第132話 雨中の激戦 ②
プロメテウス号の機内では、陽太たち三人の目の前に、地上の戦況が映し出されている。
高圧電流を浴びてもなお再生するキングピーファピュトンを見て、エリックが問う。
「部長、なぜビリーくんの零距離の高圧電流でも倒しきれないんだ?」
「シャドマイラはコアを破壊されない限り何度でも再生するから、彼の攻撃は徹底的に破壊していないでは?」
「……僕の感覚だけど、あのキングピーファピュトンは複数のコアを持っている気がします」
赤外線映像に切り替えると、キングピーファピュトンの体内に三つの核のような反応が映し出された。
「本当だ……」
瑤妤は珍しく、仇敵を見るような視線を向け、感情を押し殺した声で呟く。
「多核持ちの個体か……厄介な相手だね」
「瑤妤お姉さん、提案があります。高度を下げてください。僕がバックドアから狙い撃ちます」
「試してみる価値はあるね。まずは動きを封じよう。グラットンくん、プランB、
干渉波生成装置を準備」
プロメテウス号が急降下し、高度300メートル付近で静止する。
「了解、プランBロックオン!」
モニターの照準表示は、直径200メートルほどの広域をカバーする八角形を描く。
約三キロ離れた地点から、機体の左右に搭載されたミサイルボットが一斉にミサイルを射出。
八本のミサイルが光速に近い速度で飛翔し、わずか三秒で指定地点へ到達した。
地面へ槍のように突き立った装置が展開し、台座部同士がビーム状のワイヤで接続される。
柱状に伸びた本体から電気が走り、光を帯びた瞬間、干渉波が放たれた。
キーオウゥゥゥゥ!!――
キングピーファピュトンの動きが封じられた。
次の釘を仕掛けるビリーは展開した装置を見て言う。
「おっと、なんかすごいもんが展開されたな。シャドマイラ退治用の装置っスか?」
距離を取って様子を見ていた隊員が声を上げる。
「隊長、あれは、干渉波生成装置じゃないですか?」
「科援隊が来たか! よし、今がチャンスだ、一気に畳みかけろ!」
士気を高めた重装特務隊員たちが、遠距離からビームライフルでキングピーファピュトンを牽制する。
プロメテウス号は反重力エンジンで高度30メートルの上空へ浮かび、その状態でバックドアを開く。
後部ハッチに立った陽太の顔に、強風と湿気が叩きつけられる。
それでも、陽太の視線は揺るがない。
右手を突き出し、左手で支えを添えて、眼下のキングピーファピュトンの“核”に狙いを定める。
「撃ち貫け、プラズマ・ジャベリン!」
陽太の手がオレンジ色に染まり、次の瞬間、オレンジのプラズマの槍が一直線に放たれる。
一撃で、キングピーファピュトンの核の一つを貫いた。
「よし!命中した……このまま横に薙ぎ払えば!」
だがそのとき、キングピーファピュトンが死にたくないとでも言うように体勢を崩し、弱点を晒さない角度へと身を捻った。
「今の、僕の攻撃から弱点を避ける動き……?」
陽太は一度放出を止め、次の狙いを組み直そうと構えを整える。
キングピーファピュトンが甲高い鳴き声を上げ、ワームの首をさらに伸ばす。
周囲にある建物が対象問わずに何もかも刺し貫けられ、その一部が干渉波生成装置へと殺到し、次々と破壊・爆発させていった。
「部長、さきほど展開した干渉波生成装置、六基がキングピーファピュトンによって破壊されました。干渉波が低下しています!」
「なんだって!?」
それでも陽太は諦めず、二射目の準備に入る。
干渉波が弱まり、動きが自由になったキングピーファピュトンは、傷を負いながらも大きく跳躍した。
飛び上がる瞬間、ビリーがワームの首の一本を掴み、そのまま一緒に跳び上がる。
「掴んだ! 逃がさないっスよおおおおおお!!」
全身でワームの首を掴むビリー。強風に煽られ、髪が激しく揺れ、引き攣ったような表情で絶叫する。
着地のタイミングを見極めたビリーは、ぎりぎりで手を離し、近くのビルの屋上へと飛び移った。
ドカァン——!!!
400メートル近く離れた場所で、キングピーファピュトンが着地し、その下にあった建物は押し潰されて瓦礫と化す。
ビリーはパルクールさながらのステップで、ビルの谷間を跳び進み、怪物が着地した地点へと追いついた。
しかしそこにあるべきキングピーファピュトンの姿は、すでに影へと潜り消えていた。
同時に、プロメテウス号のレーダーからも反応が途切れる。
それを確認したエリックが報告した。
「部長、キングピーファピュトンの反応、消失した」
「逃げられたか……。また別のエリアに現れるかもしれない。しばらく東京都内の上空を巡回しつつ監視を続けましょう。陽太くん、一度席に戻って」
バックドアが閉じられる。
「……分かりました」
瑤妤の指示に従い、陽太は悔しさを滲ませた顔で席へ戻り、歯を噛んでシートベルトを締めた。
小雨へと変わりつつある空の下、
プロメテウス号は東京都西部の空へ向けて、静かに飛び去っていくのだった。




