の中、和解に尽力する正義感ある若者が主人公。

 しかし敵の裏切り者に撃たれ、命を落とす。

 これを侵略者の仕業と看破したスプラルジェントが彼を助ける。


 そしてこの星を救うため歴代のスプラルジェントが次々駆け付け、怪獣兵器と化した過去の人気怪獣を次々倒し、星の滅亡を救う。

 最後には惑星破壊兵器を打ち込まんとする敵の宇宙怪獣軍団と大激闘!

…という冒険活劇映画だ。


 スプラルジェント待望の銀幕デビューに、多くの関心が寄せられた。

 中身は幾度かテレビシリーズで繰り返されたものだが。


「テレビの再編集と同じじゃないか」

「スプラルジェント全員集合は過去何度も見た。別の切り口はないのか」

とヨーホー各社長は注文を付けようとしたが、

「この作品では地球と全く違った星が舞台で、衣装やセットなどのデザインが出色だ。

 平和で繁栄した星が一転して滅亡しかねない。

 そんな描写を見てみたいと思いませんか?


 目下製作中の『宇宙帝国の滅亡』にも、学ぶべきところが大きいと思いませんか?」


 マッツォ社長は出資と配給を諮ったが、却下された。

 これはヨーホー映画系列の社長陣が見る目が無かったのもあるが、他者作品に膨大な予算を捻出する余裕は、「宇宙帝国の滅亡」に予算をかき集めている最中のヨーホー映画には無かった、というのが正しい。


******


 これに異議を唱え、そしてチャンスととらえたものたちがいた。


 かつて閉館を覚悟した旧ジャイエン系劇場に二番館たち、今ではヨーホーの二次系列館として存続しているが、その小屋主がまず反発した。

 彼らの要望は却下され、ならばとトリック特技プロに直訴。


 かつての超大作「エクソダス」以来の有志劇場による連合配給網が組まれた。


 リック社長は既に異星社会のセットやミニチュアの製作に取り組み、中でも異世界の未来兵器は自らウハウハ言いつつ日付が変わるまで作っていた。

 こうなっては二人の夫人も咎められない。


 そして、正式な製作発表を待たずに第二スタジオ、広大なオープンセットで最終決戦の撮影が始まった。

 無論全額自腹である。


 久々に怪獣列車が郊外に向かい、それに気づいたクランの住民が手を振る。

「やる気出るねえ!」


 極大魔法ロケットが林立する敵基地を舞台に、怪獣軍団と9人、最新のスプラルジェント、スプラオラクルムも交えての激闘だ。


 パノラマ画面を活用した激闘が演出された。


 二人、三人のスプラルジェントが息を合わせてトンボを切る後ろを爆発が追って来るアクション。

 走って来て並んで光線を放つスプラルジェントたち、切り返して怪獣軍団にそれらが命中、爆発!更にそのまま一撃を加えるスプラルジェントたち!


 そして極大魔法搭載前に怪獣たちになぎ倒され、連鎖的に爆発するロケット群、奇抜なデザインの高層建築!


 躍動感と光線と爆発、格闘とミニチュア破壊が呼応する心地よいカットが続く!


 最後の惑星破壊兵器を粉砕する場面は地下での別撮りとなるが、これは国際テレビに第一スタジオを貸しているので後日撮影だ。


 この最終決戦の撮影は数日に分けて行われ、即日ラッシュが現像され、都度

「ウヒョー!カッチェカッチェ、カッチェー!!」

とリック社長が転げまわった。


「いつものリックだな」

「共演噺になると必ずこうだからな、こっちもやり甲斐があるというものだ」

「あはは!お父さん大人げないねー」

 成人も近くなったブロムちゃんが笑いながら呆れる。


 第二スタジオでの撮影、最終日は新たに作った未来都市のセットを据えて他の人気怪獣のヌイグルミによる破壊シーン。


 これは本編で使うか解らない、予告編用のイメージカットだ。


 夕方から夜間にかけては、最終戦争に向かう未来兵器が離陸し戦場に向かうカットが撮影された。


 未来の3連装砲塔戦車が砲撃し、ロケット基地が被弾し爆破するカットなども撮影された。


「これ、70mmにしないの勿体なくね?」

「全編70mmだと製作費2億。

 この内容じゃとても20億は稼げないよ」


 リック社長の見立てだと行って8億程度。

 製作費は掛けられて1億、出来ればそれ以下。


 音楽は音楽祭の録音や過去の流用。

 その辺の音あては音楽から逆算してリック社長自ら編集をやるとの事。


「デシアスに任せればいいのよ」

「一緒にやるよー。

 音楽ありきの編集も楽しいよ?」

「ハイハイ」

「嬉しそうですわね!」

「こういうの好きなんだよー」


 こうしてお祭り映画「スプラ9戦士・惑星を救え」のパイロットフィルムが編集された。


 例によって仮の本編は未だ20代にしか見えない、そろそろ50近い英雄チーム一同がアチコチで何役かこなしていた。


******


 そして製作発表。

 既に元ジャイエン、二番館系列は封切り配給を宣言。

 披露されたパイロットフィルムは概ね喝采を以て受け入れられた。


 その反面

「過去何回かこの展開あったなあ」

「前のシリーズの最後もこんな感じだったな」

 見ている人は見ているものだ。そういう鋭い評価もあった。


「しかしワイドで見るアクションは凄かった!」

「未来的なデザインは斬新じゃないか?」

 好意的な意見も多かった。


 結局王立放送、キリエリア2で宣伝される事になった。


 一方、ヨーホー映画は「スプラレグリナス」を同時期にぶつけて来た!


「リックの映画をぶつけてくるって、正気?!」

「恩を仇で返すとはこの事か!」

「いやいや。マッツォさんはこのお祭りを盛り上げたかったんでしょ?」


 確かに公開は僅かにずれていて、熱心なファンも両作に関心を持つ層も順番に楽しめる様になっていた。


 そしてテレビやラジオでも話題になった。

「世界映画祭特別賞、ノミネートの常連リック監督作品同士の対決!」

「大手系列ではなく有志二番館連合、二度目の配給協定!」

 やや業界ネタ寄りながらも、この珍しい現象に世間は関心を寄せた。

 しかも「スプラ9戦士」の方が先である。


 その後、

「お互いの入りがトントンだったらヨーホーの劇場と上映作品を取り換えようって言われてるんですよ」

と劇場主から教えられた。


 そして試写会の評判も上がって来た。

 好評である。それを契機にヨーホーテレビでも宣伝を始めてくれた。


「やっぱり。マッツォさんが色々調整してくれたんだよ」

「はは。あの人、前のオッサンの息子にしちゃあ、出来た人だよなあ」

 アックス氏が笑って言った。

 リック社長は心の中でマッツォ社長に感謝したのだった。


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