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337.リックの後片付け

「スプラトリテス」終了、その祝賀会を機に、リック社長は自社作品を一旦止めた。


 マッツォ社長も人気作品が中断する事に反対する周囲の声に対して

「今急かすべきじゃない、全ては彼の心次第なんだ」

と諫めて回った。


 とりあえず言い訳程度に「スプラレグリナス」の70mm再編集だけは決めた。

 そしてリック社長は他社に声をかけて廻った。


******


 ショーウェイのトレート部長が

「凄い特撮が出来ればやりたい企画があるんですが」

と、マンガ家のペトロ氏とインス監督と一緒に企画を紹介した。

 七人のペルソネクエスが巨大戦艦と巨大ロボットを駆使して戦う物語だ。


 しかしリック社長は予算を見て

「最初の三回で特撮予算は終わりですね」

と答えた。


「じゃあ後は本編監督がロボットを撮れば?」

「それは…特撮といえるんでしょうか」

「ですけどそれでも実現できるなら、やっぱり新しい事やりたいですからねえ」

 トレート部長は、ペルソネクエスシリーズが終了した後も絶えることなく、低予算ながらもペトロ氏と変身英雄シリーズを続けて来た。


 中には等身大のマンガ的なゴーレムが子供達のために頑張る、アニメ的なドラマシリーズまで放送され、結構な人気を博していた。


「ナントカ最初の予算抑えるけど」

「是非お願いします!」


 そしてペルソネクエスではなく、色違いの5人の変身英雄を主人公として

「巨大な力が五人集まる!今見せる最強の力!」

を名乗り口上とする

「隠密騎士団クインケロス(五英雄)」

が企画された。


 ペトロ氏が

「亡国の騎士5人が国を滅ぼした悪の軍団を滅ぼすべく、諸国条約の最精鋭部隊として未来兵器とゴーレムを仕込んだ強化鎧で戦う」

と物語の骨子をまとめた。

 続いて五人のペルソネクエスよりスマートな、そして色鮮やかな男女五人のデザを書いた。

 そして巨大戦艦、巨大ゴーレムをデザインした。


「スバラシー!」

 トレート氏が感激した。


 しかしこのデザイン画の複製を自宅に持ち帰ったリック社長。

「これ、私達に似てない?」

 デザイン画の中の変身前の人物像は正にアックス、デシアス、セワーシャ、アイディー、リックの五人だった。

「ムキー!ダメダメダメー!」

「もうあきらめようよディー。有名税だよ」

「カワイくってステキよ?」

「そ、そう?」

「あの発明少女っぽいな」

「やっぱイヤー!!」

 アイディー夫人の絶叫は無視された。


 なお、「ペルソネクエス」の方はゴドランとスプラルジェント復活の流れに乗って復活の要望が強く寄せられ、後に復活を果たす事になった。


 拙速を重んじるショーウェイ、一ケ月後には戦闘ゴーレムにゴーレム輸送戦艦、五人のスーツも作り上げた。

「ありがとう!リックさん!あなたの支援で!」

「違う違う!これはショーウェイさんの企画だって!」

「これから撮影開始ですからねえ、あの予算で」


 低予算での撮影を前に、インス監督がウンザリした顔で嘆いた。


******


 こうして極めて単純明快な等身大英雄活劇、「隠密騎士団クインケロス」の製作が始まった。


 放送開始3回の特撮はインスさん、合成はケミさんが協力。

 特美、主演の戦艦やゴーレムのヌイグルミはリック社長自ら手掛けて製作費を大幅に縮めた。

 それぞれFRP製で、戦艦は重厚感を出すため凹凸や汚し塗装が強く、ゴーレムは銀、黒に赤と黄色の差し色が入って、光沢を放っている。

 無論、玩具はトリック玩具から発売される。


 兎に角1カット1カットが短く、絵がポンポン飛んで行く。

 特撮もそうだが本編の格闘や剣技もそうだ。

「流石ショーウェイ、活劇のスピード感は業界最高だねー」

 リック社長は自社にないスピード感とアクロバティックなアクションに目を廻した。


 更に、音楽のユニヴァ・ポン師の演奏を聴くと

「ムホー!ギュフォー!ボンバボンバ!」

狂った。

「カッケー!」


「リックさんがこんなに俺たちの貧乏な作品を喜んでくれるなんて!」

「あのですねトレートさん、あの人は最初っからこういうのが大好きな人なんですよ」

「そうですけど!嬉しい、嬉しいんです!」


「隠密騎士団クインケロス」、基本はペルソネクエスそのまんまな作品なのだが、少し軍隊や隠密捜査の要素を加えながら、最後は造成地で大格闘。


 敵怪人が負けると何故か巨大化!そして戦艦出動ゴーレム発進!

