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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
港街アローナ・ビルド編<街灯ビルド>
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第38話 Fight of God's child<前編>


 シズクは早朝『朝5時半』にガレージで準備をしていた。

「困った事になった……エルチェ」

 シズクはバイクを眺めながら頭を抱えていた!

「エルチェは……お留守……」

「なんで!?私も行くよ!」

 ――シズクのスーパーボルドールは勿論2人乗りだ。

「免許……とって1年だから……二人乗りで高速に乗れないのだ!エルチェ君!」

 エルチェはジト目をキメる……!

「……いやいや……下道で行けばいいじゃない!」

 シズクは片道100キロ越えのツーリングのため、下道をチンタラ走るのを嫌がっている!

「ドールのエルチェだったら何も気にせず高速乗れたのに!なんで大きくなっちゃったの!」

 間違いなくシズクのせいである。


「……まあ、バイク乗ってる間だけユニゾンする?」

「エルチェ!ナイスアイディーーア!」


 ――昭和の香りがした!


「そういえば……ユニゾンしている状態ってタイムリミット無いの?」

 何気にエルチェとユニゾンを繰り返しているが、ユニゾンすると大抵の場合MPとかHPがどんどん消耗しそうだが……。

「うーん……わかんない」

「正直、鍛冶士とドールのユニゾン自体が出来る人が私の知ってる限りではローズさんだけだったし」

「ローズさんはユニゾンすることで手駒が2体少なくなる数の減少がリスクとも言ってた」

「あと、ユニゾンしても『1+1=1.8』位の力量に落ちるから非効率とも言ったね」

「彼女の場合はドール2体とだからね」

「そもそも、ドールの駆動力自体が主の精神を消耗しているから、リスクは常に支払い続けている状態だね」


 ――消費される精神量的にはユニゾンしなくても『常時消耗』しているようだ……!


「ただ、私の場合は『創造主と契約主』が若干複雑だけど……」

 エルチェは『ドルフィードリーミーはシズク』で『ファバーダのシズク』は別の人間が作ったからだ。

 アルハンブラの鍛冶士ローズの場合は『創造主と契約主』が『同一意思』である。

「うーん、だからわかんない。そもそもだけど、主よりドールの方が遙かにレベルが高いし」

「でも、私とユニゾンしてもバイクの運転が上手くなることないから?」

「それよりも……シズク。学校サボって何処へ行くのよ?」


 シズクは日も昇らない朝の4時半頃からツーリングの準備をせっせとしていた。

 そして、シズクはドヤ顔をキメて……。

「熊野本宮大社へ行くのだよエルチェ君!」

 エルチェは冷や汗を流しシズクの迷走にジト目とキメ問いただす。

「……竈山神社に行くなら……まだ判る。何故、わざわざそんな遠い所まで朝の4時半に起きて行かないとダメなの!」

 エルチェの言うとおり、『ナキサワメ』と同じ対処するなら『竈山神社』に行くべきだが?

「判ってないね……エルチェ君よ!」

「……まあ、知り合い?というかツーリング先のおしゃれなカフェに……よくよく考えたらそれっぽい・・・・・ネーミングの人がオーナーが居るのよ」

「それに……」


 シズクは若干重い表情をして……。


「今のままだと再チャレンジしても勝てないわ!」

 シズクはカグツチに勝つ気満々である!

「あのね……シズク。カグツチLv35だっけ?……まあ、そこは重要でなくて、そもそも『神のLvは人のLvとは一緒でないの』神としてのLvが35って事よ」


 ……シズクは……。


「なるほど!丁度、35歳・・・の行き遅れのババアの強靱な怨念強さだね!」

 シズクは何も判っていなかった。

 だが、しっくりくるLv=年齢にシズクは晴々した表情をエルチェに見せた。

「さて!行くよエルチェ!」


 シズクとエルチェはユニゾンをした!

 シズクはボルドールに跨がり、朝霧が少しかかる6時前に家を出発した。


 ◇


 シズク達は、学校の真横に最近出来たスマートICから高速に乗った。

「――シズク!ETC通れないんじゃないの?」

「ふっふっふっ!ETC様に8万円のデポジット預けてるんやで!」

 シズクが怪しげな商人の顔をしている!

