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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
風の移動要塞・カーハツヴァイ エルチェの物語編
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第63話 風のレリクス『セレーナ・フィール』②

シズク達はレリクスに行くために『奥の院』入り口まで来ていた。

 シズクの目には……。


「いつも通りの雰囲気だね……」

「高野山自体、まあ、異世界っぽいから違和感が全くないけど」


 看板などが元々歴史的建造物に合わせる形で設計されているのも相まって高野山とカーハツヴァイの差異は大きくは感じ取れなかった。

 ただ、歩く人影が若干違和感を感じるくらいだ。

 観光客が殆ど歩いておらず、異世界の住人が行き来している。

 

 ただ、カーハツヴァイ側でも僧侶の出で立ちをした者は共通の服装をしている。


花梨カリンさん、すれ違うお坊さんは……カーハツヴァイ側?の人なんですか?」

 シズクはすれ違うお坊さんは高野山の修行僧にしか見えなかった。


「……ふむ、彼らは基本的に高野山で存在しているのだ!」

「だが、カーハツヴァイ側の住人を『どことなく感じ取れる』修行僧もおられる」

「仏に司る存在である修行僧はカーハツヴァイにも貴重なのだ」

「この信仰心こそが両方のセカイを構築している」

「逆にカーハツヴァイ側の住人も仏に司る存在……でもあるか?」

「……まあ、私自身よく判っていないのだ……」


 奥の院の入り口から歴史的人物の墓を橫見に歩いている……。

 時々だが、墓の周りが神々しく光っている墓石もあった。

 花梨カリン曰く、カーハツヴァイから墓を見ると里帰りしている魂が宿る墓はうっすら光るとのことだ。


花梨カリンさん!あ、あのう……明智光秀の墓も光ってますよ!」

 シズクは神々しく光る明智光秀の墓に驚いた!


「……ふむ、明智光秀と織田信長の墓は何時も光っているな」

「有名税ってやつだ!……最近の戦国武将もののゲームやら何やらで歴女とかが来て賑わっているからウハウハらしいぞ!」

「最近では織田信長の墓が6月3日になったら燃える演出をするお茶目なイベントが見えるぞ!」

「……ただ、歴女の連中に……見えているかは判らんがな……?」


 カーハツヴァイからみた奥の院にある墓はまるでネズミーランド状態のイルミネーション状態だった。


 シズクはジト目で奥の院の細道を歩きながら……

「いや……皆さん成仏しましょうよ……」

 まるでクリスマスのイルミネーション状態だ!


「……ふむ、隣がイルミネーション始めてたら張り合ってピカピアさせて対抗する状態なのだ!」

「歴女ブームとパワースポットブームのお陰で今や『バブリー状態』になっているのだ」

「まだここは故人……個人の墓群だが……企業系の墓はもっと面白い事になってるぞ!」


 元々日本は宗教に関して万物に神が宿るという考えがあらぬ方向へ向かい『変態……大変』な事になる事はしばしばあるが……その頂点とも言える『かなまら祭り』から比べたら許容範囲内であろうとシズクは平常心を保った。


「八百万の神々の頂点に立つ我こそが!!」

 何処から出したか不明の『中二病推奨革手グローブ」を装着し!

「今こそ左手に封印し百鬼ひゃっきを!!!」

 『100均』で買った中二病手袋を!

「全ての魂を!成仏させて薙ぎ払って!!!」

 ミカは左手をギュッと拳に握りしめ!暴れる左腕を右腕で押さえ込む!!


花梨カリンさん、たしか企業さんのお墓って弘法大師御廟(こうぼうだいしごびょう)への参道とは逆方向ですよね?」


「……うむ!だからこの道を右だ……もうすぐ開けた大きな参道に出る」

「龍、どうだ?奥の院は安定しているか?」


「姐さん、弘法大師御廟(こうぼうだいしごびょう)宿坊会しゅくぼうかいから先程から念はかなり来ている。だが、好意的なものだ。代表団≪三本の矢≫の意思は『支持・支援』で一致している」

「よって、『アレが使える』だけのシードがシズクを中心として集約されていると考察していい」


「てか!私を無視して話進めないでよ!」

 ――中二病は無視にて終演した!?

「てかさ、いくら輪廻側が集結しても、双翼のガーディアン……意味わかってるよね?」


「……ふむ、そうだったな。輪廻・アンチノミーのバランスが均衡に取る必要がある」

「だが、シズクだけで十分事足りそうだが……?」

「少なくとも、シズクは『知識・スキル』はまだ浅いが『才能・潜在力』だけならバツグンに高いと考えている」

「龍神側から迎え入れられたシズクなら資格は十分と考えている」


 ――要約すると暗黒ニート神の助けが無くても均衡は取れる。

 花梨カリンたちがサポートすれば特に問題は無さそうと判断した。


「では姐さん、そろそろ『ゲート』に近づきますし戦術フィールドの構成とサポートを開始しやす!」

「バトルになってからの展開ではやはり初動が出遅れるからな」


 龍はナックルダスターを装着し、ガツンっとかち合わせた!

