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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
風の移動要塞・カーハツヴァイ エルチェの物語編
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第72話 本の始まりと呪いの傷

 ――シズクとナキはアテレードシャッフルの1ページ目へと飛んだ!


 転移したセカイは……。

 シズクの目に飛び込んできたのは……。


 高野山 ファミマのメイン通りだったが……。


 メイン通りの側溝に……!?



「花梨さん!!」



 意識を失い血を流して倒れて側溝の川に浮かんでいた!


 川は……ほぼ溝に近い程の大きさの川には花梨が流す血で真っ赤に染まっている!



 シズクとナキは一心不乱で川に飛び込んで花梨を救いあげた!


 周辺には人影は全く見当たらない――!

 シズクとナキは肌触りで感じ取る……!


 人払い……結界らしき空間が広がっていた。

 シズクは花梨の赤い血に色に目を奪われていたが、セカイの色が中途半端に欠けていた事に気づく!


「ナキちゃん!この空間……この感覚って……!」

 シズクは何度か対峙した空間。


 精霊と対峙した時の空間だ!

 ナキとナキの祖母、ナキサワメの想いを紡いだ時の空間と似ていた。


「……はい……ずいぶん前に感じますが……シズクさんと初めて出会って、おばぁの想いを……」

「でも!シズクさんのおかげで私は一歩前に進むことができたんです……」

「その時と……似てます!」


 花梨は瀕死である!

 ナキの時同様、シズクは願う……目の前の参事を打開したいと。


 シズクはいい加減鈍感なフリをするのを辞めることにする……。


「今の空間って、神のセカイとリンクしてる空間だよね?」


 シズクは時が止まったかのよう……セカイが切り離されたような感覚を肌で感じ取る。

 ざらついた無のようなセカイ、色あせたセカイに花梨の赤い血が鮮明により引き立てる。


「花梨さんは、神……もしくはそれに近しき存在と戦ったのでしょう」

「シズクさん!今は花梨さんの命を第一に今の置かれた状況は……たぶんかなり危険だと思います」

「花梨さんの命もですが……ここは『高野山』です。人と止ん事無き方々がお住まいの地」

「私たち神側が関与するにはあまりにもリスクです」

「転移します!シズクさん!」


 ナキはシューティングスターダイアリーを取り出した!

 ダイアリーには大きな『羽の栞』が挟まれており光輝いている!

 ナキはシズクの手をギュッと握り目を閉じ……!

 シズクは花梨を反対の手で抱きしめて一体となる!


「……Transfer Arona!」


 パッと栞を挟んだページを開きシズク達は転移する!!

 

 ◇


 転移した先は確かに……アローナ。


 だが……シズクが知っているアローナとは別次元に転移してきたかのような光景が目に飛び込んできた!

 シズクが知っているアローナは……村から街になった位の穏やかな街並みだった……。


 だが、転移先のアローナは……!


「だ、大都会!?え!ギルドが……おっきい!」


 シズクが知っているアローナとは全てにおいて規模が違っていた。

 建物は全てレンガ作りで3階建て以上、シンメトリーな街並み。

 ……見覚えのない……街燈?


 だが、アローナであることは一目瞭然だった。


 シズクが初めて転移してきた時に腰かけた噴水……。

 ――姿、形、噴水の水の勢い……は若干強めか?


「シズクさん!まずは協会へ!!花梨さんの治療です!」

 シズクはハッと置かれている現状を思い出し、ナキと花梨を抱きかかえ協会へと向かう……とした。

 花梨がいくら小柄とはいえ、小学生のナキとシズク2人では運ぶことは難しい……!


 っと抱えて歩き出した時……!


 見覚えのある女性がスッと抱き上げ、補助してもらえた!

「……えっと……協会へ……」


 シズクがファバーダに初めて来てアローナで最初からお世話になっているフィーナだ!

