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【完結保証】のけものの幸せな結婚  作者: 絶対完結させるマン
第二章

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仕事中の彼

 「おはようございます、副長!」


 屯所に行くと、すれ違う部下たちから次々に挨拶される。


 一人一人に挨拶を返していきながら進んでいくと、一際元気な声が聞こえてきた。


 「おはようございまーす! 久しぶりっすね副長!」

 「七男(ななお)。そうか、今日で謹慎明けか」

 「はい! 迷惑かけた分、バリバリ仕事やらせてください!」


 他中(たなか)七男は、入隊してから二ヶ月も経っていない新人隊員である。隊員の中では最年少の14歳で、いつも明るく素直な性格が多くの隊員たちに好印象を抱かれている。


 一週間の謹慎が明けた彼は、いつも以上に意欲に満ち溢れていた。


 「あれ? 今日はあんこちゃんいないんすね」

 「ああ……今日は朝飯を食べるとすぐに出かけていってな」


 あんこは、大概は佐助の肩に乗って一緒に屯所にやって来るのだが、今日は違っていた。


 まあ、今日は小春もあの人と出かけていて家には誰もいないのだから、あんこを見張る必要性もそんなにない。


 「局長は家にいるんですか?」

 「いや……今日は小春と二人で町に出かけている」

 「えっ、それってもしかして……逢い引きってやつですか!?」

 「声がデカい。声が」


 案の定近くにいた隊員たちが、なんだなんだと佐助たちの方を見る。


 「ちょっと。誰と誰が逢い引きしてるって?」


 七男の後ろから不機嫌そうに声をかけてきたのは、三番隊隊長の卵井(たまい)だった。


 彼は聞き捨てならないというように、均整の取れた顔を歪めている。


 「ちょっと副長。本当なんですか逢い引きって。局長にそんな人がいたなんて、僕知らないんですけど」


 一応上司である佐助を舐めつけるように顔を近づける卵井。


 数いる隊員の中でも、卵井は特に統一郎に心酔している。そのことは隊員の全員が把握しているほど、周知の事実である。


 「落ち着け。逢い引きではない」


 いや、小春はともかくとしてあの人の方は逢い引きのつもりかもしれないが。


 統一郎が小春に向ける熱っぽい眼差しを思い出して、その可能性が高いと考える佐助。


 「なんだ。紛らわしいこと言うなよ、他中」


 卵井に睨まれた七男が身を縮こませる。


 「相手は小春だ。お前も話は聞いているだろう」

 「ああ……局長が拾ってきたよくわかんない小娘ね」


 小春の存在に興味がないことが窺える口ぶりだった。卵井はまだ小春の顔も見たことがない。


 「あの娘は別にどうでもいいけど、なんで局長が隊員にするわけでもないただの小娘を連れてきたのかは気になるな。あの娘に一体どんな利点があるわけ? 名家と繋がりがあるとか?」

 「小春さんを連れてきた理由——そういえば俺も聞いたことなかったっす。どうなんですか局長?」


 七男と卵井の視線が刺さる。


 「いや……特に理由があったわけではない。成り行きでそうなったというだけだ」


 統一郎と出会った時、小春は東雲家によって勝手に縁談を進められ、半ば連れ去られるようにして縁談相手の家に連れて来られた。


 なんとその縁談相手の正体は人間に化けた殺人鬼であり、危うく食べられそうになっていた小春を統一郎と佐助が助けたというわけだ。


 恐怖に怯えた小春が「東雲家に帰りたくない」と心情を吐露し、統一郎は彼女の願いを叶えるべく東雲家と話をつけてきて「今日からここで暮らせばいい」と小春に言った。


 「彼女に同情したんだろう。人一人増えるくらいなんてことないと——そう思ったのかと」

 「なるほど。じゃあ親切心で引き取ったってことですね! やっぱり局長は評判通り慈悲深い人なんすね〜」

 「へえ……親切心で、ねえ。へえ〜……?」


 納得いった様子の七男と違い、卵井は疑り深そうに佐助を見ている。


 佐助はその視線から逃げるように「見回りに行くぞ」と七男の肩を叩いた。


 「あ! 待ってくださいよ、副長〜!」


 早足で外へと向かう佐助を、七男が追いかける。


 卵井の怪訝そうな眼差しが向けられているのを自覚しながら、佐助は振り返ることができずにいた。


 佐助は、統一郎が小春を引き取った"本当の理由"を知ってしまっている。同時に今後の小春の運命も。


 小春とあの方は、将来結婚する。


 そういう未来を統一郎が定めた。


 佐助は、現在も街中を並んで歩いている二人の姿を思い浮かべて、思わず下唇を噛んだ。

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