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第八話「選択」
すべては守れない。
その現実が、目の前にある。
戦は続く。
だが、形が変わっていた。
ただ勝つだけでは意味がない。
何を守るか。
それを決めなければならない。
「広げますか」
家臣が問う。
勢いはある。
押せば取れる。
だが――
家康は首を振る。
「取らぬ」
その一言。
空気が揺れる。
理解できない者もいる。
だが、理由は明確だった。
広げれば、薄くなる。
薄くなれば、守れない。
守れなければ、崩れる。
それを知っている。
かつて、何もできなかった時間。
その記憶が、判断を支えている。
「守る」
それがすべてだった。
派手さはいらない。
確実であればいい。
家康は地図を見る。
広さではない。
深さを見る。
どこまで守れるか。
それだけを考えている。
その選択は地味だった。
だが――
揺れない。
その積み重ねが、後に力となる。