「フィーナさん!ありがとう!」

「え!?……あ……」

 フィーナはシズクの反応に違和感を少し見せた……が。

「今は、急ぎましょう……!」


 フィーナの助けもあり、協会へ急ぎ到達した。

 シズクはフィーナの行動に違和感を感じる。

 ――たしかフィーナはチート級賢者だったはず。

 治癒魔法を道中使う気配すら見せなかった。


「マリナさん!マリナさん!急患です!!!」

 必死でマリナという女性らしき名を連呼し呼ぶフィーナ。


 協会はシズクの鍛冶工房の近所にあるのと図書室で本を読むことが多かったが……マリナという女性と会ったことは一度もない。


「お!どうした!ラフィー!……って急患か!!」

「奥の医務室へ……!すぐに手当てと治癒魔法を施す!」


 ……ラフィー!?

 シズクはフィーナの愛称で『ラフイー』と呼ぶ人は知らない。

 協会にマリナという人物も知らない。


「この方……カーハツヴァイの……?」

 マリナは花梨の事を……?

 制服を脱がし、『背中の切り裂き傷』を見てラフィーは答えた。

「多分ですが、輪廻側の『人』かと思います」

「……ですが、この傷跡……間違いなくアンチノミー側の……『神』が裁いた跡……」

「いえ、訂正します。」

「この太刀筋にはむしろ誰かをかばった?かのように背に付けられています」

「刀……剣……いや、大鎌の部類の切り口です」


 花梨は大量の出血で、意識すら感じられない。虫の息だ……!

 

 傷口を確認したマリナは迷うことなく針と糸を取り出し……。


「ラフィー……まずは傷口の縫合の施術を行う!」

「違和感はあるが……普通ならこれだけの出血、死んでいるのが当たり前」

「だが、彼女は生きている。人ならぬ精神が彼女を『神一重かみひとえ』で支えているのだろう」


 マリナは美しい針に、『4色に輝く糸』を針孔に糸を通した……!


「縫えるのか……!?この傷……」

 針を傷口に触れた瞬間拒絶するかのように精神の結界らしき文様で阻まれる!?


 針は一瞬で砕け散った!!

「駄目だ!ラフィー……この針では神の裁きの切り傷は縫えない!!」


 マリナの持つ針では花梨の傷口を縫合することはできない!


 ラフィーはそっと花梨の傷口に触れてみる……!


 傷口を覆うように魔法結界らしき力が治療を拒む!

 ラフィーは結界をなでるようになぞった……!


「なるほど…闇属性……『死の宣告』の呪いの加護で苦しめられている……」

「光の属性『レイズデッド』の特効が必要かな?」


 ラフィーは胸元から見覚えのある証を取り出した……!

 そして……。

 ラフィーの足元にはシズクとは比べ物にならない位、強大で心強い魔方陣が現れ……!


「光の精神よ……この鋼の針に光の加護を……」

「そして、彼女の傷を覆いし魔を貫け!」


 ――光の精神が一本の針に集中する!


「マリナ、使い切り……彼女に一回しか使えないけど、きっとこれで縫合できるわ」

 ラフィーはマリナに光の針を手渡した……!


「いつもありがとう……ラフィー。貴方の魔法具は『1回しか』使えないけど、最高の性能だわ」

「これで彼女の傷口が縫える……!」

 

 マリナは光の針に、『4色に輝く糸』を針孔に糸を再び通した……!

 はじき返されることもなく、花梨の傷口にスッと入り、縫合ができた……!


 花梨の背中の傷口は綺麗に塞がった……!

 呪いらしき力を打ち破った針。

 針の能力も凄いが、縫った糸の効力もずば抜けている感じがした。


「鍛冶士としては……私、失格なんだけどね。一回しか使えないとか」

「裁縫士、マリナの紡いだ糸があったからこそ傷口が塞げたものよ」


 花梨の傷口は何とか塞がり、事なきを終えた。

 シズクは、マリナとラフィーにアローナの事を詳しく尋ねることにした。

 

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