第73話 鍛冶士ラフィー・アローナと人形士
花梨の傷は縫合され、かけられていた死の宣告の呪いはラフィーとマリナの処置でアッサリと解決した。
「傷口は魔法や医術で回復させることは私たちペアーにとっては簡単ですが……」
「彼女がここまでの深い傷を負った経緯が気になりますね」
ラフィーは花梨の傷口を見て引っかかる部分を感じとった。
普通、『人』を処刑や殺す場合は、『神』や『やんごとなきお方』は『死の宣告の呪い』のような手はあまり使わない。
人を殺める事自体、くしゃみをする程度の事だからだ。
花梨にかけられた呪いは……。
「神殺し……の可能性がある。強大な力を持つ神を相手にただ物理的に殺すだけでは死に至らないからな」
「神は人の信仰と共に存在する。たとえ大きな傷を負ったとしてもだ、人々の信仰でまた蘇る」
「カーハツヴァイ絡みだからな……輪廻側とアンチノミー側のすれ違い……とかでないことを祈るよ」
――神妙な面持ちでマリナはポケットからタバコを取り出し一服する……。
――『パーン!!』
タバコが爆発した!
手も、魔法の呪文を展開しなかったが、タバコが吹き飛んだ!
「な、何をする!!ラフィー!!」
「いい事言った風に振舞って、どさくさに紛れてタバコ吸わないでください!」
「神聖な協会で……ホントに……」
「まあ、でも、この花梨さん……でしたっけ?カーハツヴァイでお見掛けしたことありますね……」
「名水探偵事務の娘さん?かな?」
ラフィーは花梨の事を知っているようで、彼女の巻き込まれた状況を少しばかり話す。
「花梨さんは確か……調律士でしたよね?スフィア……輪廻側の住人さん的には『シード』かな?」
「スフィア関連の人災や精神を捕らわれた方の救済や保護……時には『処刑』の執行もされる方」
「多分ですが、相当危ない橋を渡ったのでしょう……」
シズクはラフィーとマリナの状況把握に少し安堵したが……。
「あの……私たち……」
アローナとはいえ、シズクが住んでいるアローナとは別次元のような雰囲気だ。
そして、フィーナにとてもよく似た……似すぎるラフィーに相談するべきか?
「あなた方は……神様?」
「その、何て言ったらいいのでしょうか?服装が未来っぽいといいますか……」
「人形士の『心桜さん』と同じ雰囲気ですね?」
――心桜!?
「あの!ここに……心桜さんいらっしゃるのですか!」
「心桜……ココロ=シナツさまですよね?」
「はい!そうです!……私、心桜さんに会いたくて……なんか色々と巻き込まれ右往左往と……」
ラフィーは少し顔を引きずった様子を見せ……。
「そうでしたか!……心桜さんを……ぜひ引き取ってください!!」
「直ぐにでも私の工房にご案内します!!」
パッと未来が明るくなったよな表情をした!
――これは……『工房を警備するプロ』の可能性を『本』脳的に察知したシズク!!
「ああああ!今日は、今日は面会だけで!!……とりあえず『今』は花梨さんの経緯のが気になりますので」
「花梨さんとは少しカーハツヴァイでありまして、助けてあげたいんです」
――エルチェは『シズクの工房』に居ることは、ナキに教えてもらった事で判っている、決して後回しにしたわけではない!?
……っと、シズクはギュッと握り拳を作りドヤ顔をキメた!
「心桜さんの件に関しては……この子の治療代としてお願いするとしますね」
「それでなのですが……」
ラフィーから花梨の今の状態に関しての私説を受けることになった。
まず、花梨の傷に関しては問題なく塞がり回復する。
しかし、呪いに関しても解除したので問題はないが、神の呪いを受けた事実に問題がある。
花梨は神殺しに関わった可能性が高いため、このまま自分たちのセカイへ帰ったとして問題を解決できる大きな力が彼女にはあるとは考えられない。
根本的に解決するなら、彼女自身だけで乗り越えられる案件ではない。
ただ、彼女が悪態をして受けた傷ではなく、誰かをかばった事によって受けた傷だった。
だから、『人間』の鍛冶士が紡いだ針であっても呪いを解除できた。
仮に、『ラフィーの光の針』がダメだったとしても、シズクが『光の針』を紡げば呪いを打ち破れだろうとの事だ。
しかし、そのレベルだとシズクが花梨の呪いを引き受けて神と対峙することになっただろうと。
「花梨さんの善行によって受けた呪いだったから私たちでも傷をどうにかできたのです」
「経緯によっては……花梨さんを助けた私たちも……アローナも影響を受けるでしょう」
「ラフィー・アローナ……アローナの長として……花梨さんをお救いします!」
「彼女の傷に触れて感じたんです。誰かの為に受けた呪いだと」
「私たちアローナは、例え神であろうと善行を行いし者に対しての非道とは戦います」
「そのためにも、シズクさん。心桜さんをよろしくお願いします!」
シズクはラフィーの熱い想い……花梨の力になりたいと答える!
「花梨さんの事、よろしくお願いします!……でも、心桜さんは別件です!」
ラフィーはジト目をキメた……!
「……チッ!」
どうやら、アローナにとって『心桜』の方がリーサルなウェポンのようだ……!
花梨の状態も気になるところだが、ラフィーとマリナの様子から状態は良い方向だと感じ取り、シズクはもう一つ気になっている事を尋ねる。
「あの、ここって……アローナ?ですよね?」
「シズクさん……いえ、シズク様とお呼びするべきでしょう」
「間違いなく、ここは『動く要塞の港・アローナ』です」
――ラフィーとマリナは軽くお辞儀をし、手を組み、シズク達に礼をする。
「シズク様と……ナキ様で……」
「神様……えっと、神様見習いのお二方でよろしかったでしょうか?」
シズクとナキは縦に首を振り答える。
「シズクさんは……ちょっと微妙な立場ですが、私は無き祖母であるナキサワメの直系です。今は修行中?……神に修行というのは変ですが、出来る事を少しずつ熟している立場です」
「そうですか……ですが、神様である事は変わりないです。我々、アローナの民はお二方を歓迎します!」
「……心桜さんを……お願いします……」
――どうやら、心桜が一大事になっているらしい――。
シズクとナキは花梨の事もあるため、とりあえずは問題の『人形士・心桜』に会いに行くことにした。
花梨は協会で治療と療養を受けることになった。