 敵巨大怪人とゴーレムの戦いの末、敵怪人爆散!

 実に単純だった。


 なお、最初三回こそスプラシリーズ的なミニチュア特撮が行われたが、それ以降は本編監督が短期間で撮影した。

 特撮セットというか、狭いスタジオに発泡樹脂製の岩を置いただけの舞台で刀や槍を振り回す。

 ビルや家屋のミニチュアは数回に1回、怪人とゴーレムの後ろに並べられるだけであった。

 合成もほとんど二重露出かスクリーンプロセス、そしてエリアル合成。


「こんなんでいいのかなあ?」

 インス監督は悩むが。

「いいんだよこれでも」

 リック社長は何故か絶対の自信を持って答えた。


 トリック玩具が英雄、ゴーレム、戦艦の金属製の玩具を発売する。

 王都はじめ各地に建設された子供の楽園、いや大人も魅了する様々な遊具のある「遊園地」での、劇中で華麗な殺陣を披露する殺陣演劇集団によるショー。


 これらを準備して、いよいよ放送開始。


 休前日の夕方に関わらず、また王都4局で一番後れを取っていたショーウェイテレビながらも45%の奮闘。


 そして金属製戦艦、ゴーレム玩具が売れた。

 更に遊園地の英雄ショーも多くの家族連れが押し寄せた。


 製作費の回収は余裕だった。


「リックさん、助言頂いたけどそちらに何も恩返しが出来ないんですが?」

「成功する事が恩返しと思って下さい」

「ぐううッ!!」

 例によってトレート氏は泣いた。


 この変身騎士団シリーズはその後半世紀続く、世界各国で知らないものはいない一つの文化となっていく。


 この成功を契機に、ショーウェイは新たな変身英雄像を広げていく。

 リック社長が導入したビデオ合成も安価で早いという理由で積極的に取り入れた。

 エリアル合成も多くの変身英雄の戦いを彩る中、これを駆使する若いスタッフの努力もあって加速度的に進化していくのであった。


******


 続いてリック社長はマギカ・テラへ。


「OVI」を好評の内に39回で完結させた17th世紀プロ。


 キリエリア王立放送局だけでなく、ゴルゴードやアモルメはじめ多くの放送局から続編を求める声が上がり、多額の予算を得た。

 彼らはそれを元手に、如何に1799的な作品を撮れるか考え、「コスモ1700」を企画し、やって来たリック社長に実現のヒントを求めて来た。


 しかし、彼が意見すべきところはすでになかった。

「ウヒー!カッチェー!これ完成品早く見てぇ~っ!」


「1799」のデザインで洗練された宇宙船や、核爆発で宇宙をワープ速度で彷徨う宇宙都市のデザインにリック社長は狂喜して転げまわった。


「あの~、リックさん?」

「あーゴメンね。

 敢えて何か言うなら、この、最初に宇宙基地にメッセージを送った存在。

 最後までキッチリ描いてね?

