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天才魔術師は柔らかな光に微睡む  作者: 川澄光


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10/11

10.とあるサンドイッチ屋の勘違い

いらっしゃいませ!


人気の薄切り肉とデザートサンドイッチは売り切れだけど、他にもまだまだ美味しいサンドイッチがあるから見てってね!


…え?客じゃない?現状を把握したい?はぁ、何でしょう…


今朝、黒髪の男と深緑色のワンピースを着た女が来なかったかって?


あぁ、もしかして手持ちがないお兄さんのことかな?端正な顔立ちの!それなら来た来た!来ましたよ!その人が何か?


そう、そう、朝一番にね、男の人が先頭に立って、女の子が後ろに控える感じでね。えらくカッコイイお兄さんでね。


その時の様子…?そうだね、それが可笑しいんだよ。俺がおすすめのサンドイッチを言うと、それを全部手に取っていってね。そらぁもうポンポン手に取っていくからお金持ちだと思うだろ?


それでお代は銀貨6枚に銅貨6枚になります!って言ったらポカーンとしてるわけ。ポカーンとしてたら『手持ちが、ない』とか言っちゃって。


こっちもまさかお金がないとは思わないからポカーンとしちゃってさ。一緒に居た女の子もポカーンとしてるわけよ。


みんなでポカーンとしてたら、女の子がおずおずと『少しなら手持ちはありますが…』って言ってね。


流石に銀貨6枚もなかったから女の子が持ってるお金で買える分だけ買って帰っていったよ。


え?結局受け取ったのは…銀貨3枚だったんじゃないかな。うん、銀貨3枚だ。お釣りで銅貨1枚返したはずだよ。


何を買ったかまでは…うーん…薄切り肉と花苺のサンドイッチは買っていったと思うけど…あとは…卵、肉とチーズ、白身魚揚げ、あたりだったかな?


買ったあとは…あれ?あの二人はどこに行ったんだ?少し目を離したらいつの間にかもういなくなってたよ。


結局あのお兄さんはどこのお坊ちゃんだったんだろうなぁ…


…ん?待てよ。そう言えば…あの女の子が着ていたワンピース…あの子はキーストン家で働いてるんじゃないかな。緑のワンピースって言ったらキーストン家の使用人の制服だもんな。そうだそうだ、エプロンもつけていたし、何で朝のときに気づかなかったかなぁ。


…あれ?じゃあ、あの手持ちがないお兄さんはキーストン家のお坊ちゃん?カナメ様?だったのか?


…たしかに噂どおり端正な顔立ちはしてたけど、ずば抜けて頭が良いって感じはしなかったなぁ…


大体お金も持たず外に出るなんて、うっかりしすぎじゃないのかい?使用人の子も困ってたよ。あんなんでキーストン領をうまく治められるのか心配だよ。


…あれ、どうしたの、お兄さん、震えちゃって。


もしかしてお兄さんもキーストン家で働いてるの?大変だねぇ、あんなおっちょこちょいの当主さんの元で働いてると。


あぁ!ごめんごめん、キーストン家で働いてるんだ、当主を悪く言ったらいい気がしないよな。


そうだ、お詫びにこれ持っていってよ!自慢のサンドイッチなんだ!


遠慮するなって!俺が悪かったんだから!


そしてカナメ様にまた来るよう伝えてくれよ!今度はお金も忘れずにってな、ははっ!

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