 金属製のナックルダスターは火花を散らした!

「我らを守護し……御霊みたまたちよ……セカイの理を視覚させ……我らに教えたもう……」

 飛んだ火花が参道の石畳に触れた瞬間!

 シズク達のセカイの色が落ちた火花を中心に一瞬で吹き飛び、再び中心から緩やかに色が戻る!

 全ての色が戻ると、シズク達視覚に物や人の頭上に『ゲージ』が現れた!


 ――以前エルチェが使った『ライブラ』と同じようだ!


「我らに集いし……」

 龍は右手拳に精神を貯め集中させる!……っとした時だ!


「ああ!もしかして強化スキル?」

 ミカが口を挟んだ!


「あ、ああ……詠唱の途中で邪魔しないで貰えるか……」

 龍は若干苛立ちをみせる……!


「はいはい、んじゃー強化スキルは私がかけるから。オッちゃんは『ライブラ』と『回復』だけでいいよ?」

「そんなガッチガチに力溜めても大して強化できなと思うし」


 ミカは軽いノリで、先程付けた『左手』の中二病手袋を外し……。

 パチンと指を鳴らすと、指先から精神を一面に蒔き放つ!

「シフデバ!……あとオマケにアクセラ!!」


 ≪花梨カリンりゅうの能力力上昇!≫

 攻撃力・精神攻撃力 3倍!

 防御力・精神防御力 3倍!

 スピード・詠唱速度 3倍!

 上昇した!


「まさに!赤い彗星が見えるぜ!!」

 ミカはドヤ顔全開でキメポーズをする!


「オッオッオッ!」

 言葉が詰まり龍がオットセイのような声を上げている!

「む、むちゃくちゃじゃねーか!はっきり言って能力上げ……普通じゃここまで強化むりだ!」

 一応後方支援の僧侶である龍だが……パンチを繰り出すと凄まじい風圧が流れる!


「我が闇の力を解放すれば!!!貴様らなど瞬殺できるわ!!」

 ミカは中二病手袋を再び付け、顔の前で『右手』で握りこぶしを作る!!

「し、静まれ!!我の右手!この力を解放はセカイの均衡を破る!!」

 ――鳴らした指は左手だ!

 ――強化スキルを2人に施したのは左手だ!!!


「ね、姉ちゃん何者だ!こんな強化……神であってもチート過ぎる強化だ!」

 龍の言っていることは正しい。


 事実……。

「あ……龍さん……スミマセン……ミカさんなら……」

「彼女は一応、本物の『太陽に近い方』……ですので……」

 シズクは申し訳なさそうに龍に謝罪する。


「我の光をもってすれば……!貴様らごとき焼き払うこと!まばたきのごとし!!」

 ――ミカを中心として後光が光る!!

「や、やめろ!その光は我を灰にする!」

 ――自ら出した後光にニート神が焼かれ灰になりかけた!


「……面倒くさいな……」

 花梨カリンはミカを通常の3倍でジト目で見つめる……。

「面倒くせー……」

 龍は通常の3倍でため息を出す……。

「すみません……これがミカさんの通常運転です……」

 ……シズクは通常の『いつもの3倍?』呆れた?


 呆れた3人とミカはレリクスに向け歩き出す。

「……しかし……3倍に速度が上がっているのに普通に歩ける……強化系スキルを発動・付与されると繊細な行動は難しくなるのだが……」

 不思議な事にライブラのスキルではきちんと3倍に能力強化されいたが……。

 事実3倍の能力が発揮されている。


「うん、まあ、普通の人間?だったらさ、1,25倍とかじゃない?」

「あと、倍率固定なのよ」

「私ほどになると、『強化スキル可変ビットレート』出来ちゃう訳よ!」

 ――ミカはドヤ顔をキメた!

 1倍から3倍までシームレスに強化スキルを操れるようになった!

「でも、そのスキル強化は、私が『2人』をリアルタイムにコントロールしているわ」


 ――『2人』?


「……!?」

「嬢ちゃん!シズクは強化スキルの恩恵を受けていないぞ!」

「……というか、今回のレリクスはシズクがメインになる案件だ」

 龍はシズクがスキル強化されていないことを察知する。


「そりゃーそうでしょ?強化スキルは『人』にしか付与できないからシズクにはかけられないわ」

「だって、『神のセカイ』から来たんだから」

「神……もしくは神の恩恵を受ける存在だよ?」


 シズクは神になった覚えも無ければ……。


「あ……ナキちゃんと契約してるから?って事?」

 ――シズクは神の恩恵を受けていた!

「つ、使えないわね……ニート神……」


 ……シズクは目指しているゲート付近に見えるロケットの墓に気づいた!

「って!!ロケット!?打ち上がるの!?」

 ロケットの墓からモクモクと煙が上がっている!

 シズクは強化スキルより目の前で打ち上がりそうな『ロケットの墓』に興味を持って駆け出した!

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