 あと、ノクアさん。健康診断に行く様に言って、費用は17th世紀プロ持ちで」


 作曲家のノクア師は心臓疾患の兆候があり、最高の治療と生活指導を受けた。


 これを機に17th世紀プロ関係者は健康保険と定期診療、医療指導を受け、マギカ・テラの魔力の高さもあって相当に長寿を誇ったのだった。


 こうしてほぼリック社長の関与なしで誕生した企画は。


 宇宙基地プリムス、それは宇宙都市と言ってもいい規模のものだった。

 月面で行われた極大魔法の実験が失敗、壮絶な爆発のため地球と月との重力均衡点をはじき出される。

 その際、推進制御システムが動作異常を起こし、太陽系を離れ宇宙空間に空いた次元の穴「ワームホール」を通過し、未知の宇宙を彷徨う事となった。


「なんとなく1799っぽい感じでいいねえ」

「この後色々な惑星と接近しては、遠ざかってしまうのですが」

「その辺はガストローXVっぽいねえ」

「学術的にどうなのかと」

「超光速推進機関が勝手に起動し、接触した惑星から離れてしまうってオチしかないね」


 嘗ての内乱を機に立ち上げた17th世紀プロも、今やリック社長の手を離れ、マギカ・テラの地で着実に独自の道を歩んでいる。


******


「ママ?」

「キャピーち~ゃ~ん~!」

 マギカ・テラですっかり人気人形劇スターになったキャピーちゃん、いや、もう成人を過ぎて20歳になったキャピー嬢。

 今回の打ち合わせに合わせてやってきたリック一家、英雄チームと久々の対面。


「また人形特撮やるの?」

「わかんないよお、そのうちあるかもねえ~?」

「そんならね、こういうのあるよ?」


と、床下からの操作で顔の表情を操作する人形。


「これだと結構人に近い芝居も出来るのよ?」

 リアルな人形が顔の表情を変える。眉、頬、口元が動き、表情を変えていく。


「いつかこれで面白い人形特撮できたらいいね!」

 健気に研鑚を重ねていた我が娘に、

「ひょえ~!流石キャピーちゃ~ん!」

とアイディー夫人が抱き着いた!


「うげ、ウザい~!」

「ひぃ~!酷いよ~!」

「あんなにディーの事大好きだったのに、変わるものですねえ」

 ちょっと酷い事言ったかとしょげるキャピー嬢。


「ははは、ちょっと寂しいね。

 でも、この人形は色々使えるぞ!」


「パパの仕事に使える?」

「今はまだ17th世紀のみんなは人間ドラマをやるよ。

 でも、その後に人形劇に戻るかも知れないよ?」

「そうだったら、私頑張るね!」


「かわい~よ~!あたしのキャピーちゃ~ん!」

「やっぱママウザー!」「酷い~!」


「コスモ1700」の撮影は効率化を進めつつ大予算を確保し、結構な規模でスタートした。


 主役となる宇宙都市プリムスは巨大な鉄骨の上に推進武、動力部、居住区、連絡艇発進区、工場区などを張り付けた巨大な宇宙船だ。


 地球を離れ、次元の裂け目ワームホールに吸い込まれた後、未知の宇宙を時に超高速移動しつつ、時に異星人の住む惑星に接近しつつ、交流し、対決し、和解し、最後には別れを繰り返す。


 その時、惑星との往来、ある時は戦い、探索をする宇宙船プレカティオ(祈り)、かつての衛星打ち上げロケットと同じ名前の宇宙船が主に活躍する未来兵器となる。


 17th世紀プロは1799で学んだ技術を特許に触れない限り駆使して、極力安価で撮影する様工夫した。

 高額な光学合成を避け、グラスワークや、巨大な写真に穴をあけた後ろで人物やミニチュアを動かす。


 宇宙船が放つ光線などはエリアル合成がほとんどだ。


「ウチのバーサタイルの出番はないねえ」

 リック社長が感心した。


 そして、割と大人の男女、嫉妬や確執、疑心暗鬼。

 更に楽園と思わせた偽の捕食惑星に、人体実験を繰り返し衰退する惑星。

 プリムス同様宇宙を彷徨う宇宙都市。


 その骨子は昔から変わらない、マギカ・テラの寓話だ。

 魔族も人族も変わらぬ、思いやりを重んじ、驕り高ぶりを戒める寓話。

 微妙なニュアンスの違いの修正は、他国事情に精通したマギカ・テラ王立放送局のプロデューサーが指導しつつ、企画が進んだ。


「リックさんには、リアルで安全で、極力安価で済む玩具をお願いします」

「出資も込みで、ね?」

「ありがとうございます」

 こうしてトリック玩具は新作「コスモ1700」のスポンサーとなった。

 初回の完成が待ち遠しい。


「さて、次は…」

 リック社長は自分独自の道を進める前に、まだ後片付けすべき事が残っていた。

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― 新着の感想 ―
おおロボコンにスーパー戦隊! さすがに最初からロボが出てくるんですね〜
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