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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
超未来都市 NIISSA<ニーサ> カグツチ編
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第86話 カグツチの火の館<Side ロケット部②> 一願寺の神様

 カグツチからの依頼で拝謁することになったトモカだったが、イマイチ乗り気ではなかった。理由の1つとして……。


「いや……いくら加護があるからって初心者マーク付けてるんやで」


 免許取り立ての初心者が片道200kmを超える超ロングランを軽々しく熟すことなど到底苦痛でしかなかった?高野山へ続く長い急勾配の峠を2速6000回転でギャンギャンカーブを攻めながらワインディングを楽しんでいた。目の前をチンタラ走る謎のR25を追い越せなくて若干ストレスが溜まってきていた。

 チラチラと見える「もろパン」を眺めなると、R25には女子高校生が乗っていた……。


「って、あれ生徒会長?やん……」

「ほんと!名ばかり生徒会の水槽学部共め!……権力を振りかざし私利私欲に溺れる悪しき秘密結社共が!」


 っと、毒を撒き散らしながら後を追う形で峠を登っていた。彼女が生徒会長だと一目で確認できたのは、彼女が着ている『東高校』の制服から予測したものだ。痛バイクであるR25に乗る女子高校生がそうそう何人もいたら困る。


 大門の前に通りがかった所で生徒会長は高野山市街地方面へと曲がっていた。『本宮大社』を目指していたのでそのまま直進し、『ごまさんスカイタワー』を目指した。前がクリアーになったのをきっかけにクラッチを踏み3速にギアを上げた!

 近年出来た高野山裏側のバイパスを通り、軽快に高野龍神スカイラインを飛ばし、龍神温泉を横見に通過した。本宮大社方面へと続く長い道『通称:アウトバーン』を軽快に走っていると……!


『――ンヴァァァァン!』


「なんで!VTECの音がする!」

 当然だが、S660にはVTECは搭載されていない。とてもとてもレーシーな音が世界遺産の山々に響き渡る……!申し訳無い位の小さなバックミラーで後方からくる車両をを確認する間もなく、『イエローカット』し爆速でぶち抜かれた……!


 天使の羽根を刺繍された白いパーカーを身にまとった、華麗な女子が無法者と化し爆走している!しかもよく観ると白銀の髪をなびかせるドールがタンデムシートに鎮座していた!


 ……ドールがこっちを観て手を振っている――!



 気がした!


 あまりにも奇っ怪な光景に冷や汗がどっと出る……!

 ぱっと見にすれ違った生徒会長よりも小柄で幼く見えた彼女が爆速でカーブを攻める異常な状態だ!ドールが手を振って何か挨拶でもしてる光景は、火の神である「カグツチ」と生活していると奇々怪々な事は特に珍しい光景でもない。朝起きたら未来や過去へフラフラしていることは日常茶飯事だ。ただ……。


「は、早いよ……!3桁迄は行ってなけど早いよ!」

 

 エスロクのスピードメーターをチラチラと観たが、メーターがハッピーなのかと勘違いするスピードで前のバイクが走り抜けている。スピードも気になるが……。


「エスロクはやーい!バイクに付いてくるの久々に見たよ!」


 っとモールス信号を送ってきたようにドールが思えた……!

 ……ので、ロケット部愛用の回光通信機を手に取り……!


「ばっかやろー!」


 っとモールス信号を送ったが……?


「ば……ンガロー?」


 銀髪のドールは頭を傾げながら意味不明なモールス信号に疑問符を頭の上に出している気がした!

 ワインディングの最中、片手運転でモールス信号を送り続けたが、何故がビミョーに感じに伝わる不思議な問答を繰り広げた。


 ――光の屈折率、もしくは時系列のズレだろう。


 かなり厳しいカーブ群を通過が終わると、一旦開けた市街地を通過する。ドールを載せたハイパーなバイク女子は市街地方面へと曲がっていった。本宮大社へ向かう前に、一度『一願寺』へ寄ってくるようにとカグツチにお遣いを頼まれていた。神であうカグツチが何故に輪廻側である一願寺へ用事があるのかは疑問だった。


 一願寺で500円で願い事をすると必ず叶う……らしいが、どちらかというとその手の話は信じない方だ。神と住居を共にしているから言えることだが、結果的に本人の生き方で到達するのであって、本人の力で獲得できると考えている。神や仏が一々人の願いを叶えていたら皆がラブアンドピース状態になる。因果応報で世界は出来ていてほしい。拝んで何とかなるのであれば大衆は拝んでいればいい。


 とはいえ、『神の加護』を全身に纏ったエスロクを転がしていては説得はないが、私は実力主義だ。そして、合理化的考えに対してもとても好意的に考えている。今現在、衛星を『カグツチの加護』で打ち上げているが、基本設計を含めロケット部の技術である。衛星を打ち上げるにあたり、加護も設計の一部として計算しているからだ。


 っと、日常的にヤバい感じがする高野山から熊野古道を突っ走り……ちなみにだが、世界遺産に認定されている道路を我が物顔で爆速で走行するヤバい連中が多い道だ。ドールが手を振ったり、女子高校が暴走特急をキメたりなどは日常的だ。


 そして……。


「魔の巣窟……一願寺……」


 まさにこの闇が広がる半島に鎮座する悪魔城!!如何わしい煩悩を500円で叶えるヤバい城!!


 ……とかではなく、どちらかといえば、子煩悩な住職が住んでいそうな小ぢんまりした寺だ……!


 一願寺の駐車場にS660を停車し、助手席に置いているバッグからある物を取り出した……!


「ふむぅ……しっかし、このレンズ……やっぱり良いわね……」

 っと私は独り言をいいながら『SOMY β6600』を取り出した……!

 ミラーレス一眼レフに『単焦点レンズGマスター85mm』を装着したカメラだ!

 35mm換算で127mmとなる構成だが、この組み合わせで撮影するのは風景とか車とかではない。


 ――このカメラで撮影するのは『神の残光』だ!

 しかし、その神の残光を撮影するには『加護』を受けなければならない。その加護を受けることができるのが……。


「そう……スナイパーの聖地……一願寺だ!」


 ――パシーン!


 っとシャッター音を響かせて中二病っぽいポーズをキメた!!


 この一願寺だが、通称『一眼寺』とも言われ、表向きは『一つの願いを叶えるお寺』となっているが、神サイドからは『カメラの神様』が……なんと!居候しているとの評判だ……!

 この一願寺に住み着いたニート……失礼……神に拝謁するようにとのことだ……!

 カメラの神様だが、ちょっと曲者で『ズームレンズ』だと加護を与えてもらえないのだ。っというのも、ズームすると画角が変わる為、セカイが湾曲してしまうらしいが……。


「花神 ミラ……今日こそは…!」

 とても不本意ながら、カメラの神『花神 ミラ』への拝謁をすることにした!


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