312.巨大変身英雄を継ぐもの
リック社長のアニメーター待遇改善要求、更に声優大行進のため、一時アニメ製作は相次いで休止する羽目に陥った。
しかし改善交渉がまとまり、廃業するプロダクションは大手や中堅へと併合され、今度は放送局との製作費交渉が行われ、ゴタゴタが落ち着いた所から製作が再開された。
新たな体制、改善された待遇で再開されたアニメ作品群は、今まで以上に魅力を放った。
そんな中で、一大人気ジャンルなのはゴーレムアニメだった。
大人気作「マキナデウサーΩ」も安定した環境の中で続編が作られ、今では宇宙から来たゴーレム「宇宙ゴレム グランデウザー」が大人気である。
更に同じ原作者で、別班体制で平日の夜には3つの飛行機が合体して3種類のゴーレムに変形する変形合体ゴーレムが登場し、これも大人気であった。
いずれの作品もトリック玩具から精巧な玩具が発売され、リック社長の懐を豊かにしていった。
無論、新たな作品を世に送り出し、子供達に還元する予定ではあるのだが。
これに加え、少女向けアニメも高度な魔法で友人たちの問題を解決する物語が好評を博し、またその原作マンガも人気を集めて、子供の文化は百花繚乱であった。
それら作品を世に送り出すのは、やはりショーウェイ。
ショーウェイでは子供向けに1時間の中編アニメ映画と、テレビ作品を35mmで撮影した特別編4~5本を纏めて上映する、「ショーウェイアニメまつり」を開始し、子供達を集め数億デナリの成績を手堅く上げた。
ゴーレムモノと言っても、内容は単純な戦いではなかった。
最初はいかに最強のマキナデウサーを倒すかの知恵比べが繰り広げられていた。
それがいつしか敵も味方も同じ様に悩み苦しみ、そして友情を交わし、女戦士とは愛が芽生えるドラマを繰り広げる様になった。
古典演劇の様なロマンチズムが宇宙を舞台に、ゴーレム同士の戦いを背景に描かれた。
敵も怪物でなく美男美女が増え、主人公とのロマンも描かれる様になった。
「ウヒー!ゴジー君とデルク様の男と男の友情!愛情ガー!」
「カレンナが撃ち殺されるなんて勿体な…悲し過ぎるー!」
「ガキンチョ邪魔!」
「ゴーレムモノにゴーレムなんて要りませんわ!」
中には気が遠くなる様な事を言う女性陣もいた。
反面、
「ゴーレム4体軍団!」
「飛行機が3機合体してゴーレムに合体!」
「不要パーツ収納!」
合体や変形へと、ありとあらゆる知恵と工夫が詰め込まれた。
中には理不尽な変形もあったりしたので、トリック玩具では厳しくダメ出しをしたり、魅力的なデザインやアイデアには設計に積極的に協力したりもした。
だが資本力や設計技術に秀でたトリック玩具なら兎に角、他社ではそうもいかない。
苦肉の策として変形前の玩具、変形後の玩具を別に売ったりもした。
或いは変形ギミックを優先するあまり、変形合体後のプロポーションがムッチャクチャな玩具もあった。
「愛が足りない!」
「ウチの品質で作ったらあの商会潰れちゃいますよ!」
「40年くらい経ったらウチの技術で少数生産してやろっか」
「40年後なんてあの作品覚えてる子いませんって」
「いやいや、こういうものは絶対忘れられないんだよ!
ウチもそのつもりで!
