第39話 Fight of God's child<中編>
「……変わってる……心が二つある!シズク!何この子!?」
寝起き姿でグダグダな格好をしているミカがシズクを問い詰める。
「こんな事……あり得ない……いや、事例が無いだけか?」
シズクは期待通りの反応をしてくれたミカに対して答える。
「エルチェは異世界から連れてきました。でも彼女は正真正銘、私の大切なパートナーです。この世界で一緒に旅をして回ってる『ドールのエルチェ』です」
「以前からお話ししていた子です」
「今、巻き込まれている世界の住人でもあります」
シズクは嘘偽りなくミカに話した。
内容的には『病院行き』レベルか厨二病だ。
「で、私に何か用なの?」
冷静な態度でシズクにストレートに返答を求める。
そのやりとりにエルチェがオドオドしていた。
「天之尾羽張を貸して頂ければ……」
シズクは謎のアイテムを貸せとミカに要求する。
「ハテ……アメノ?そんなジュッコブシケンしらないな?」
ミカはシズクの要求に理解できていないようだ?
シズクはジト目をキメて……。
「……十拳剣……『とかのとるぎ』って読むのですよ?ちゃんと歴史の勉強してます?……あ、学校はネトゲのやり過ぎで留年したんでしたっけ?」
シズクの激しいツッコミに冷や汗を垂らしながらミカは答える。
「いやいや!留年してないし!ちゃんと高校3年だからね!」
「あと、十勝の剣なんて学校の授業で習ってたまるか!」
ミカは真剣な顔をしてシズクを言いくるめようとする!
「時代は鉛の弾丸と情報戦で戦うんだよ!シズク君!剣で戦うなど時代錯誤も甚だしい」
シズクはお茶をティーカップに注ぎながら答える。
「FPSですか……あれって3D酔いするから全くプレイ出来ないんですよね……」
シズクはティーカップをミカに手渡し、再び質問する。
「無いなら仕方が無いですね……それじゃあカフェの手伝いのバイト料払って貰えます?ちょっと入り用なので……」
シズクははぐらかそうとしたミカを畳み掛ける!
「ちょーっと待て!ガチャの回しすぎで今月ピンチなんだ!」
さらにシズクは畳み掛ける!
「……え!?ついにガチャの回しすぎで賽銭箱にまで手を出した!」
ミカ天変地異レベルに驚き!冷や汗を流す!?
「ま、まだだ!そこまでは手を出していない!?」
シズクは可愛い手帳を開きミカを問いただす……!
「コホン……先日、『宮司さん』より依頼がありまして、賽銭開きの際の金額格差について依頼されまして……第四殿の賽銭箱だけ紙幣が入っていなかったと。あからさまに『何者かが抜き取って』はいるが『痕跡』が全くない。防犯カメラにもそれらしき人物が写っていなかったと」
「不可解にも第四殿の賽銭箱のみ抜き取っている。さらにあるアカウントの課金率と比例した伸び率」
「あと、大社横のコンビニにて『vTunesカード』を買う『マスクをした女子高生』が度々来店されるとの事」
「宮司さん曰く『まるで神隠しにあったようだ!』と確信を射た証言があります」
シズクはジト目をキメ……。
「天之尾羽張を貸してくだされば結構ですよ?ちょっとカグツチさんをフルボッコにするだけなので」
「……クッ!強い!……」
ミカは開き直りシズクと再び対峙する!
「判っていないねシズク君!」
「私が課金することにより、ネット界で最強の戦士を育て上げられるわけだよ!」
「あ、あと!そもそも、アメノ……なんだっけ?そんな武器は持ってない!」
――実質『天野 ミカ』の敗北宣言だ!
「要約すると、『カグツチ』に勝ちたい訳ね?」
シズクは意表を衝くミカに対して答える。
「で?賽銭箱課金したんですね?」
「ハイ……課金シマシタ」
犯人は罪を認めた!
「で、私はカグツチさんを倒す必要があるので、彼女に勝てれば良いんですけど」
シズクとミカのやり取りに口を挟むようにエルチェが訪ねる。
「カグツチを倒す方法を何で『ミカ』さんに唐突に聞くの!」
「……まあ、話す素振り的に『関わり』がありそうだけど……」
エルチェの質問にシズクはミカとは違い懇切丁寧に答える。
「私は異世界ってあるとは思っていなかった」
「……でも、目に見えない『力』はあると信じてたの」
「この世界は矛盾に満ちているから」
「そう信じた方が『ロマンチック』でしょ?」
「私は『本』が大好きなの」
「いつからか『自分で本を描きたい』って思うようになった」
「色々な所を旅をして『この世界』を観て回っていた」
「漠然と旅すれば良い……ってわけでなくて、『和歌山』を徹底的に回ってるの」
「なら、本宮大社に来るのは自然なことでしょ?」
「数あるポイントの中で、『Cafe 天野』に辿り着いた」
「……まあ、前から『ミカ』さんは怪しいってふんでたけど……」
「カフェ天野の天野 ミカ……だからね」
「ナキちゃんに会って、ほぼ確信に変わった」
「……そして、私が異世界を行き来できるのも『偶然』とは思ってない」
「あと、人と神様なんて区別する事が、いかに愚行かってのも『ナキ』ちゃんが教えてくれたかな?」
「ミカさんもその一人かな……?」
「灯台下暗し過ぎてアレだけでど」
「でも、判らない事があって、何で『伊勢神宮』でないの?信仰心なら『ここ』より伊勢の方が良いように思うけど……」
「……シズク……このグダグダなお姉さんが『神』の関係者ってのは判った……」
「巫女か何かしてる人?……まあ容姿はシズクでは全く勝てないわ!」
「賽銭箱のお金を抜き取れるのも判るけど……犯罪だけどね」
「巫女さん……その点で言えば、熊野本宮大社は伊勢神宮を超えているわね!」
「うーん、まあ、シズクには名乗ったことは無いけど……」
「シズクは私がどんな立場の『人間』でも気にせず受け入れるだろうから」
「エルチェ。貴方には名乗っておいた方が良いわね」
「私の名前は『天照大神』の『天野 ミカ』よろしくね!」
『本を書く』ではなく『本を描く』と表現しています。





