第76話 心桜の雫とシズクの不思議
ギュッと握りしめた涙の雫を大切に想う心桜。
「心桜さん……初対面では……ないですよね?」
「……いえ、やっぱり初対面です……か?」
シズクは七海の母親である心桜の事は一連の出来事で、バトルあり、感動ありとドタバタ劇を繰り広げていたが、『会った心桜1人1人』とは全く違う、部筒人のようだ……!だが、シズクは彼女から感じる『精神』は同一人物であると感じていた。
工房を見回すと……。
どうやら、シズク達の工房とは似ても似つかない創りになっていた。仮に、この工房が過去のアローナにあった鍛冶工房なら面影すら無かった。
――全く別次元のようだ……!
「あの……心桜さん?」
「心桜さんは……『七海』さんの事……」
シズクは言葉が詰まった……。
もしも、七海の事を覚えていなかったらと想像した。セカイと友の為に犠牲になった七海。今居るセカイはきっとその直線上の上に居る可能性が高かった。
シズクとナキのセカイでは、七海達は『アクアリウムコンテスト』で『優勝』していた。そして……。
「あれ???私……双葉さん……」
シズクは七海に想いを寄せていた『双葉』の存在を知らなかった。
多分、七海はシズクにとってもとても大切な友達なのに、双葉の事を七海から聞いたこともなかった。紹介されたことも、学校で会ったこともない。
今まで出会った心桜は、必ず七海の記憶と関係があった。
ただ……。
心桜の実の子供でもある。
しかし、目の前いいる心桜は……。
「心桜さん、今おいくつですか?」
元々幼く小柄な心桜だが、雰囲気が本当の子供の様に想えた。
「私……?いま、は……10歳……だと思う……」
「ここアローナに来てから2年経った……?と思う」
「正確な時間が判らないから……」
シズクも感じていたが、アローナ……ファバーダーの時間がいまいち掴みにくい。
「シズクさん、ここは多分ですが、ざっくりになりますけど、100年前だと思いますよ?」
「私のスターダストダイアリーに挟んでいる栞のページ位置が移動しているんです」
「……というか、1ページ目なのですけど」
ナキの手に持つ一冊の日記帳の1ページ目にフワッと光る栞が挟まれていた。
「実は、私やおばぁとの日記のページって、丁度真ん中付近なんです」
「そして、私たちが活動?しているアローナでの記録も同じくらいですね」
「カーハ・ツヴァイでシズクさんに応援に行ったときは、チョットだけページが進んでいました」
ナキ曰く、『スターダストダイアリー』は日々の日記を記録している。
・記録は自動で絵として記録されている。
・書かれた絵は時系列に必ず描かれている。
・ナキ以外の神さまや人間、ホムンクルスやアンドロイドにとっては、ざっくり言えばナキ以外はただの絵でしかない普通の日記帳になる。
・本自体の耐久度は、今のところ破けたことはない。
・スターダストダイアリーは滞在中の時間軸で一度訪れた事のあるポイントに空間移動ができる!
「でもさ、ナキちゃん。それだと私たちがいた『カーハ・ツヴァイの星空の間』から転移してきた時、時間軸移動してきてない?未来の花梨ちゃんと七海ちゃんの中身が心桜さんとトラブってったのだから」
――よくあるストーリーの崩壊だ!
「ああ!それですか?そもそもですけど、『シズクさんが神隠し』に会った?だけで時間軸は変わってませんよ?」
「そもそもですけど、私たちって時間が曖昧なのが……色々とメンドクサイ結果に繋がてるんじゃないですか?」
「輪廻転生だと、同じ時間をグルグルくり返して……ちょっと死語になっちゃいますけど『失敗したらリセット!的』な風刺的展開でやり直しできないわけです」
「花梨さんと七海さんは『輪廻側』に囚われているから……あ………七海さんはチョット特殊かな?どちらにも属してない?から」
――ナキ……この子はシズクの世界のウィキペディアか!?
「まあ、とにかく、私は『空間移動〈縦軸〉』シズクさんは『時間軸移動〈横軸〉』と仮定しておきます……ができるじゃないですか?」
「だからこの100年前のアローナへ来れたんだと思いますけど」
「ただ、花梨さんが川で倒れていた時は100年も前ではないと思います」
――それは説明はつく。シズクたちの世界で1日過ぎるとアローナの街ではかなりの時間が経過したりしていた。
2年ほど一気に飛べば、アローナが100年前まで戻るとも考えられた。
「……って、事は、アローナでミッキーさんのご先祖を美少年・少女で結婚させれば、あの悍ましい筋肉ウサギを可愛いウサギにコンバートできるのかな!?」
――シズクは過去改変でアローナの汚物の清掃を実行しようと考えた!
「シズクさん……先程も説明したと思いますが……」
「輪廻転生出来ないので過去改変はできません!……が、加筆はできます……ね」
「とりあえず、ミッキーをウサギからネズ……」
――神々の力が働いた気がした!
「……なるほど……信仰心恐るべし……」
シズクは思わぬ方向で信仰心のパワーを感じた……!
「私たちは『あるのもの変える<消去>』ことはできませんが『足す事はできる<加筆>』とは思います」
「でも、このセカイで加筆しても、私たちのアローナには影響は出ないと想います」
「しかし、心桜さんや花梨さん……そして『七海さん』達なら『変わる』かもです」
「彼女たちは『輪廻』して数千回は災悪の時を乗り越えたんですから……」
――今いるセカイは七海の想いを尊重する事にしたセカイ。
七海は災悪の時を防ぐため……双葉の想いを紡ぎ助けるためにセカイと一つになった。
――で、この世界は七海の想いと一つになったセカイである。
「……ナキちゃんヤバくない?」
シズクは花梨、七海が決断したセカイの過去にいるわけだ……。
当然だが、セカイと一つになった為、七海の存在が若干フワッとしてしまっている。
「だ・か・ら!神隠しになんて会うからですよ!……とりあえず……花梨さんの『幸村?』という最強の刀をシズクさんが創らないと……」
「さらに変になっちゃいますよ?花梨さん達の輪廻のセカイ」
「……まあ、このまま『放置』しても良いとは想いますが……」
「たかだか、人の歩みなのでクシャミ程度で終わりますけど……」
――シズクは若干焦ったが……。
「でもさ?ナキちゃん。私たちのセカイは災害起きなかったし、花梨ちゃんも七海ちゃんも存在してるわけ」
「……なんでだろ?」
ナキはやらやれ感を前面に出しシズクに説明をする。
「……私たちのセカイは……輪廻しませんから!色んなセカイがあるんですよ。あえて言うなら、『生も死も曖昧』……なんです」
「シズクさんも死んじゃってるかもしれませんよ?」
ナキは恐ろしい事を言った……!
「私たちのセカイはある意味、『特殊事例』です」
花梨たちは輪廻転生ができるが、シズクとナキ達は輪廻転生ができないらしい……?
「……意外と不便ね?」
――ナキとシズクのやり取りを不思議そうに聞いていた心桜が2人に尋ねた。
「あ、貴方たちは……何者なの!!いきなり来て、よく判らない事ばかり話して……」
……半泣き状態の心桜が半ギレで怒鳴った!