40年後の子供達の厳しい目に耐えられる商品を作っていくんだよ!」
「はあ…」
こんなやり取りがしょっちゅうトリック玩具で繰り広げられた。
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そんなある日、国際テレビ商会のアッカリダ監督がトリック特技プロを訪ねた。
かつて「SFダー!」と叫んでいたフクさん、今ではSF小説作家となったフルクトゥ・フォルティナ氏、マキナゴドランの発案者を連れて来た。
「今じゃアニメばっかりです。特撮もテレビでもっと出来ませんかねえ」
との相談だあったのだが。
「いや、ショーウェイの「インヴェンス・ヴィルフェレス」とかあるじゃない?」
一応ヨーホー映像作品なのだが、リック社長の頭の中ではすっかりショーウェイ作品になっている。
「いっそ真っ赤っかにして、もっとスマートにしたいのですが」
アッカリダ監督が企画書を見せてくれる。
そこには真っ赤でスマートなゴーレムが描かれていた
「こりゃカッコいいねえ、これにすりゃいいじゃん」
「ならないんですよ、中に入る俳優さんを考えると」
「じゃあ下駄履かせようよ」
「おお!でもアクションとか大丈夫ですかね?」
「機械なんだから、多少ぎこちない方がそれっぽくない?」
「成程」
「リックさん相手だと話が秒でまとまるなあ…」
やりとりを聞いていたフクさんが呆れる。
「で、物語なんだが、いずれこんなゴーレムが産業の世界で活躍するとは思わないかな?」
「人間の形をした巨大なゴーレムが活躍する事はないよ。
人間の形なら、医療、老人、給仕など人間型の方が好まれる分野でしか求められないさ」
「それじゃ番組にならないでしょう?」
「そこで知恵が要るんだよ。
いかにして、巨大人型ゴーレムが必要となるかって舞台設定がね」
「例えば?」
「戦闘となれば本体に固定された武器だと打ち尽くせば終わる。
ゴーレムは兵器を輸送し、打ち尽くせば他の兵器と交換して戦い、最後は白兵戦。
とかね?」
「「ほうほう」」
「あ、あとね」
アイディー夫人も面白そうな話に入って来た。
「あ!発明少女だ!」
「ちがうよー!!」
今や人気ジャンルとなった魔法少女の元祖がこの人である。
「それよか、トンネル掘削とか鉱物掘削の巨大なショベルをね、ゴーレムが操作する、動力を供給する。
今アニメでやってる敵のゴーレム、アレすっごく考えてあってね、それをもっと本当にありそうなデザインにするといいかもよ?」
「流石発明少女だ!」
「だからちがーう!!」
「「「わっはははは!!!」」」
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国際テレビがテレビ特撮映画「ルーバーエクエス」の企画を始めた。
主役ゴーレムのルーバーエクエスのヌイグルミは繊維樹脂製。
磨き上げられ深紅に輝くヌイグルミは、アニメのゴーレムとは異なる魅力を発していた。
敵の怪ゴーレムは過去世界各国が発明した設計図から、ゴーレムを使った軍隊で世界を支配せんと企む悪の大商会が盗み出し改造したという設定だ。
安価な発泡樹脂製だが、フクさんが色々な産業用機械を検証して考えた、面白いデザインが目白押しだ。
既に多数つくられたゴーレムアニメで使われたアイデアもあるが、特撮ならではのディティールの細かさが、怪獣ともアニメとも違う、どちらかと言えば「トニトアビス」に登場した未来の工作機械の様な魅力があった。
ゴム製スーツに身を包んだ変身巨大英雄が去り、アニメで、特撮でゴーレムが暴れ始めた。
しかし、破壊されるミニチュア、繰り出される光線、出動する未来兵器。
基本的な姿はスプラシリーズそのもので、それ故か子供達の人気を集め、人気作品となった。
「ウチでやればよかったんですよ」
「いやいや、こういうのは裾野が広がってナンボだと思うよ?」
「ライバル増やしてどーすんです!」
「切磋琢磨、業界全体としては育って行くじゃないの」
だがこの「ルーバーエクエス」、資金力の弱い独立プロに過ぎない国際テレビ商会にとっては荷が重かった。
途中からトリック特技プロが支援に入り、リック社長やデシアス監督が自らミニチュアを配置したり貸し出したり監督したり、同時撮影可能なエピソードを探して安価に撮影させたり、ミーヒャー専務が収支の指導をしたりとお節介を焼く事になるのだった。
「やっぱりテレビで特撮ってのは荷が重いなあ」
「あの低予算でトルドーがんばってたアッカリダさんが何言ってんです!」
「そうですよ!やりくり次第で乗り切れますって!」
半分トリック特技プロみたいな経営方針になってしまったのだが、リック社長はあくまで国際テレビ作品として支援を続けた。
途中、スポンサーである空調機会社が敵対的な商会から株価の操作を受け倒産するというピンチが訪れたが、トリック玩具が後を受け製作費を捻出し、何とか半年の予定をこなし1年の長丁場を果たし、更にシリーズ化も決定したのであった。
そしてこの「エクエス」シリーズは向う数年続き、スプラルジェント亡きテレビ特撮の時代の橋渡しとなったのだが。
ライバルの成長を喜ぶリック社長であったが。
「いいかげんウチ単独作品再開してください!」
ミーヒャー専務の檄が飛ぶのであった。