「――シズクって普通の女子高生だよね?」

「――怪しい財力……」


 確かにシズクは100万円もするボルドールに乗り、ドールパーティーの東京遠征軍資金などなど、金回りだけはかなり良い。

「――まさか!?援の助の交!?」

 エルチェは疑っている……!?

「……なんか……今の流れ……『ごまさん』の上で言われた気がする……」

「普通に印税がどかーっと!入ってるだけだよ!」

「こう見えても、授業中に『ポメラ』使って執筆活動してるんだから」

 シズクは授業中に執筆活動をして小銭を稼いでいる!?

 しかし、成績は学年一位だ。

 ……但し、体育だけは普通だ。

 とにかく、怪しい出所の資金ではない。

「……資金源は……まあ良いとして、どうして熊野本宮大社?」

 シズクの疑問に答えるかのように……!

 有田ICが見えてきた所でシズクは意味深な事を言い出した!

「よし!高速降りて超高速道路・・・・・に乗るよー!」

 ツーリングを楽しんでいる!


 ◇交通安全協会よりお知らせ

 ――超高速道路とは、和歌山を代表するライダーの聖地である!

 制限速度を守りゆっくりトコトコ走りましょう!


 当然シズクの『安全運転』を心がけ……!

 『カフェ・バグダッド』を通り過ぎた瞬間……!


 ――『パァアアアアン!!』

 スーパーボルドールのVTECサウンドを奏でだす!?


「――シ、シズク気のせいかな!?ミアスより数倍は速いよね!」

 シズクのオートバイは決して赤くはないが相当速い!?

「ミアスって音だけですっごく非力だったよね」

 シズクはヤッホーポイントのコーナーを二倍の速度で走り抜ける!?


 あっという間に、道の駅『ほんぐう』に辿り着けた!

 スッとヘルメットを脱ぎ、エルチェとユニゾンを解消した!


「って!熊野本宮大社通り過ぎてるよ!シズク!」

 シズクはうっかりミスで熊野本宮大社を通り過ぎていた。

「……生活習慣病ってやつ?」

 エルチェは呆れ顔でシズクを戒める

「家から120kmをノンストップで走る病気……もう一回入院・・する?」


 シズクはヘルメットを再び被り熊野本宮大社まで戻った。

 正確には、熊野本宮大社前にある『Cafe 天野』へ辿りついた。

 シズクは愛車のボルドールを店前に堂々と停めて準備中のお店に入ろうとする。


「シズク!?ちょっと待った待った!いくら何でも非常識過ぎない?」

 エルチェは堂々と準備中のお店に殴り込みかけようとするシズクを制止した。

 シズクは一瞬不思議そうな顔をしたが、エルチェを『Cafe 天野』に連れてきたことが無かった。


「いいのいいの、ここのマスターとは知り合いなの」

 シズクは開店前のカフェに入店した。

 準備中だったが、ドアは開いていた。


「そもそもなんだけど、カフェなのに朝9時にオープンしてないこと自体ちょっと殿様営業だよ」


 シズクは入店するなり開店時間の不満を言った。

「あと、いくら何でも不用心。いつ来てもドア開いてるし」

「……シズク……ホントに黙って入って大丈夫?」


 心配するエルチェとは全く逆で、シズクはあろう事かカフェのキッチンに入りポットに浄水器の水を入れ湯を沸かし始めた。

 手際よく紅茶用ポットを出し『謎の茶葉』を煎れる。

 さらに冷蔵庫からベーコンと玉子を出し、フライパンで調理を始める。


 ――まるで自分の家にいるかのように。

 時間にして3分少々でベーコンエッグとお茶を煎れた。


「ミカさーん!朝食出来ましたよ!」

 シズクは階段の上にいる『ミカ』を呼んだ。


「……う……あ……う」

 二階からシズクの声に反応する女性の声が聞こえた。


「どうせまた『ネトゲ』のやり過ぎでしょ!学校も行かないでホント……」

 かく言うシズクも学校をサボって大社前のカフェにいる。

 買ったバイクで暴走行為を繰り返し朝からカフェに不法侵入。

 ――しかし、学年一位だ。


 階段から降りてきたのはシズクより少し年上の『美少女』だった。

 ロングヘアーに絶妙なバランスのボディーライン。

 寝起き姿も様になる……その様を初めて会うエルチェだったが一目で引きつけられた!

「あら?シズク?その子……」

 エルチェを見たミカが一言呟いた……。

「……変わってる……心が二つ・・ある」

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