第162話 レナタ・再来 ⑤
「姫路さん、耐えろ!」
首の群れを見上げた純一は、近くのビル屋上を蹴って空へ飛び出した。
姫路の弱点を狙って迫る首へと一気に肉薄し、剣を巧みに操って次々と斬り払う。
斬撃の反動を利用して空中で体勢を変え、軌道を読み切った動きで、首の群れを確実に切り捨てていった。
純一は冷静さを失うことなく、低く呟く。
「姫路さんの攻撃を止めに来るとは。さすが壊滅級だ。ジャイアントウォーリアが相手でも、そう簡単に倒せる存在じゃないか」
首を縛るワームを斬り取れた、痛みを耐え、
万璃愛は片目を開けて、不屈に声を叫ぶ。
「こんな痛み……!私、負けないんだから!
ガニちゃん、ドリルミサイル発射!」
宙に浮かぶガニメデ号のミサイルポッドが作動した。
無数のドリルミサイルが放たれ、別々の角度からレナタを貫き、次々と爆発する。
レナタの巨体を包む爆炎の閃光は、夜空に咲く花火のようだった。
体が楽になった万璃愛はその気に受け身の動きでそこから離れ、再び立ち直り、次の攻撃を仕込むように構えを取る。
「先ず首の分身を取らないと、本体に寄らせないか……ならば、ジャイアント薙刀で一気に分身を切り取るわ。」
ドリルアームを一旦外せ、腰アーマーの所に着ける。
次に背中のバックパックから柄が射出し、天に昇るほど長い柄に展開し、先端にビームの刃を伸ばす。薙刀を両手に取る万璃愛は、足を踏ん張って、足腰の力を活かし、腕で器用に薙刀を回し、襲ってくる首を斬り落とす。
体の重さが抜けたのを感じた万璃愛は、受け身を取ってその場を離れ、素早く体勢を立て直す。
次の攻撃を見据え、静かに構えを取った。
「まずは首の分身を排除しないと、本体に近づけない……。
なら、ジャイアント薙刀で一気に刈り取るわ」
万璃愛はドリルアームを解除し、腰部アーマーへと収める。
続いて背中のバックパックが展開し、一本の柄が射出された。
柄は瞬時に伸長し、天を突くほどの長さへと変形する。
その先端に高密度のビーム刃が形成され、白銀の光が揺らめいた。
巨大な薙刀を両手に取った万璃愛は、大地を踏みしめる。
足腰から生まれた力が、そのまま腕へ、刃へと流れ込んでいく。
次の瞬間。
横薙ぎに放たれた一閃が、広範囲を覆った。
刃が通過した軌跡には、遅れて残光が弧を描き、
まるで空間そのものを切り取ったかのように、光が空中に刻まれる。
襲い来る首は、斬撃範囲に入った瞬間、まとめて断ち落とされた。
切断面は一拍遅れて崩れ落ち、重たい音を立てて地面へと激突する。
薙刀の残光はなお消えず、次の一撃を予告するかのように空中で揺れていた。
万璃愛の武装換装を、地上の特務隊員たちは息を呑んで見上げていた。
背中から射出された柄が異常な速度で伸び、光の刃が形成された瞬間、戦場の空気が一変する。
「……何だ、あの武器……」
「長さが……いや、斬撃範囲が、桁違いだ……」
重錬が状況を見据え、根明るい声で説明する。
「お前らが知らないか?あれはマリアンヌちゃんの愛用武器、
ジャイアント・ビームナギナタだ」
万璃愛はそのまま薙刀を振るい、前へ出る。
その動きは斬るというより、なぞるに近かった。
だが次の瞬間、首の群れがまとめて、次々と崩れ落ちる。
ビームナギナタを持ったさらに攻撃ペースを上げ、乱舞しながら正確に首の群れを斬り払う。
「一瞬の攻撃で、あれだけの数を切り取れた」
「今までの攻撃が……全部、霞んで見える……」
薙刀の軌跡に残る白銀の光が、戦場を照らす。
隊員たちは思わず武器を下ろし、ただその光景を見守っていた。
「……俺たちが、必死で抑えてた首を……あんなふうに……」
そばにいた女性隊員も、感嘆の声を漏らす。
「……これが……ジャイアントウォーリアですか。
噂通り、強くて……頼れる味方ですね」
一方、別部隊の特務隊員は、皮肉を滲ませて呟いた。
「……やはり来たか、マリアンヌ。大型シャドマイラと同格の災厄級だな」
その中には、胸に嫉妬を宿す者もいる。
彼は、他愛もない口調で唸った。
「俺たちの出番を奪って……人造の神様気取りか。
所詮は人体兵器、化け物級なら……せいぜい俺らの代わりに戦ってくれよ」
だが、次々と首が斬り落とされるたび、
戦場に漂っていた絶望は、確実に押し返されていった。
その巨大な背中を見上げながら、
誰かが、かすかに呟く光景であった。




